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木製コースター用の版で露光後の剥離を防ぐためのエマルジョン選定

目次
はじめに:木製コースター用版でのエマルジョン選びの重要性
木製コースターの製造現場では、シルクスクリーン印刷が多用されています。
オリジナリティやブランド価値を高める小ロット生産が主流になる中、製造工程の安定性と品質は競争力の源泉です。
とりわけ、露光後の版からエマルジョン(感光乳剤)が剥離する問題は、歩留まり悪化や納期遅延の大きな原因となります。
本記事では、20年以上製造現場で培った実体験をベースに、現場目線でエマルジョンの選定と運用のポイントを徹底解説します。
アナログ業界で見落とされがちな細かなノウハウや最新の動向も惜しみなく共有しますので、ぜひ実践のヒントにしてください。
なぜ剥離が起きるのか?木製コースター用版の特殊性
素材としての木材とその表面特性
金属や樹脂に比べ、木材は吸湿性が高く、表面凹凸も大きいのが大きな特徴です。
また、木材は生産ロットや樹種による個体差が大きく、同じ前処理条件でも毎回同じ状態に仕上がるとは限りません。
こうした素材の“揺らぎ”が感光性エマルジョンの密着トラブルを引き起こす要因となります。
加工工程がエマルジョンの密着性に与える影響
版の洗浄・脱脂や表面調整が不十分だと、エマルジョンの食いつきが甘くなります。
また、プレス工程での残留薬品や、微細な木粉の残留も、感光層の“浮き”や“剥離”を招きます。
昭和時代から続く「慣習的清掃」では、現代の高性能エマルジョンに対応できないことが多いため、アップデートが不可欠です。
実践!露光後の剥離トラブルを減らすエマルジョン選定のポイント
1. 密着力重視型エマルジョンを選ぶ
メーカー各社がリリースしている“木材・布・デコボコ対応”の強密着型エマルジョンをまず優先して検討しましょう。
密着成分(湿潤剤や架橋剤)が強化されており、特殊な下地でも安定しやすいです。
数十年にわたってアナログ工程を守ってきた工場ほど、明記されている用途にこだわらず、汎用品を使い続けているケースが多く見受けられますが、一度専用タイプを試す価値は非常に大きいです。
2. 二液混合型や高耐湿タイプを視野に入れる
エマルジョンは大きく「一液型(すぐ使える)」と「二液混合型(硬化剤添加)」に分かれます。
安定化が難しい木材への密着では、硬化反応による“化学的アンカー”が作れる二液型のメリットが際立ちます。
コストや作業性を理由に敬遠されがちですが、歩留まり改善やトラブル減少による総コストダウンが十分見込めます。
特に、夏場の多湿による剥離が目立つ工場はぜひ試してみてください。
3. エマルジョン塗布厚や粘度にも着目する
メーカー標準仕様より若干厚塗りかつ高粘度(2~3%増)に調整することで、微細な凹凸への食いつきを底上げできます。
木地の目止め効果と一体化させ、生産中の「剥離リスク」を劇的に減らせます。
これは実際に現場で実践し、数社で反響の大きかったノウハウです。
意外な盲点:前処理や洗浄がエマルジョン剥離のカギ
1. 表面脱脂と静電除去は妥協しない
工場に根強く残る「刷毛だけ」「エアブローだけ」といった簡易的な清掃工程では、手脂や木工機械由来の油分が残りやすいです。
アルコール系脱脂剤と静電ガンによるW処理をルーチン化しましょう。
これだけで密着力の低下・局所的な剥離トラブルが約60%減少したという現場データもあります。
2. 水分管理を徹底する
吸湿しやすい木地は、湿度差による寸法変化や膨潤を引き起こします。
エマルジョン乾燥時に水分が木に移動し、「収縮剥離」が起きやすいので、乾燥や養生工程を確実に管理しましょう。
