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竹製ランチボックスの製版で厚膜印刷を安定させるための乳剤塗布回数と乾燥条件

目次
はじめに
竹製ランチボックスは、近年のSDGs志向や脱プラスチックの潮流のなかで、持続可能なパッケージ素材として注目されています。
一方で、その独特な素材特性や表面状態は、デザイン性の高いプリント工程の安定化においても、従来のプラスチックや紙以上のノウハウが求められています。
特に、厚膜印刷を用いたロゴ・デザイン表現においては、「乳剤塗布回数」や「乾燥条件」といった“製版プロセスのさじ加減”が安定性の要となります。
本記事では、長年製造業現場で培った実践的な知見と、多くの現場で直面する課題から導き出した、竹製ランチボックスのための最適な乳剤塗布、乾燥条件の考え方を現場目線で掘り下げて紹介します。
現場が直面する課題:竹素材と厚膜印刷の特殊性
竹製品に対する印刷の主なハードル
竹表面は天然素材ゆえに、下記の点で印刷工程に亀裂が生じやすい傾向があります。
– 吸湿性が高く、表面の水分状況によってインクや乳剤の密着性が変化しやすい
– 表面凹凸・毛羽立ちの微細な変動が版の密着やインクの乗り具合に強く影響
– 対湿・対熱変形が生じやすく乾燥工程で反りが出やすい
こうした課題をクリアし安定して厚膜印刷を施すには、製版時の乳剤塗布(コーティング)と乾燥工程を最適化することが、最重要事項となります。
「厚膜印刷」とは何か
厚膜印刷とは、スクリーン印刷において乳剤層を通常より厚く形成し、インクの膜厚も通常以上にする技術です。
ブランドロゴやイラストを立体的に見せたり、高級感を演出するために重宝されます。
一方で厚膜印刷は、焼き付き不良やインク飛びなど品質劣化リスクが増加する難易度の高い工程です。
乳剤塗布回数の考え方と現場での最適化
乳剤とは・適正な膜厚の目安
乳剤とは、メッシュスクリーン上に感光性皮膜をつくる材料で、塗布・乾燥・感光・現像を経て製版されます。
厚膜印刷の場合、膜厚は30μm〜70μm程度が一般的な目安ですが、竹製品の場合は“目詰まりしない厚さ・密着強度”のバランスが求められるため、理論値だけでなく実機テストが重要です。
回数設定のポイント
乳剤塗布回数は、1回あたりの塗布厚と乾燥サイクルの組み合わせです。
厚膜が求められる場合、以下のような手順が一般によく用いられます。
1. 表面処理したスクリーンメッシュに1回目の乳剤を均一塗布
2. 一次乾燥(中間乾燥)を行い、2回目の乳剤塗布
3. 必要な膜厚に合わせて3〜5回、場合によっては7回まで重ね塗り
竹製品は表面凹凸の影響で、“一度に厚塗り”すると剥がれや密着不良のリスクが増しやすくなります。
そのため、薄塗り⇒乾燥を繰り返し、じわじわ目的膜厚へ重ねていく多回塗布(積層型)が、現場にとって最適なパターンとなります。
感覚的には、肉眼で表面均一性・エッジ部分の密着を逐一確認しながら、最終的に予想膜厚の90%〜110%を狙うイメージです。
塗布のコツと“昭和的現場の知見”
現場では、「メーカー推奨×自社ノウハウ」のハイブリッドが鉄則です。
メーカー推奨通りの希釈率や1回塗布厚だけで満足せず、“自社の竹素材ロット”に実際に塗ってみる。
このとき職人の指先感触や、乾燥後の「乳剤フィルムの微妙なうねり」など、アナログ的な感覚も重要視してください。
不良品ロス低減のため、小ロットで逐次トライアルし、毎回仕上がり厚みを測定(膜厚計またはマイクロメーター)しながら最適な回数をフィードバックするのが、現場での成功法則です。
安易に“3回塗りで十分”と決めつけず、必ず「現物合わせ」の見極めを推奨します。
乳剤乾燥条件のベスト・プラクティス
乾燥の基本:温度・湿度・時間
乳剤層の乾燥は、「温度」「湿度」「乾燥時間」の3要素が品質を左右します。
竹素材は吸湿性が高いため、乾燥条件のばらつきが特に印刷品質へ直結します。
最適な基本条件として
– 温度:35℃前後(高すぎると乳剤のヒビ割れ・剥離リスク増)
– 湿度:40%〜50%(理想値、低すぎても高すぎてもNG)
– 乾燥時間:1回の塗布ごとに30分〜1時間。最終乾燥後は最低2時間以上
が理想的な目安です。
実践的な注意点
現場では乾燥機設備も最新機器から昭和型の単純ヒーターまで様々です。
竹製品の場合、急速乾燥(高温・短時間)は必ず反りやゆがみ、大気中湿度の乱高下を引き起こします。
そのため、じっくり“低温・時間をかける乾燥”がリスクを最小化します。
また、乳剤乾燥中は塵やほこり侵入が必ず品質リスクになるため、乾燥室のエアフローや清掃サイクルにも配慮が必要です。
更に、竹製品はロットごとに乾燥後の寸法変化が生じやすいので、乾燥前後で現場管理帳票に寸法・状態を記録する管理手法もおすすめです。
厚膜印刷を安定させるテクニカルTips
現場でできる“ひと手間”の推奨事項
1. 乳剤やインクの適度な温度管理(20℃~25℃帯が理想)を行い、温度差による粘度不良や皮膜変化を防ぐ
2. スクリーン洗浄は竹素材独特のフィルム剥がれを想定し、若干ぬるま湯・中性洗剤で優しく行い、残留洗剤が乳剤密着を阻害しないよう注意
3. 毎ロットでの膜厚測定結果をデータ化し、ノウハウの言語化・見える化を行う
4. 外気変動の大きい季節(梅雨・冬の乾燥期)は乳剤メーカー推奨より乾燥時間を“長めに”設定する
デジタルでもアナログでも、“現物と対話”する姿勢
どんなにデジタル制御技術が進化しても、天然素材である竹を相手にした製版・印刷では、職人の五感と現場観察力がモノを言います。
“昨日とうってかわった湿度の変化”“塗布感触の違和感”“乾燥機の稼働音の異変”など、現場に根差した“気づき”を積極的に工程管理へフィードバックしてください。
この点が、昭和時代のアナログものづくり文化の中で現在もなお生き続けている、本質的な日本の製造業の強みとも言えます。
バイヤー・サプライヤー双方へのメッセージ
バイヤー担当者は「竹製」「SDGs」「厚膜印刷」というキーワードに惑わされず、必ず現場で現物サンプルを出してもらい、実際の生産ラインでの工程管理体制や品質確認の仕組みをヒアリングしてください。
サプライヤー側も“最新設備導入”だけで満足せず、現場ノウハウの「定量化・見える化」を積極展開し、顧客との信頼関係構築に努めてください。
両者の歩み寄りが、ブランド価値を高める竹ランチボックスの真の量産安定化・高評価獲得へとつながります。
まとめ
竹製ランチボックスの厚膜印刷における乳剤塗布回数・乾燥条件の最適化は、現場の“現物主義”と、“工程ノウハウの可視化”の融合がカギを握ります。
単なる作業マニュアルの暗記や省力化だけでなく、「一つひとつの作業工程の再現性をどう高めるか」という、製造現場の原点思考が業界の発展を支えます。
ぜひ、自社・自現場のこれまでの常識にとらわれず、技術革新・新市場開拓のためにも、積極的なチャレンジを続けてください。
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