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ODMで生産性を高める“組立冗長性の排除”

目次
ODMとは何か?製造業の現場から見た意義とは
ODM(Original Design Manufacturer)は、顧客のブランドで販売される製品を、設計から生産まで一貫して請け負う製造業のモデルです。
従来のOEM(Original Equipment Manufacturer)に比べ、ODMは設計の自由度や付加価値創出が大きな特徴となります。
最近では、グローバル市場で競争優位性を確保するため、多くのメーカーがODM戦略の強化に力を入れています。
古くから日本の製造業は顧客から仕様図や部品表を受け取って、いかに正確に生産するかという「受け身のモノづくり」に長けてきました。
ところが、市場ニーズの多様化やコスト競争が激化する現代では、受け身の姿勢だけでは難しいケースが増えています。
そこで、ODMを活用して設計から生産、品質保証まで一貫対応するメーカーが増えているのです。
ODMは調達・購買、生産管理、品質保証すべての面で高いレベルを求められるため、まさに製造現場の総合力が試されます。
現場力向上のカギとなるのが「組立冗長性の排除」です。
組立冗長性とは何か?なぜ生産性向上の障害となるのか
「組立冗長性」とは、ものづくりの各工程で不要な工数・無駄・重複作業が発生し、本質的な価値創出以外に人手や時間が割かれている状態を指します。
例えば、部品供給のバッファや、不必要な中間検査、組立作業の重複、手戻りの修正、あいまいな作業指示による手待ちなど、いずれも無意識のうちに現場に根付いていることが多いものです。
昭和時代からの「現物一致・現場対応」が評価され、機転や工夫で乗り切る職人技が重要視されてきた日本の工場では、とかく冗長性が温存されやすい傾向があります。
ところが、ODMのように設計・生産一体のビジネスモデルでは、こうした現場任せのやり方がボトルネックとなりやすいのです。
部品工程や工数のムダを排除し、シンプルかつ流れの良い組立工程を確立することが、結果として生産性向上・コスト低減・品質安定につながるのです。
なぜODMにおいて“組立冗長性の排除”が重視されるのか
ODMは顧客の多彩な要望に柔軟かつスピーディーに対応する必要があります。
特に、開発期間短縮や初期コスト低減、変種変量生産への適応が求められる場面が増えています。
たとえば、小ロット多品種の受注や、直前の仕様変更、カスタマイゼーションなどは、従来型のライン生産では手間や管理コストが跳ね上がってしまいます。
組立冗長性が現場に残っていると、現場負荷や納期遅れの温床となります。
また、ODM企業の場合、発注元のバイヤー(顧客)が「いかに合理的・効率的に組立/検査/梱包されているか」「工程改善が日々アップデートされているか」を注視しています。
これはサプライヤー視点からも大きな差別化ポイントとなり、将来の選定や追加発注の有無にも直結する重要事項となります。
ゆえに、ODMにおいて“組立冗長性の徹底排除”は、競争力の源泉といえるのです。
具体的な“組立冗長性排除”のアプローチ手法
1. 設計段階からのDFA(組立容易性設計)の導入
ODMの場合、製品の上流工程である設計段階から生産性や組立性を意識する必要があります。
DFA(Design for Assembly)は、部品点数の削減や、工具・治具の共通化、部品取り付け方向の統一などを反映させ、そもそも“組立で迷いが生じない製品設計”を徹底する考え方です。
設計者と現場の現物レビュー(例えば、生産準備段階の試作現場カイゼン)を連携し、「ここが無駄」「このタクトでは組立工程が詰まる」という気づきを迅速にフィードバックできる体制づくりが重要です。
2. 標準作業化とリアルタイム可視化
現場の作業手順が個人技や暗黙知に依存していると、冗長性が温存されがちです。
作業標準書や動画マニュアル、ピッキングガイドなどを整備し、組立冗長ポイントを工数単位で見える化します。
