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筋電図評価を用いた使いやすい製品設計と測定ノウハウ

目次
はじめに:筋電図評価が変える製品設計の現場
近年、製造業の現場では従来型の「勘と経験」に頼ったモノづくりから、科学的アプローチによる客観的な評価手法へと大きくシフトしています。
特に、作業効率や生産性、品質の向上を目的とした現場改善が進む中で、「使いやすさ」や「人間中心設計(HCD)」の重視は避けて通れません。
その中核を担う手法の一つが「筋電図(EMG)評価」です。
本記事では、筋電図評価の基礎から、実際の製品開発・設計における活用事例、さらに計測ノウハウや収集データの現場活用術までを、プロの視点と現場経験を交えて解説します。
筋電図評価とは何か?現場目線で理解しよう
筋電図(EMG : Electromyography)とは、筋肉が活動する際に発生する微弱な電気信号を皮膚表面から測定し、利用する技術です。
この測定によって、「どの筋肉が、どのタイミングで、どの程度使われているか」を数値で可視化できます。
製造現場では、力作業の負担分析、安全配慮設計、作業姿勢・治具・工具設計の最適化など、様々な用途で使われます。
電動工具のグリップ設計や、現場作業者の負担軽減のためのプロダクト評価はもちろん、近年では医療・介護機器、自動車のシート設計など幅広い分野での採用が進んでいます。
なぜ今、筋電図評価が求められているのか
「昭和のやり方」から抜け出せないアナログな現場では、設計開発段階での「使いやすさ評価」は往々にして担当者の主観や声の大きさ、もしくは古株の一言で決まってしまうことがあります。
しかし、グローバル競争が激化する現在、エビデンス(科学的根拠)無き設計は製品価値向上の妨げともなり得ます。
筋電図評価の導入は、「使い手」「作り手」「求められる品質やコスト」すべてのバランスを科学的に取るための武器となります。
これによって再現性のある製品改良、海外取引先や顧客への説得力ある提案、現場改善活動の加速が実現します。
製品設計における筋電図評価の具体的活用ステップ
筋電図評価を製品設計に活かす流れは、おおまかに以下の4ステップです。
- 評価目的の明確化と仮説立て
- 計測計画(筋部位・作業プロセス・評価指標)の策定
- 筋電図データの取得と解析
- 評価結果の設計へのフィードバック
1. 評価目的の明確化と仮説立て
まず「この製品(や工程)で何を解決したいのか」、現場の困りごとや顧客の声に根差した明確な評価目的を定めます。
たとえば、
– 工具Aと工具B、どちらが現場作業者の負担を減らせるか?
– 既存製品Xの内部設計変更で、筋肉の緊張(負担)は本当に減るのか?
– 新規治具導入後の作業負担軽減は数値でどの程度証明できるのか?
