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棚卸差異をゼロに近づける受払統制で隠れコストを排除

目次
はじめに:棚卸差異は「普通」ではない、その本質を知る
製造業において、棚卸差異は「仕方がないもの」として受け入れられてきた現状があります。
しかし、本当にそうでしょうか。
日本のものづくりを牽引してきた昭和の時代、多くの職人の手作業に支えられてきた現場では、「多少の誤差は付き物だ」という考えが根付いていました。
デジタル化が進展する今でも、多くの工場で「棚卸で差額が生じて当然」といった空気が残っています。
ですが、それは隠れコストの温床です。
この記事では、長年現場で培ってきた視点から、棚卸差異をゼロに近づける受払統制の実践方法について、深く掘り下げていきます。
棚卸差異の構造的課題とは何か
数字だけの問題ではない
棚卸差異とは、帳簿上の在庫数と実棚が一致しない「差」のことです。
多くの現場で、「どうせ毎期差が出る」「予想範囲内」と棚卸差異が黙認されてきました。
けれども、棚卸差異は単なる数字の問題ではありません。
そこには、部材不足による生産の遅延や、現場のモチベーション低下など、さまざまな目に見えないコストが隠れています。
なぜ発生するのか——五つの主原因
棚卸差異が生じる主な要因は以下の五つです。
1. 入庫・出庫記録の遅れ
2. 誤ピッキング・誤投入
3. 廃棄品や不良品の未記載
4. 棚卸そのもののヒューマンエラー
5. 伝票と実物の不整合(誤出荷や横流し等も含む)
これらは全て、「管理」と「記録」に原因があります。
つまり、徹底した受払統制によって限りなくゼロに近づけることが可能なのです。
受払統制を支える現場力
単なるシステム化では終わらない、現場の「行動」がカギ
最新の在庫管理システムやバーコード、RFIDなどを導入すれば全て解決すると考えがちですが、それだけでは不十分です。
実際、多くの工場で最新システムを導入しても、現場の行動が従来通りだと棚卸差異はなくなりません。
日々の入出庫の丁寧なチェック、自主的なダブルチェック体制、責任の所在明確化——こうした現場の「行動」と「意識」の変革こそが、受払統制強化の第一歩です。
「責任の明確化」と「見える化」
棚卸差異を抑えたいなら、担当者別の責任範囲を明確にし、ミスに直結する作業は相互チェック体制を確立することが重要です。
また、現場の在庫変動や棚卸結果を「見える化」することで、データと実態のギャップを常に意識させる工夫が効果的です。
たとえば、毎日の朝礼で前日の入出庫・棚卸差異速報を共有する、現場にリアルタイム在庫掲示板を設置するなどが挙げられます。
アナログ文化の工場こそ「一歩先」の受払統制を
「手書き台帳」からの脱却は急務
いまだに手書き台帳やExcel管理が中心となっている中小製造業は多く存在します。
確かに、古きよき現場力を支えてきた方法ですが、棚卸差異が慢性的に発生する大きな要因の一つでもあります。
脱アナログを進めるとともに、ミス防止のための「人による二重チェック」「現物確認」など、昔ながらの強みをシステムと組み合わせることが効果を発揮します。
現場改善こそが「隠れコスト」を削減する最短ルート
現場で発生する棚卸差異は、「管理コスト」「在庫ロス」「突発的な部材不足による生産遅延」「不要な発注増加(多め発注)」へとつながり、企業収益を蝕み続けます。
例えば、繰り返される「差額補填・調整作業」の人件費、管理部門のストレス、失われる生産機会損失もすべて「隠れコスト」です。
こうした目に見えないコストを徹底的に洗い出し、排除するためにも、現場改善をベースとした受払統制の強化は、最速かつ最強のアプローチといえます。
バイヤー目線・サプライヤー目線の本音——なぜ正確な在庫管理が交渉力になるのか
正確な在庫管理は「信頼」と「交渉力」を生む
調達購買担当者(バイヤー)は、調達コストだけでなく、納品された資材が「過不足なく、確実に」現場で機能しているかを重視しています。
棚卸差異が発生する工場は、バイヤーから見ると“管理が甘い”と映ります。
逆に、受払統制が徹底され、在庫差異がゼロに近い工場は、「信頼できるパートナー」として評価され、価格交渉や新規受注の面で明らかな優位性を持つようになります。
サプライヤーの立場であれば、取引先バイヤーの「在庫への信頼意識」ひとつで、提案や改善提案のアプローチが大きく変わってくるのです。
現場に求められる「データ力」と「説得力」
近年、重大な品質問題や納期トラブル発生時には、調達・生産・品質管理が一体となって対策を求められます。
この際、棚卸差異のある現場では数字の信頼性が失われ、外部への説明も説得力を欠きます。
反対に、受払統制が徹底されていれば、根拠あるデータで問題を切り分け、迅速な対策と再発防止に優位性を発揮できるのです。
ゼロ差異を目指す受払統制の具体的ステップ
1.「帳票と現物」の合わせこみの徹底
基礎の基本ですが、日々の入庫・払出時に「帳票(またはデータ)」と「現物(現場)」を必ず見直し、合致しない場合はその場で突合します。
入出庫記録はタイムラグなく、リアルタイム入力が原則です。
紙伝票しかない現場でも、最低限の「二重記録」とダブルチェックを徹底しましょう。
2.「誰が、いつ、何を、どこで、何の用途で」まで落とし込む
受払統制管理表には、「何を」だけでなく、「誰が」「どの工程で」「何の目的で」使ったかまで最低限記録します。
原因分析や改善活動のレベルが格段に上がります。
3.定期的なミニ棚卸による誤差の早期是正
年1回や半年に一度の大規模棚卸だけでは、誤差の溜め込みになりがちです。
週次や月次など、可能な範囲で「抜き打ち棚卸」や「ミニ棚卸」を行い、ズレの原因をこまめにチェックしましょう。
早期に発見すれば、業務負荷も小さく早期是正が可能です。
4.教育と現場改善提案をセットで進める
棚卸差異はそのまま「教育不足」や「現場・業務設計の穴」を示唆します。
出庫ミスや記録ミスのたびに、現場リーダーがヒアリングし、根本原因の改善提案と教育をセットで繰り返すことで、現場が主体的に「差異撲滅」に取り組む雰囲気を作ります。
まとめ:現場目線の「知恵と工夫」で新しい時代を切り開く
昭和の現場力と、最新の管理システム——そのどちらも活かし、受払統制を一段高いレベルで運用することで、棚卸差異は確実に減らすことができます。
目先のコストだけでなく、現場の隠れたストレスや無駄な人員・手直し工数、生産トラブル、顧客との信頼関係もすべて「差異ゼロ」の先にある成果です。
日本の製造業が更なる競争力を持ち、海外勢と堂々と渡り合うためには、地道な受払統制・現場改善の積み重ねが不可欠です。
「仕方ない」「こんなものだ」と諦めてきたアナログ現場を、一歩先の新しい地平線へ。
今日から棚卸差異ゼロへの挑戦を、あなたの現場で始めてみませんか。
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