モニタリングシステムやIoTデバイスを活用し、手待ち・重複・歩行・不良率などをリアルタイムで可視化することで、「どこで、なぜ、無駄が起きているか」を現場全体で共有し、短期間で改善サイクルを回すことができます。
3. ジョブローテーションによるムダ取りと多能工化
ある特定作業者だけが冗長な動きや手順を踏んでいるケースが見過ごされることがあります。
定期的なジョブローテーション(作業者の持ち場交代)を実行し、多能工(複数工程を担当できる技能者)比率を高めることで、自然と現場の無駄の気づきが増え、不要な冗長動作が見つかりやすくなります。
また、サプライチェーン上でも多能工化は、突発的なヒトやモノのトラブル時のリスクヘッジとしても機能します。
4. DX(デジタルトランスフォーメーション)による工程最適化
紙や口頭伝達、手書きチェック表がスタンダードな現場では、情報伝達の遅延や確認作業そのものが冗長性を生みだします。
工程進捗の見える化や部品供給タイミングの自動化など、DXツールを活用すると、ヒューマンエラーや手戻り作業の源となる無駄な“待ち”や“確認”を極小化することができます。
また、AIを活用した歩留りデータ予知や工程分析は、不良の早期検知や工程カイゼンポイントの“発見”にも寄与します。
調達・購買視点で考えるODM現場の組立冗長性
バイヤー(調達担当者)がODMサプライヤー(委託生産先)を選定する際、組立工程の冗長性評価は重要な選定指標となります。
具体的には以下のポイントがチェックされます。
・工数や生産タクト、工程数の妥当性
・部品調達から組立、梱包までのリードタイム管理
・再現性の高い作業標準の有無と教育状況
・不良率やトラブル時の即応体制
・デジタル化/可視化レベルと改善サイクルの速さ
ODMメーカーとして生き残るためには、コストだけでなく、バイヤーの目線に立って「合理化の度合い」「現場での工数圧縮・無駄取り」にまで目を配る必要があります。
裏を返せば、この視点はサプライヤーが自身の現場力を差別化する武器にもなります。
アナログ体質からの脱却と現場イノベーション
多くの製造業現場は、依然としてアナログな手法が根強く残っています。
人的な管理、帳票記入、現場目視確認など、古き良き“現場力”が企業文化となっているケースも少なくありません。
確かに、昭和から平成初期の日本の生産現場は「現地現物主義」「現場第一主義」で世界に名を轟かせました。
ただし、デジタル技術やグローバル競争が当たり前となった今、これまでのやり方に執着し続けることは、冗長性の固定化と競争力低下に直結しかねません。
例えば、リアルタイム生産進捗管理、IoTセンサー連動の作業分析、自動データ集計など、高度なデジタル活用は「現場における異常の早期発見」「ムダの徹底可視化」「全社横断的な改善のスピード化」に大きく寄与します。
新しい発想を持ち込む“ラテラルシンキング”(水平思考)によって、
「こうあるべき」「昔からこのやり方だから安心だ」といった固定観念から“深く深く考え”、ODM時代の現場イノベーションを書き換えていくことが不可欠です。
まとめ:ODM時代の勝者となるために~組立冗長性排除は現場の武器
ODMで生産性を高めるためには、「組立冗長性の排除」が現場改善の最重要テーマとなります。
競争が激化するグローバル市場において、バイヤーがサプライヤー選定で見るのも「無駄をどこまで排除し、合理化できているか」です。
設計段階からのDFA導入、標準作業整備、DX推進、さらにはアナログ体質を打破する現場イノベーション…。
これらすべてを一過性ではなく“日々の現場改善の当たり前”とすること。
それこそがODMメーカーが生き残り、そしてバイヤーやサプライヤーが「選ばれる存在」へと進化するための道だといえるでしょう。
組立冗長性の排除は単なるコスト削減に留まらず、現場のやりがい・働きやすさ・製品価値の向上まで実現する、本質的な武器となります。
今こそ、“古き良き日本の現場力”を活かしつつ、ODM時代の新たな現場力・価値創造力を、一人ひとりが発揮していきましょう。
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