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スタートアップの技術力を見抜くためのエンジニアリング質問集

目次
はじめに:スタートアップと製造業の新しい接点
製造業の現場では、いま大きな変革期を迎えています。
とくにデジタル化や自動化を牽引しているのがスタートアップ企業の技術力です。
調達や購買のバイヤーとして、あるいはサプライヤーの立場でも、スタートアップと組むことで自社の競争力を高められる時代が到来しています。
一方で、「このスタートアップの技術力は本当に信用できるか?」という不安は常につきまといます。
従来の大手取引先と違い、「実績が少ない」「ノウハウの裏付けがない」など不安材料も多いからです。
そこで今回は、製造業の現場経験+バイヤー/工場長視点から、スタートアップの技術力を見抜くためにどんなエンジニアリング的質問を投げかけるべきか、その質問集と背景解説をまとめました。
バイヤーを目指す方、サプライヤー視点から購買部門の懸念を知りたい方、製造系スタートアップの皆さまにも役立つ実践コンテンツです。
なぜスタートアップの“本当の技術力”を見極めるのが必要か
製造業のアナログ構造とスタートアップのギャップ
従来の製造業は長年の取引や信頼関係、実績主義で成り立っていました。
特に調達購買や生産現場では「モノを作り続けてきた経験値」が絶対視される傾向があります。
この“昭和的な勘や経験の強さ”は、デジタルな新興企業と最もギャップが出る部分です。
一方でスタートアップは、課題解決やイノベーションという点で大きな魅力と鋭さを持っています。
しかし現場実装力・品質維持力・量産化まで含めた“総合技術力”となると、その強みだけでは測りきれません。
「アイデア1発屋」ではサプライチェーンの信頼は生まれませんし、工場ラインの混乱要因になりかねないからです。
そのため、単なる調達コストや新技術の目新しさではなく、「現場で長く活きる実戦力が本当にあるのか」を見抜く質問が必要不可欠です。
スタートアップの技術力を見抜くためのエンジニアリング質問集
ここでは、製造業現場の経験者として、実際に使える“鋭い”質問例と、意図や背景についても解説します。
技術コンセプト・設計思想についての質問
・根底にある「技術哲学」は何ですか?
→なぜその方法を選び、どこが今までと違うアプローチなのでしょうか?
・企画から試作、量産まで一貫した技術的課題は何でしたか?
→技術開発の全体像や本質的なチャレンジポイント、失敗例をストーリーで語れるかが大事です。
このパートは「単なる実装技術」だけでなく、どれだけ顧客課題や現場に根差した思考を持っているかを見抜く上で有効です。
品質管理・検証方法についての質問
・品質管理のためにどんな指標やテスト工程を設けていますか?
・想定外の異常や不具合が発生したとき、どのようなフローで対処しますか?
量産フロー設計やISO対応を想定し、「現場発生トラブルの根っこが分かるか」「場当たり的でなく再発防止策を用意できるか」を見極めます。
生産管理・スケーラビリティに関する質問
・小ロットから量産までの移行で苦労した点は? その解決策は?
・他社ラインへ納入する際、生産変動へのリカバリ体制はどう考えていますか?
スタートアップは初期PoCや小規模ロットでの開発が得意ですが、1,000個、10,000個となったときに「現実的なコスト・歩留り・納期」で対応できるか、具体的な計画があるかを確認してください。
設備や自動化対応についての質問
・現場の自動化やIoTへの接続サポート実績はありますか?
・設備導入後の現場工員トラブルや操作教育はどう行いましたか?
工場の自動化やOT-IT連携では、デジタル屋・メーカー双方の事情を理解できるかが鍵。
現場目線の“設置の苦労”や“データ連携トラブル”など泥臭い話を語れるかが要点です。
サプライヤー管理・トレーサビリティの質問
・部品・素材調達の情報管理(トレーサビリティ)体制は?
・標準化や認証取得(ISO/TS16949等)への対応経験は?
「現品管理」「ロット管理」「不適合品の発生源追跡」について深掘りしてください。
トレーサビリティの弱いサプライヤーだと、メーカー現場は品質事故時も調査対応に追われます。
経験値がピンポイントで現れます。
運用保守・サポート体制の質問
・導入後、現場トラブル時のサポート体制・FAQはどこまで用意していますか?
・導入先で実際にあった“想定外トラブル”への対応例を教えてください。
ここは「365日、現場で困っている担当者が夜通し作業する」という“昭和アナログ”ならではの現場文化に、どこまで歩み寄れるかが問われます。
サポートも“現場を本当に知っているかどうか”で熱量や準備がまるで違います。
昭和から令和の現場へ:アナログ意識への歩み寄りが決め手に
どれほど素晴らしい技術を持つスタートアップでも、製造現場の「現物・現場・現実」を理解し、お客様(現場担当者)に寄り添う姿勢が無ければパートナー選定には至りません。
昭和的なやり方(帳票による現物確認、何度も現場に顔を出す繰り返し、電話での情報共有など)が未だに根強く残っているのが日本の製造業です。
スタートアップの側も、その“昭和マインド”を毛嫌いせず、誠実なコミュニケーションを図ることで信頼を得られます。
逆に、バイヤー側も「デジタルだからこそできること」をきちんと引き出し、現場にマッチする形で並走することがポイントです。
まとめ:信頼構築のための質問と現場目線の重要性
スタートアップの技術力を見抜くためには、単なる書類審査やカタログスペックではなく、「現場で困ったことをどれだけ理解し、解決できるか」というエンジニアリング的な観点が不可欠です。
技術開発の思想、現場トラブル対応力、量産までの運用一貫力、サポート体制やトレーサビリティ--全方向から深掘りしながら、現場目線での価値観をすり合わせること。
これが、昭和から令和で変わりゆく製造業の“真の新陳代謝”になると考えます。
調達・購買担当のみなさまは、「どんな現場担当者にも通じる共通言語を問う」姿勢で。
サプライヤー、スタートアップの皆さまは、「本当に現場に寄り添えているか」を振り返り、バイヤーとの信頼構築を意識してください。
日本のものづくりを未来へバトンするのは、現場の“リアル”を理解したエンジニアリング対話です。
ぜひ、今回ご紹介した質問集を切り口に、新しい価値ある協業を切り拓いていただければ幸いです。
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