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責任逃れする上司を陰で「スライム」と揶揄する現場社員

目次
はじめに:現場でささやかれる「スライム」上司とは
ものづくりの現場では、日々さまざまな課題と向き合いながら業務が進みます。
その中で時折、現場社員同士の会話に登場する「スライム」という言葉を耳にすることがあります。
この「スライム」とは、ゲームの中に登場する弱いモンスターのことではなく、「責任逃れが巧みな上司」を揶揄した、現場ならではの隠語です。
本記事では、なぜ現場に「スライム」上司が生まれるのか、その背景や事例、そして業界構造がこの風潮をどう後押ししているのかまで、現場目線で深掘りしていきます。
また、バイヤーやサプライヤーといった調達の立場からも、組織の動向や現場心理を解析し、これからの製造業に求められるリーダー像について考察します。
製造業現場で生まれる「責任逃れ」の土壌
アナログ文化と縦割り組織が生む心理的バリア
日本のものづくり現場では、昭和から続くアナログ文化が根強く残っているケースが少なくありません。
文書は紙ベース、稟議はハンコで承認、現場では日報や点検表も手書きという光景は、多くの工場でいまだ現実です。
このアナログな文化が、ときに意思伝達の曖昧さや曖昧責任の温床となりがちです。
また、縦割りの組織構造が残る現場では、部門ごとの壁が厚く、「俺の仕事はここまで」「あとは他部署の担当」といった線引き意識が生まれやすいです。
いざ問題が発生したとき、責任の所在が不明確となり、担当者や上司が「自分の範囲外だ」「知らなかった」と後ずさりするケースもままあります。
この「後ずさりの妙技」こそが、“スライム”と揶揄される行動の正体です。
「前例踏襲」と「空気を読む」文化が拍車をかける
製造業は特に保守的な業界として知られます。
安全や品質が最優先されるため、これまでのやり方を踏襲すること自体は合理的です。
しかし、この「前例主義」がいきすぎると、「誰かが動いたら自分も動く」「前例がないから判断しない」など、主体的判断を避ける温床にもなります。
さらに、日本独特の「空気を読む」文化によって、「大きな声を出すと浮いてしまう」「面倒な話は波風立てずにスルーする」といった行動も助長されます。
部下から相談があっても、「とりあえず保留にしよう」「何かあればオレじゃなくて、◯◯部長に話して」とかわす上司もちらほら。
重要案件でなければ見て見ぬふりをする…これぞまさにスライム的回避行動です。
「スライム上司」の実例と現場のリアル
現場あるある:納期トラブルで逃げ腰の上司
ある日、仕入先サプライヤーの部品納入が遅れ、生産ラインが止まりそうになったとします。
現場担当がすぐさま上司へ報告したところ、「その件は調達部にも知らせてあるんだろ?」「生産管理課長にも話を通してくれ」と、担当者たらい回しの回答。
折衝や対策のイニシアティブを取るどころか、「自分は当事者じゃない」という意思表示。
このような場面で現場社員が思うのは、「いざというとき頼れない」「結局、最後は現場がかぶる」という諦めです。
リスクが高い局面ほど、一歩引いた位置に“スライム”は現れるのです。
調達購買部門でも:問題発生時の他責指向
調達やバイヤーの現場でも、サプライヤークレームや品質問題が発生した際、関連部門との調整を迫られます。
たとえば、不良品混入の指摘に対し、品質管理部への連絡はしたが「根本原因は現場にあるはず」「私の担当領域外」という回答。
調達担当としては、板挟み状態ですぐに判断・対応したいのに、上司が「もう少し現場で調べてから」「社内稟議の順番を待ってくれ」と“責任回避裏ワザ”を発動。
一方、現場からしてみれば「調達はサプライヤーのせいにするし、上司も自分で動かない」と映る。
現場も管理部門も、お互いに「スライム化現象」が蔓延しがちです。
サプライヤー側から見たバイヤーの“スライム”傾向
サプライヤーにとってバイヤーは、交渉の相手であり注文主です。
しかし、トラブル時にバイヤーが「現場が言っているので…」「品質はそちらの基準で…」と責任を逸らす場面もあります。
サプライヤー側は「誠実に向き合ってくれるバイヤー」と「逃げ腰のバイヤー」で信頼度が大きく変わります。