といった現場課題です。
これらに対する「仮説」を立てることで、評価指標や分析の焦点も明確になります。
2. 計測計画の策定
どの筋肉(部位)を、どの作業プロセスで、どんな作業者群で測定するかを設計します。
たとえば、ドライバー作業では手首・前腕の屈筋/伸筋、大型部品の持ち上げでは上腕・肩周りの筋肉が主な対象です。
計測装置の選定(ワイヤレス型、電極パッド、計測環境の制約など)も同時に検討します。
また、作業パターンや時間帯ごとの変動を拾うか、標準作業のみ対象とするか、といった実務的なラインナップを整理することがコスト・スピード面で極めて重要です。
3. 筋電図データの取得と解析
計測準備として作業者への説明・同意取得、電極装着位置の入念なマークアップ、装置動作確認(ノイズ混入・ケーブル断線チェックなど)を実施します。
実作業中、装置でリアルタイムに筋電信号(μVオーダー)を記録。
その後、データを
– RMS値(筋活動の大きさ:Root Mean Square)
– %MVC(最大随意収縮比:Maximum Voluntary Contraction比)
– 発火タイミングや筋疲労度
といった指標で解析します。
現場目線で重要なのは「数百サンプルの機械的判定」より、「特定の課題点に絞った、分かりやすい比較・可視化」です。
4. フィードバックと改善サイクル
取得データに基づき、「どちらのグリップ形状が使いやすいのか」「改善策後、筋負担が何%低減したか」などをグラフやヒートマップで示します。
設計開発・現場スタッフ・経営層が集まるミーティングで活用することで、合意形成や追加改善、標準化活動への波及にもつながります。
筋電図計測・解析の現場ノウハウ
現場での筋電図活用は、勉強用の理想論や論文ベースのやり方とは異なる難しさもあります。
20年以上の現場経験から、押さえておきたい「筋電図計測のリアル」なコツを解説します。
1. ノイズ対策と再現性の確保
工場は大量のモーター・インバーター・配電盤があり、筋電計のノイズ混入リスクが高いです。
装置のアース取り、シールドケーブル選択、配線最小化、作業前後のキャリブレーション徹底など、地味な作業が事故防止・再現性担保のカギになります。
2. 作業者ヒアリングとの合わせ技
筋電図データだけを見て「A案の方が良い」と決めつけるのは危険です。
現場作業者の主観的疲労感・違和感・作業リズムの変化を必ずヒアリングし、データとのズレを分析しましょう。
不一致が出た場合こそ新たな発見のチャンスです。
3. 評価プロトコルの標準化と多部門活用
現場×設計×購買×品質の部門間でプロトコルを共有し、定期的な評価手法のアップデートを行いましょう。
「一度やって終わり」ではなく、改善サイクルの中で何度も使いまわす設計にこそ真価があります。
また、サプライヤーとの共同開発や代替部品評価でも、客観的データは必ず交渉力の武器となります。
バイヤー・メーカー・サプライヤーそれぞれの立場での筋電図評価活用術
筋電図評価は、「モノづくりの主語」によって使い方や価値が大きく変わります。
バイヤー(購買担当・発注元)視点
– サプライヤー提案のプロダクト検証・比較評価
– コストメリットのみではなく、「現場負担低減」を加点要素にした調達基準策定
– 海外顧客や本社向けレポート資料の「説得力」向上(データ→根拠資料)
メーカー(開発・設計部門)視点
– 現場提案「A案/B案を数値で議論」する場作り
– エルゴノミクス設計、UI/UXデザイン追求の科学的裏付け
– 生産プロセスの改善(疲労・怪我リスクの低減)→健康経営・SDGs対応
サプライヤー(供給側)視点
– 新製品・改善提案時に「数値でアピール」できる商談材料
– OEM/ODM評価時、「現場納得=差別化ポイント」になる
– バイヤーの求める「リスク≠品質」観点での競争優位形成
昭和的なアナログ工程にこそ“筋電図革命”を
ロボット化やDX化の進む一方、熟練作業者の手技やアナログ作業が多く残る日本の現場。
その強み・技術をムダなく活かし、かつ属人化を防ぐ道こそが「筋電図評価」の真骨頂です。
使い勝手の良い道具や現場改善策を、「思いつき」で終わらせるのではなく、科学的に“見える化”してこそ、現場から信頼され、持続可能な競争力となります。
まとめ:筋電図評価は現場と未来をつなぐ架け橋
筋電図評価は単なる測定技術ではありません。
製品設計、工程改善、現場作業のすべてに、「科学的根拠」と「エビデンス」をもたらす“現場DX”の起点です。
働く人の安全・健康・効率に真摯に向き合うこと――それが、バイヤー、サプライヤー、メーカーすべての強みに直結する時代が到来しています。
昭和から続く「勘と経験」も磨きつつ、客観的なデータとノウハウを組み合わせてこそ、“使いやすい本物の製品”が生まれます。
筋電図評価の導入・活用で、現場力をグローバル競争の最先端へと進化させていきましょう。
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