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ハンドクリームの伸びを良くする乳化比率と撹拌速度の設計

目次
はじめに:製造現場とハンドクリームの品質要求
ハンドクリームは、乾燥肌を守る身近なアイテムであり、品質の良否が消費者の満足度を左右します。
では、なめらかで塗り広げやすい、いわゆる「伸びの良い」ハンドクリームを実現するには、どのような製造技術と配合設計、現場管理が重要なのでしょうか。
今回は、20年以上にわたり製造現場で培った経験をもとに、「乳化比率」と「撹拌速度」という2つのキーファクターにフォーカスし、バイヤーや製造担当者の疑問に現場視点で応えます。
ハンドクリームの基本構成と求められる物性
ハンドクリームは主に水(精製水)、オイル成分(油脂・ワックス)、乳化剤、保湿剤などから成ります。
製品の物性、特に伸びやぬるつきなどの「塗り感」は、これら原料の配合比、混合状態、工程管理によって大きく左右されます。
水分と油分を「どの割合」「どのように乳化」し、最適な粘度で均質に仕上げることが大切です。
アナログ色の強い現場でも、この工程さえ正確に管理できれば、消費者評価の高いクリームが安定的に作れます。
消費者視点:「伸び」の良いハンドクリームとは
・肌への広がりやすさ(滑らかさ、摩擦の少なさ)
・適度な粘度と保湿感の持続
・べたつき・白浮き・肌残りが少ない
これらが現在の市場で特に重視されています。
現場では物性試験や官能評価など複数の評価を行い、数値と感覚の両面から最適品をデザインすることが重要です。
乳化比率の意味と現場での設計ポイント
乳化とは、水と油のような本来混ざり合わない成分を、乳化剤を使い安定的な状態にする技術です。
ハンドクリームでは「油滴(水中油型)」が一般的ですが、「水分:油分:乳化剤」の各比率が物性を決める要素となります。
理想的な乳化比率とは
1. 水分が過剰 → さらさら過ぎて塗り広げやすいが、保湿感が持続しにくい
2. 油分が過剰 → こってり感が強くなる。伸びは悪化、べたつきも増加
3. 乳化剤が不足 → 分離や安定性低下・使用時の不均一感
4. 乳化剤が過剰 → 肌刺激・界面活性剤臭・コスト増、時に白浮きやぬるつき
現場で組み立てるときは、「目標の物性数値」「原料のコスト」「商品コンセプト」「外部規制」「サプライヤーとの素材調達条件」まで総合的に考慮して最適比率を決定します。
配合例:配合バランスと実効性
ひとつの目安を示すと、
・水分 55〜65%
・油分 20〜30%
・乳化剤全体 3〜8%
この枠内で「肌伸びテスト」「安定性試験」「季節やターゲット層」ごとに微調整していきます。
バイヤーや開発者は、同じ「クリーム」といっても配合バランスが製品ごとに違うため、自社のブランドアイデンティティや競合比較で強みを打ち出すポジショニング設計が大切です。
撹拌速度と分散制御が「伸び」の決め手
乳化比率を最適化しても「分散」の状態が悪ければ意味がありません。
特に、工場の現場では「どんなミキサーで」「どの速度・タイミング」で撹拌するかが、実際の品質を大きく左右します。
撹拌速度管理の現場知見
・低速撹拌:油分が大きな粒子のまま残り、クリームがざらつく
・高速過ぎ:乳化剤が分解・シリコンオイルなどの加熱消耗、分離リスク
・最適撹拌:油滴径2〜10μm程度の均一な分散で、滑らかな塗り感が出る
乳化プロセスには「プレミキシング(粗混合)」や「均質化工程(ホモジナイザー使用)」を段階的に組み込みます。
特にクリームの肝となる本乳化工程では、回転数・攪拌刃の形状やバッフルの有無まで重要な変数です。
現場改善では「目標油滴サイズ」と「粘度変化」「温度上昇」などをリアルタイム監視しRO(作業標準書)を整備します。
アナログ体質の強い工場でも、1バッチごとに官能評価と物性試験を繰り返し、経験値を積んで独自ノウハウを磨いています。
アナログ業界脱却のための実践的工夫
昭和型のアナログ管理が根強い業界ですが、「標準化」と「数値化」、そして「データ共有」が肝となります。
現場改善の成功事例
・職人技が支配的だった工程を、粘度・乳化滴度・PHなどで規定(工程標準書化)
・乳化工程で温度管理と回転数に徹底したインターロックを組み込み、歩留まり・ムラを劇的に削減
・QC工程にAI画像検査やFT-IR分析を導入し、検査速度&信頼性アップを実現
・IoTロガーで日々の工程データ収集、技術DBにナレッジ積層、サプライヤーとデータベース共有
変化への抵抗は根強いですが、「現場での成功→標準化→全社展開→バイヤーにもオープンに伝える」という流れが信頼構築と差別化の要です。
バイヤーとサプライヤーの連携深化
ハンドクリーム市場のバイヤーは、単なるコストダウン要求だけでなく「商品価値を高める共同改善」を目指す時代です。
・原材料選定からプロセス開発まで、早い段階でサプライヤーと情報共有・共同検討
・各社ラボワークの繰り返しで「市場でウケる伸び・塗り感」を数値的根拠をもって追求
・現場スペックとバイヤー希望スペックのギャップ分析による改善活動
このような流れが主流になってきました。
ミスミ化、Amazon-supply化が進む時代ほど、「現場ノウハウ+オープンイノベーション」が真価を発揮します。
失敗事例と現場からの学び
現場経験では、「配合を理論値通りにしても、撹拌条件をわずかに変えたらムラが発生した」「乳化剤種類をコストダウンで変更したら、べたつきや白浮きが突然ひどくなった」といった失敗も多くあります。
重要なのは、失敗の度に「なぜ」を突き詰めて、「手順・材料・温度・順番」を変え、トライ&エラーする現場力です。
バイヤーや後工程担当者と忌憚なくディスカッションし、改善案をすぐ反映できる現場のフットワークこそ、成熟産業の真の競争優位となります。
まとめ:伸びの良いハンドクリーム設計へのラテラルシンキング
伸びの良いハンドクリームを設計するためには、「乳化比率の精緻な設定」と「撹拌工程管理」の双方が欠かせません。
しかし、理論や過去の常識にとらわれすぎず、「原料選定→工程設計→現場検証→市場フィードバック→ナレッジ共有」というサイクルを柔軟かつスピーディに回し続けることが、競争力の源泉です。
アナログ色の強い製造業でも、膨大な現場知見と現代的な工程制御やデータ活用を組み合わせ、ラテラルシンキングで新たな突破口を開拓できます。
現場主導の改善活動がサプライヤーやバイヤーとの新しい信頼関係を形成し、「消費者に本当に満足される製品」づくりの力となります。
これから製造業で活躍する人、バイヤーとして一歩先を目指す人、本記事がラテラルな知考や、新たな挑戦のヒントとなれば幸いです。
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