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車載電子機器におけるEMC対策の基礎から実践までの技術ノウハウ

目次
はじめに:車載電子機器とEMC対策の重要性
車載電子機器の普及に伴い、車載機器に対するEMC(Electro-Magnetic Compatibility、電磁両立性)対策は、かつてないほど重要視されています。
一昔前までは、車両の電子化はエンジン制御ユニットやオーディオ、カーナビ等に限られていましたが、電動化、IoT、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の潮流の中で、車内外の電子制御装置は指数関数的に増加しています。
その結果、電子機器同士の相互干渉や、外部ノイズの影響リスクが高まっています。
車載機器のEMC不具合は、安全性、快適性、搭載部品の信頼性に直結するため、調達購買担当者も設計担当者も、サプライヤーも、EMC対策の基礎的ノウハウと現場の知見を持つことが必須です。
本記事では、製造現場での20年以上の知見と、現場管理職としての実務経験をもとに、車載電子機器におけるEMC対策の基礎から実践までを、現場目線で徹底解説します。
また、昭和時代から続くアナログ的手法と、最新の技術動向をどう融合させるか、といった視点も盛り込みます。
EMC対策とは何か?:基礎知識と業界の現状
EMCとは何か
EMCとは、一般的に「ある機器が電磁環境下で他の機器に悪影響を及ぼさずに正常動作する能力」を指します。
EMCは大きく二つの要素に分けられます。
1. イミュニティ(耐性):外部から受ける電磁ノイズに対して、機器の動作が正常であること。
2. エミッション(発生):機器自体が発する電磁ノイズが、他機器や通信に悪影響を及ぼさないこと。
特に車載分野は、狭い空間に多くの電子機器が密集しているため、設計段階からEMC対策が欠かせません。
業界動向:昭和の手法からデジタル時代へ
昭和時代には、機械式部品中心の車両だったため、ノイズ問題は限定的でした。
しかし、2000年代以降はECU(電子制御ユニット)やモーター制御、センサ類の増加に伴い、EMCトラブル事例が頻発しています。
一方で、いまだに「現物合わせ」「囲いアース」「シール貼付」など経験則・アナログ対応が根強いのも、業界の現実です。
近年ではCAEシミュレーションやノイズシミュレータ、EMC対策部品(フェライトビーズ、EMIシールド等)の高度化が進んでいますが、すべてをデジタル任せにするのは危険です。
基礎を押さえつつ、現場勘とデジタルの両輪で考えることが、EMC問題解決の王道です。
車載電子機器のEMC試験:チェックすべきポイント
EMC試験の種類
車載EMC試験は、自動車メーカー各社の試験標準に準拠するのが基本です。
ISO 11452、CISPR 25、ISO 7637などが国際標準であり、日本でもJASO規格等が定められています。
主な試験項目は以下のとおりです。
– 放射エミッション(機器から空間へのノイズ放射)
– 伝導エミッション(配線等を通じて放射されるノイズ)
– 放射イミュニティ(空間からのノイズへの耐性)
– 伝導イミュニティ(配線等を通じて加わるノイズへの耐性)
– 静電気耐性(ESD)
– サージ耐性(雷、開閉サージ等)
調達・設計・サプライヤー現場でよくある失敗例
実務現場で繰り返し発生する失敗には、次のようなものがあります。
– サンプル段階ではOKだが、量産時に配線経路や周囲環境が変わりEMC不合格
– EMC対策部品を後付けすると、コストや製品サイズが膨張
– サプライヤーまかせ、もしくはブラックボックスで設計部門との意図疎通ができていない
– 基板アース設計ミスや、シールド設計の不足
こうした失敗の多くは、「確認不足」「設計段階での検証軽視」「コミュニケーション断絶」が原因です。
調達・購買担当や生産管理者こそ、EMC対策の全体像を理解し、各サプライヤーへ適切な要求を出し、設計部門との橋渡しが必要です。
車載EMC対策の具体的な技術ノウハウ
設計段階:ノイズ源の特定と対策
設計段階で最も重要なのは、「何がどこから、どのようなノイズを発しているのか」を的確に把握することです。
– 電源ライン:DC-DCコンバーターやインジェクター駆動、ブラシ付きモーター等はノイズ源となりやすい
– クロック系IC:高速クロック・高速データ通信は必ずノイズが発生
– 配線設計:信号線と電源線の並走、GND配線のスパゲッティ化など
– I/Oピン配置やデカップリング:適切にコンデンサ・フェライトビーズを挿入
この時点からサプライヤー側へ、「どの程度のEMC性能要求か」「どんな現場環境か」の情報を正確に伝えることが、失敗を防ぐカギです。
基板・筐体の設計ノウハウ
昭和の現場では「シールドで囲んで終わり」「アースをとりあえず増やす」など、経験則が重視されがちですが、実はケースバイケースです。
– GND設計には「一点アース」と「多点アース(メッシュ)」の使い分けが必要
– 近年は、樹脂部品へ導電性コーティングや、ウェーブガイド・ガスケット構造を用いるケースも増加
– 基板上は、デジタルノイズ源とアナログ回路の分離・絶縁強化が定番
現場では、「どのノイズ成分が実害か」→「遮るべきか逃がすべきか」→「コスト・実装のバランス」…こうした設計上の熟練ノウハウが不可欠です。
部品調達と現場アジャスト対応
EMC対策部品の選定では、単なる「カタログスペック」では不十分です。
例えば、フェライトビーズはインピーダンス特性(周波数ごとに減衰能力)が実際のノイズ成分に合致しなければ効果がありません。
– 部材ごとにスペックシート、サンプル評価を必ず行う
– サプライヤー側とロット差・バラつき特性まで確認する
– EMC対策部品を「後付け」で採用する場合の生産性・実装工数、リワークリスク
近年では、サプライヤーからの情報開示要求レベルも大幅に上昇しており、調達購買の役割が強まっています。
量産時・保守現場での追加対応ノウハウ
現場でEMC不具合が発生した際のポイントは、「ピンポイントで原因を絞り込む力」と「追加部品投入・設計変更コストを最小化する工法選択」です。
– ノイズ現象は温度・湿度・経年でも変化するため、実稼働状態での試験が必須
– 「状況証拠」だけで対策を講じるとコストや性能に重大な影響
– 昔ながらの「銅箔貼付」「EMIガスケット追加」も一時しのぎには有効だが根本対策ではない
現場でつまずいた場合こそ、「データ重視」と「経験知識(勘所)」の両立が試されます。
まとめ:EMC対策は現場力+設計力+調達力の三位一体
車載電子機器のEMC対策は、もはや一部門・一担当者で完結する時代ではありません。
設計部門とサプライヤー、調達・生産管理・現場保守まで、全ての工程でEMCリスクを理解し、情報の壁を取り除くことが、EMCトラブルの未然防止とコスト最適化の最大の近道です。
昭和時代から続く現場アナログ力も、今だからこそ大きな武器です。
しかし、最新のノウハウや検証技術を貪欲に取り入れ、設計—調達—現場の横断的なスキル習得、情報連携こそが、現代車載電子機器の高信頼性と競争力を支えます。
これから車載電子機器を手掛けるバイヤーやサプライヤー、現場技術者の皆さん。
EMC対策は「正攻法」と「現場発想」の合わせ技です。
ぜひ、現場で役立つ実践的なノウハウを磨き、「EMCのプロ」として一歩抜きん出てください。
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