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原価低減生産性向上リードタイム短縮を達成する技術者向け改善実践講座

目次
はじめに:なぜ今、製造業現場の抜本的改善が必要なのか
日本の製造業は、かつて「ものづくり大国」として世界トップの地位を築いてきました。
しかしグローバル競争の激化、原材料高騰、人口減少に伴う人手不足といった課題に直面し、もはや昭和的な慣習や経験則だけでは生き残れない時代に突入しています。
デジタル化や自動化の進展が叫ばれる一方、現場のオペレーションは今もアナログな体質が色濃く残っており、思い切った変革が進まないケースも多いです。
その中で「原価低減」「生産性向上」「リードタイム短縮」は、製造業にとって永遠のテーマといえます。
これらを同時に実現できれば競争力の源泉となります。
しかし、単なる部分最適の理論や小手先の合理化だけでは根本的な改善にはつながりません。
本講座では、現場実践とマネジメント双方の経験を通じて、昭和から続く課題を乗り越えつつ、次世代を担う製造業人財が知っておくべき改善の勘所を深堀りします。
原価低減の基本と“見える化”がカギを握る理由
原価の内訳を正しく分解・分析する
製造原価は「材料費」「労務費」「経費」の三本柱から成り立ちます。
多くの工場で共通する課題は、全体原価の把握にとどまり、要素ごとの詳細分析や見える化ができていない点です。
まずは部品や工程単位、ひいては一人ひとりの作業に至るまで原価を分解し、どこにどれほどのコストがかかっているのか“数値で見える化”することが出発点です。
材料費には調達ロットや在庫圧縮、サプライヤーとの交渉ノウハウが関わります。
労務費は作業工数分析や人員配置変更、多能工化による最適運用が不可欠です。
経費に隠れている電力・補修・物流・外注費は見落とされがちですが、ここにも大きな改善余地が眠っています。
ムダの「7つの浪費」を現場で徹底排除する
トヨタ生産方式で有名な「ムダの7大要素(作り過ぎ、手待ち、運搬、加工、在庫、動作、不良)」は、熟練工でさえほとんどの現場に残っています。
重要なのは“なぜそのムダが続いているのか”を追究し、「あたりまえ」を疑う視点です。
この背景には業務フローやレイアウトが昔のまま、設備やシステム選定が本音で語れない、バイヤーとサプライヤー間の情報ギャップがある、といった構造的課題が横たわっています。
ここで効果的なのがワークサンプリングやタイムスタディ、IE(インダストリアル・エンジニアリング)に基づく科学的分析です。
また現場・事務双方が一体となったカイゼン活動を、納得感のある目標・指標の下でやりきる文化醸成が必須です。
生産性向上:工程改善からDX導入までの新常識
部分最適に陥らない“全体最適”志向を持つ
例えば検査部門だけ検査効率化しても、前後工程とのバランスが崩れれば工場全体のスループットは下がる、という落とし穴があります。
どの作業が全体のボトルネック(制約条件)となっているか、TOC(制約理論)やプロセスマッピング手法を用い、製品フロー全体での最適化に注力しましょう。
工程改善は、付加価値を生まない“非効率作業”にメスを入れることが肝心です。
JIT(ジャストインタイム)やセル生産方式など、現場特性に合わせた生産方式を選択・カスタマイズする柔軟な視点が重要となります。
“DXの本質”―導入して終わりにしない取り組み方
多くの現場でシステム導入=DX推進と誤解されています。
しかし真に重要なのは「データを現場改善につなげるプロセス設計」にあります。
単に監視カメラやIoTセンサーを入れても、数値を読み解き、現場アクションへ結びつける仕組み・文化がなければ宝の持ち腐れです。
例えば、工程ごとにBT(ベストタイム)とリアル実績を比較・可視化したり、異常アラートを現場スタッフ全員が“なぜ起きたか”考え対策会議を行う、それが出来て初めて現場の数字が変わります。
