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最新音響技術を取り入れたサウンドデザインで製品価値を向上

目次
はじめに ~製造業と音響技術の新たな関係~
製造業といえば、質実剛健、ものづくりの現場、というイメージが根強く残っています。
特に日本の製造業では、昭和から続く現場主義や厳格な品質管理体制が今も脈々と受け継がれています。
しかし、時代は常に変化し続けており、IoTやAI、ロボティクスといった新技術の導入が当たり前となりつつあります。
そんな中、ひときわ注目したいのが「音のデザイン」すなわち、最新の音響技術を製品に組み込むことで価値に磨きをかけるサウンドデザインです。
このコラムでは、現場経験者として、なぜいま音響技術が製造業界で注目されているのか、そして製品や企業の価値向上にどのようにつながるのかを解説します。
音響技術がもたらす顧客価値の変化
サウンドデザインとは?~五感に訴える製品開発~
従来、製造業では「性能」「耐久性」「コストパフォーマンス」といった機能性にフォーカスしがちでした。
しかし消費者のニーズは時代と共に多様化しています。
その中で今、大きく注目されているのが「感性価値」。
製品が目や手だけでなく、“耳”をもてなすかどうかが選ばれるポイントになっています。
たとえば、自動車のドアを閉める音。
「バシャン」と軽い音なのか、「ドンッ」と重厚感のある音なのかで、その車に乗ったときの安心感が大きく変わります。
白物家電でも、操作ボタンのクリック音やサイン音が「美しい」「心地よい」設計だと、その製品への満足度は格段に上がります。
これは、単なるBGMや効果音の域を超え、設計段階から緻密に計算された「音の演出」であり、これこそがサウンドデザインなのです。
音響技術×製品開発の最新潮流
日本の製造現場では、長らく「音」はノイズとして敬遠される傾向にありました。
静音化が品質向上の証であり、不快な音や異音は排除されるもの。
昭和世代のエンジニアの多くは「うるさい=悪」、静か=正義、と刷り込まれています。
しかし近年、家電・自動車・医療機器など、あらゆる業界の最先端企業が「心地よい音」に着目し始めています。
3Dサウンド、バイノーラル録音、AIによる音解析などの技術革新が進み、試作段階で「理想の音」を創り込むことができるようになりました。
こうした音作りは、単なる“オマケ”や“装飾”ではなく、製品ブランドの印象や独自性を決定づける核心的な設計要素となっています。
バイヤー視点で考えるサウンドデザインの導入戦略
なぜサウンドデザインが調達購買・バイヤーにも重要なのか
製品開発ではコストと品質のバランスが常に求められます。
従来型製品では、音響部品やサウンド設計は「コストアップ要因」として忌避されることも多くありました。
しかし今、調達・購買部門にも「サウンドデザイン」を戦略的に取り入れる動きが見受けられます。
なぜでしょうか。
それは「音」が消費者の印象を決定付け、リピートやブランドイメージに直結するからです。
たとえば、同じスペックの家電や自動車なら「心地よい作動音」「安心感のあるサイン音」「高級感のある機構音」が選ばれる理由となります。
これを知っているか否かで、調達購買の戦略はガラリと変わります。
バイヤーは、今やサウンド設計に強いサプライヤーや部品メーカーとパートナーシップを結ぶことが競争優位性に直結する時代となってきているのです。
調達で留意するべき最新音響技術とは?
