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鋳造欠陥を設計段階で流動解析しスクラップ費の上流排除を徹底

目次
はじめに―鋳造品のスクラップと設計段階の重要性
製造業の現場において、「スクラップ費の増加」は経営の大きな痛手となります。
特に鋳造品のような工程・材料コストが高額な場合、不良発生による廃棄は企業利益を大幅に圧迫します。
現場改善での“事後対応”では、毎月のように発生するロスに歯止めがかかりません。
ところが、スクラップの根本原因に遡ると「そもそもの設計に問題があった」というケースが少なくありません。
昨今、設計段階から流動解析(CAE)を活用し、潜在的な鋳造欠陥リスクを可視化・予防する手法が急速に普及しています。
本記事では、昭和から続く「良品づくりは現場対応」の発想を脱し、なぜ今、設計段階で流動解析を用いるべきなのか。
そして、その導入がバイヤー・サプライヤー間の信頼や取引の質までどう変えていくのか。
実体験を交えつつ、“鋳造現場の新常識”を現場目線で深堀りしていきます。
鋳造品における欠陥の実態─なぜ設計段階で決まるのか
現場の“勘と経験”依存からの脱却
従来の鋳造現場では「金型と現場オペレーターの腕で不良は減らせる」とされてきました。
ですが、金型ができあがった後で判明する欠陥は、往々にして“手遅れ”であることが多いです。
代表的な鋳造欠陥(湯回り不良、巣、不完全充填、ヒケなど)は、材料の流動状態や温度勾配など物理現象によって生じます。
これは、設計段階で「鋳造しやすい形状」であるか、「流路設定が適切か」まで戻って見直す必要があるのです。
設計段階からの“バリューチェーン全体最適化”
自動車部品、重電機、建材など多岐にわたる鋳造品ですが、「設計→金型→鋳造→加工→検査」という工程は共通しています。
設計段階で不具合リスクが残存していると、それを修正するための“下流での手直し・選別”に多大なコストが必要となります。
本来、設計を見直すことで1個あたりのスクラップ量や工数を劇的に減らせるのです。
流動解析(CAE)とは何か―概要と導入メリット
流動解析の基本─金属の流れを「見える化」する
流動解析(CAE:Computer Aided Engineering)は、溶融金属が型内をどのように流れ、冷却・凝固していくのかをシミュレーションソフトで再現する技術です。
これにより、肉眼では分からない「湯回り不良となる部位」や「ガス溜まり、冷却ムラの発生箇所」を事前に予知できます。
主な流動解析のアウトプット例:
– 充填不良領域やデッドゾーンの可視化
– 冷却・凝固の進行順序
– 巣、ヒケ、ブローホールの発生リスク分布
– 最適な湯口・押湯(フィーダー)の配置案 など
設計段階での効果的な使い方
設計者が3D CADデータを流動解析ソフトに入力することで、“設計案の妥当性”を決定的な数値や画像で評価できます。
これまでは“作ってみて、だめなら修正”という発想でしたが、多数の設計案を短期間でバーチャル検証できることが最大のメリットです。
また、金型製作前にシミュレーション段階でリスクが発覚すれば、設計修正も容易ですし、顧客との予防的協議にも活用できます。
実際の導入効果と現場変革
– スクラップ比率が従来の1/3以下へと劇的減少(大手自動車部品工場では10%→3%事例も)
– 不良解析・対策コストの低減
– 金型製作リードタイムの短縮
– 顧客からの信頼向上(予測・対策を事前に資料提示できる)
このように、流動解析の活用により、設計過程で発生源をつぶすことが全体最適へ大きく寄与します。
昭和のアナログ現場とのギャップと課題解決
「現場百回」から「設計一度」へ
依然として多くの中小鋳造現場では、流動解析の導入が遅れ「現場百回=現場で試作を重ねて品質を安定させる」という発想が残っています。
しかし競争力の高いグローバルサプライチェーンでは「設計一度で狙い通りの品質を作り込む」ことが要求される時代です。
これまで現場の“名人芸”で支えてきた部分こそ、標準化されたCAEの定量評価で補完することが求められています。
設備投資・人材育成の壁とその乗り越え方
「流動解析は高額ソフトで専門知識も必要だからウチには無理…」
こんな声を現場でよく聞いてきました。
しかし現在は、月額課金やクラウド型のソフトも登場し、外部コンサルや設計事務所の協力を得て、段階的に導入することも可能です。
また、若手~中堅技術者の“デジタル技能育成”を一体で進めることで、逆にアナログ世代とデジタル世代の相互理解も促します。
バイヤーとサプライヤーの関係性改革
「不良発生後」対応から「設計段階で合意形成」へ
従来のバイヤーとサプライヤーの関係は、「不具合が出たら現場で応急対応、カイゼン提案、再発防止」といった“後手後手”の対応が一般的でした。
ですが、流動解析を使って「この設計は理論上こういうリスクがあります」「シュミレーションではここの巣危険度が高いです」など、設計段階で両者が“同じ目線”に立って議論できるようになります。
これにより、報復的な値引き交渉や怒号飛び交うクレーム会議が、合理的な品質向上協議に変わっていきます。
新しいバイヤー像:設計・工程の提案者へ
デジタル時代のバイヤーには、コスト・納期の交渉だけでなく
「この部品の形状ならば、こういう鋳造法が適応できます」
「流動解析の結果から、ここをこう変えてもらえば歩留りが伸びます」
というような、“工程起点の提案型調達”が求められています。
一方サプライヤーも「現場対応一辺倒」では生き残れません。
積極的に流動解析の結果を持ち寄り、設計段階からバイヤーと共創する姿勢が必須です。
今後の展望と製造業として目指すべき姿
流動解析を“設計リテラシー”の標準に
流動解析(CAE)は一部の大企業や先進メーカーのもの、という時代は終わりつつあります。
標準的な設計手法として、中小メーカー・地域企業にも普及しつつあり、バイヤーも「CAEによる事前解析を盛り込んだ設計提案」を評価基準に据えつつあります。
まとめ:上流排除の徹底が製造業全体の底上げにつながる
鋳造品のスクラップ費を根本から削減するには、「設計段階で流動解析による課題抽出と改善」を徹底することがカギとなります。
下流工程で頑張っても抜本的なコスト改善は難しく、上流から変えることで全社最適、サプライチェーン全体最適が実現します。
新たなバイヤー像・サプライヤー像のためにも、今こそ“昭和的現場思考”から脱却し、デジタルを駆使した知的高度化を現場レベルで推進していきましょう。
これからの製造業は、設計・現場・調達が一体となって、世界市場でも戦える現場力・提案力を磨くことが必要です。
流動解析の積極活用を、明日の標準へと定着させていきましょう。
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