デジタル活用は「既存のカイゼン手法」と喧嘩するものではなく、現場感覚+数値力を双方磨き上げ、最速PDCAを回すことが真の生産性向上に直結するのです。
リードタイム短縮―時間を“設計”する発想に切り替える
リードタイムの分解と、抜本的短縮への道筋
リードタイムを短縮するには、まず「調達」「生産」「出荷」の3フェーズ、それぞれにどれだけの時間がかかっているか数値化し、“どこが律速段階になっているか”を特定することから始めます。
特に調達では“手配~納入”の業務プロセスで、手書きやFAX頼み、Excel集計など昭和のやり方が抜けていないケースが山積しています。
工程間の停滞(待ち時間)こそが最大のリードタイム要因であり、工程連携を強化するためには「段取り替えの迅速化」「並列進行できる工程の発掘」「スループット管理の徹底」が不可欠です。
バイヤー目線 × サプライヤー目線が共鳴する連携モデル
優れたバイヤーは価格交渉だけでなく、サプライヤーと共に課題を見える化し、工程短縮と品質安定の両立を実現しています。
サプライヤー側も「どうすればバイヤーは安心して発注できるのか」「自社の工程や対応スピードをどこで高めるべきか」を一緒に考え、相互成長型のパートナー関係を築くことが時代の要請です。
そのためには、調達システムのデジタル化、共有プラットフォームでの情報連携、在庫最適化といったテクノロジー活用だけでなく、“現場同士が直接対話し合う場”の継続運用がカギとなります。
事例で学ぶ:現場改善の最前線
事例1:多品種少量生産現場の原価低減とスピード向上
某電機メーカーでは、多品種少量生産の難しさから段取り替え・待ち時間が慢性的に発生していました。
そこで製品ごとの原価・作業時間を徹底的に可視化し、段取り作業の動画共有や標準化、ピッキング動線の見直しを実施しました。
さらに作業者のローテーションを頻繁に行い、最適な人員配置へシフト。
これにより原価は約15%、納期リードタイムは半減を達成したのです。
事例2:サプライチェーンDX化×自働化で品質トラブルゼロへ
自動車部品メーカーでは、調達・受入検査工程の書類対応がネックとなり、不良品混入対策にも人手をかけていました。
EDIやAI画像検査システムなどのIT導入だけでなく、「現場リーダー会議」にバイヤーやサプライヤー担当者も交え、工程ごとの不具合・遅延要因を“現物&本音ベース”で話し合うプロセスを仕組み化しました。
その結果、事務・現場双方の手戻りが激減し、品質トラブルも激減しました。
現場改革を進めるリーダーへの実践アドバイス
現状把握と数値“見える化”がすべての起点
どんな改善活動も、主観や感覚だけでなく「目に見える数字」「ありのままの現物」から出発しなければ変化は継続しません。
ライン毎、工程毎、アイテム毎のデータをきめ細かく収集し、“なぜそのムダが生まれているのか”根本の構造課題をあぶり出しましょう。
カイゼンは“やり切る”姿勢と巻き込み力
現場での改善活動が形骸化しがちなのは、「やらされ感」や「定着させる仕組み不足」に起因します。
従来からのピラミッド型指示系統ではなく、現場のチーム同士が目標を自分ごととして腹落ちさせるミッション共有と、継続的なフィードバック・表彰など“仕組みを回し切るマネジメント力”が肝要です。
デジタルと現場感覚を掛け合わせた挑戦を恐れない
デジタルツールや自動化設備も、導入して終わりではありません。
現場でこそ生きる使い方を現場の声から調整・見直す“人間中心”のアプローチを続けましょう。
まとめ:製造業に未来を切り拓く、“現場×データ×共創”の改善力
原価低減・生産性向上・リードタイム短縮を現場レベルで本当に実現するには、数字に強く、現場の生の課題と向き合い、サプライチェーン全体で課題解決に取り組む「共創型の現場リーダー」が求められます。
部分最適に満足せず、全体最適を志向し、アナログな“昭和体質”もデジタルの新潮流も融合しながら、常に一歩踏み込んだカイゼンへの挑戦をぜひ続けていきましょう。
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