温度・湿度ロガーの設置や定期的な木材乾燥日報のチェックは、昭和的な「勘と経験」から一歩抜け出すための基本対策です。
露光と乾燥の最適化で更なる品質向上へ
露光条件の見直し
露光不足は、未硬化の乳剤が部分的に剥離する主因です。
UVインテンスメーターで光量チェックを定期的に行い、経年劣化や出力ムラを見逃さないようにしましょう。
また、「露光による熱影響での木材反り」も見落とせない要素です。
製造現場では露光段階を2ステップに分割し、温度負荷を分散する工夫も効果的です。
乾燥工程の最適化
急激な乾燥では、乳剤層の縮みが一気に進み、木材との収縮差が顕在化します。
乾燥炉の温度勾配や風量制御を工場ごとにカスタマイズし、“ゆっくり乾かす”工程管理へシフトしましょう。
これも現場から生まれたノウハウで、多くの歩留まり改善を実現しています。
サプライヤー・バイヤー双方の立場で知っておきたい現場目線
バイヤーに求められる視点
単に安い材料を探すのではなく、「安定的な供給」「技術的なサポート」を含めて全体最適を考えることが求められます。
エマルジョンメーカー・代理店とは、実際の現場トラブルや“失敗事例”まで率直に共有できる関係性を築きましょう。
木工現場の特殊性は、仕入れの現場を見ずには分かりにくいものです。
可能な限り現場見学や現地テストを依頼し、「現場が困らない資材調達」を心掛けてください。
サプライヤーの立場で意識するポイント
顧客が置かれている現場環境(人手・設備・教育状況)まで踏まえたエマルジョン提案が重要です。
「最先端製品」だけをアピールするのではなく、「現場の慣習や癖」をヒアリングし、段階的な切り替え(試験導入→部分展開→全体導入)の流れをサポートしましょう。
また、木材ロットごとに生じる“微差”に対応する上で、「カスタムレシピ提案」や「現場検証セット」を用意しておくのも顧客満足度アップにつながります。
今後の業界動向とラテラルシンキングによる新たな地平線
自動化現場にも生きる“手仕事の知恵”
AI・ロボティクスが普及しつつあるとはいえ、「木」という素材と職人技の組み合わせは今後も生き残るポジションです。
実はAIも膨大な“手仕事ノウハウ”を学習させない限り、本質的な最適解は出せません。
製造現場の知恵をIoTデータや設備制御に落とし込む際も、エマルジョンの物性データだけでは足りません。
実際に「洗浄→塗布→露光→乾燥」全工程のパラメータと歩留まりデータを紐付け、現場と開発サイドを横断的にマッピングすることで、思わぬ隠れた法則や新たな最適プロセスが見出せるケースがあります。
ラテラル発想で突破するために
木工印刷に限らず、「現場でうまくいっている工夫」「失敗や異常の傾向分析」に意識的にアプローチすることで、こうしたアナログ産業でもまだまだ競争力を高める余地があります。
今やメーカー各社も現場フィードバックをもとに“セミカスタム乳剤”の開発や、現場向け教育・啓蒙活動に力を入れ始めています。
バイヤー・サプライヤー・現場担当者が“対等なパートナーシップ”として新たな問題解決手法をラテラルに模索する姿勢こそが、他社との差別化・持続的成長への突破口となるでしょう。
まとめ:製造現場の着眼と現代的選定力が歩留まりを底上げ
木製コースターの版で露光後の剥離を防ぐには、エマルジョン選定だけでなく、その運用や現場オペレーション全体に目を向けることが重要です。
最新の高密着型エマルジョンや二液混合型を検討しつつ、古き良き現場ノウハウも見直し、素材・環境・工程を横断的に最適化していきましょう。
バイヤーは現場を知り、サプライヤーは顧客を知る。
両者が現場から新たな発想をラテラルに創出することで、今後の製造業はさらなる品質革新と競争優位を手にすることができるのです。
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