部下や取引先が困っている時に真正面から対応せず、「組織の盾」の裏でひっそりと逃避…この一連の流れを、ものづくりの現場では「スライム上司」と呼ぶのです。
“スライム”現象の背景にある業界動向と課題
人手不足と業務多忙で自分防衛本能が強まる
製造業では、少子高齢化による人手不足や技術者の高齢化が深刻化しています。
個人の担当業務が年々膨れがちで、「自分の業務範囲で精一杯」「新たな責任はつかみたくない」と考える現場管理職も増えています。
過度な多忙と責任感のアンバランスが、「関わりたくない」「誰かがやってくれるはず」という心理壁を生んでいるのです。
「ミスを恐れる職場」=「攻めの姿勢」を阻害
ものづくりの現場は、品質不良や納期遅延など「失敗」が重く評価されます。
そのため、社員や管理者は「リスクを取って攻めるより、波風を立てずに過ごす」ことが保身となります。
この「守りの型」こそが、スライム的ふるまいの土壌です。
本来は現場力・改善力が強みの日本の工場ですが、失敗に対する「責任追及型」文化が根強いせいで、「自ら動きたくないリーダー像」が形成されがちです。
デジタル化の遅れと属人化リスク
生産管理や購買管理のIT化・システム化は進んできたものの、全社規模での標準化や責任所在の明確化はまだ道半ばです。
「この資料は誰が作る?」「システム入力は誰の担当?」と曖昧な運用が残り、属人的対応が常態化しやすいです。
社内ルールがあいまいな状況では、問題が起きても「自分じゃない」と言いやすくなります。
これが“スライム上司”の逃げ道を広げている実情です。
業界の暗黙知を突破するために
現場発“巻き込み型リーダー”の重要性
新しい時代の製造業には、チームをリードする“巻き込み型リーダー”が不可欠です。
現場の社員一人ひとりが「自分のこと」として課題に向き合う風土が、高品質なものづくりを支えます。
上司自ら手を動かし困難から目を背けず、「一緒に考えよう」「担当をまたぐ問題も自分ごとで」といった態度が現場の信頼感・一体感につながります。
「真の強さ」と「弱さ」を見極める目
スライム的な逃げ腰対応は一時の保身にはなりますが、長期的に見れば「頼れない上司」「組織の成長阻害」の烙印を押されます。
逆に、自分の弱さや限界をオープンにしながらも、責任から逃げない姿勢が真の強さです。
現場や後輩から「正直な人」「親しみやすいリーダー」と評価され、ピンチの時に自然にフォロワーが生まれる組織づくりが可能になります。
バイヤー、サプライヤー双方が意識すべき“現場力”
バイヤー:取引先と現場の間で信頼を築くコツ
調達購買のバイヤーにとって、現場感覚を持って取引先や工場担当者と接することが重要です。
トラブル発生時、「現場任せ」「サプライヤー任せ」とせず、自分の足で現場に入り状況を確認したり、サプライヤーの立場も考慮して調整する役割が求められます。
また、「現場に任せればなんとかなる」と思わず、「現場力」と「交渉力」の橋渡しを意識するとよいでしょう。
サプライヤー:バイヤーの苦悩を読み取る視点
サプライヤーもまた、バイヤーが社内調整や組織内で板挟みになる苦悩を理解する姿勢が大切です。
単に条件交渉や品質要求だけでなく、社内の稟議や現場の心理的ハードルにも目を向けることで、Win-Winの協力関係を築けます。
「バイヤーも現場も大変」という共通認識が、建設的な協働を生むきっかけになるのです。
まとめ:日本のものづくりに問われる「責任力」
昭和からあまり変わらぬアナログ体質、縦割り文化、ミスを恐れる空気。
これらが根強い製造業の現場では、どうしても“責任逃れスキル”が身に付きやすくなります。
しかし、グローバル化やデジタル変革が進む現代、日本のものづくりも変革の時です。
スライム的なふるまいから“責任力”あるリーダーへ。
失敗しても、困っても、「自分ごと」として仲間を巻き込み、業務範囲を越えて課題解決へ動く。
その姿勢こそが、現場の信頼と成長、企業の競争力を生み出します。
バイヤーやサプライヤーという立場に関係なく、「自分の現場力」に磨きをかけていきましょう。
そして、「スライム」と陰口を叩かれるのではなく、「あの人がいるから」と頼られる存在を目指していきたいものです。
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