具体的に、現代の調達バイヤーが注目すべき音響技術とはどのようなものがあるでしょうか。
現場経験者として特に押さえておきたいポイントをまとめます。
1. Material Sound Design
素材自体が発する音の特性を活かし、加工プロセスで音響効果を作り込む技術です。
金属や樹脂、ゴムなど、素材ごとの特性を理解した上で、「理想の音」をコントロールするノウハウが求められます。
2. Acoustic Simulation
CAE(Computer Aided Engineering)の発展により、試作前に音響シミュレーションが可能です。
設計・調達段階で「どの部品がどう共鳴するか?」を評価できるため、設計変更レスでコスト最適化が実現できます。
3. 音声認識・AI解析
スマート化が進む中で、音声コマンドやAIによるリアルタイム解析が標準装備になりつつあります。
マイクロホンや音声ICなどの最新調達が重要な意味を持ちます。
4. 感性工学に基づく評価手法
「この音は高級に感じるか」「安心感は充分か」など、従来の数値スペックだけでなく、人間の感じ方を評価する専門家や手法が必要とされています。
バイヤーとしては、これらの知識や提案力を持つサプライヤーと協力関係を築くことが不可欠です。
サプライヤーの立場から見た“バイヤーの期待”
バイヤーが重視する「サウンドデザイン力」
サプライヤー企業にとって、バイヤーからの受注を勝ち取るには、従来の価格訴求や納期遵守は大前提です。
そこに加えて、今後より重要になるのが「サウンドデザインに関する提案力」です。
たとえば、新規案件のRFQ(見積依頼)で「~のような音質」「ブランドにふさわしい音」など、これまで曖昧だった要求が、今やスペックとして資料化されるケースも増えています。
この抽象的な要求に技術力と感性の両面から応えられるサプライヤーが選ばれるのです。
材料・加工の職人技、音響エンジニアリング、感性評価のノウハウ―これらを有機的に組み合わせ提案できるかどうか。
ここにサプライヤーの生き残りがかかっています。
現場発のプロジェクト成功のコツ
サウンドデザインプロジェクトを成功させる最大の鍵は、「開発現場・製造現場との情報連携」です。
例えば、納品された部品が「設計図通り」でも、現場で組み上げてみたら全く意図しない音がした…というのはよくある話です。
設計段階での仕様把握、製造・組立現場での実音チェック、さらには市場でのユーザー体験調査まで、一気通貫で音の品質を追いかける仕組み作りが勝敗を分けます。
また、音響技術者の声を積極的に吸い上げ、開発・営業・品質保証と連携し“実際の音”を基準に評価・改善サイクルを回すことが必要です。
昭和の価値観と「音」に対する新感覚との共存
いまだ多くの製造現場では、「静かであればOK」「余計な機能は不要」といった、昭和的な物差しが根強く残ります。
「音にこだわるのは贅沢」「コストダウンを優先すべき」といった現場目線も無視できません。
一方で、新しい世代のエンジニアやマーケターは「製品の世界観」や「感性価値」をどこまでも大切にしようとします。
この価値観ギャップは、現代製造業が抱える構造的な課題でもあります。
解決のポイントは、両者を対立させず、両立を目指すこと。
つまり、「効率と感性」「伝統と技術革新」を現場の中でバランスさせ、最適解を探る“ラテラルシンキング(水平思考)”が重要になります。
これからの製造業サウンドデザインの展望
音響専門職が製造現場を変える時代
これまで製造業界で評価されにくかった「音響エンジニア」「感性評価者」のニーズは今後拡大する一方です。
現場での音響評価会、感性ラボの設置、ユーザー調査の実施など、音響技術者の新たな活躍の場が広がっています。
またAIやIoTとの連携で「全自動音響品質チェック」「オンラインによるユーザー評価」など、新しい価値創出の仕組みも見えてきました。
企業価値・ブランド価値の飛躍へ
今後、製品がどれだけ高性能・低コストであっても、「印象に残る、心地よい、独自性のある音」を持つかどうかが、競合との差別化になります。
サウンドデザインがもたらすイメージアップや口コミ効果は計り知れず、これが新たな企業のブランド価値を決定付けていくでしょう。
グローバル市場ではすでに「音によるブランドイメージ形成」に巨額の投資が行われています。
日本の製造業も、これに遅れを取らぬよう、積極的な音響技術投資と現場への浸透が不可欠です。
まとめ ~現場から始まるサウンドデザイン革命~
今回ご紹介したとおり、最新音響技術によるサウンドデザインは従来の「機能主義」だけでは掴めない、新しい製品価値を生み出しています。
バイヤー・サプライヤー双方にとって、感性を大切にするサウンドデザインは「技術+感覚」の融合力が問われる分野です。
昭和体質の“静音志向”に留まるか、次世代消費者の“心地よい音”を価値とするか。
その選択が、これからの企業ブランドや競争力を大きく左右する時代です。
現場を知る皆さんが、今こそ一歩踏み出し、音響技術をものづくりにどう活かせるか。
ラテラルシンキングで深く考え、新しい価値創出の一翼を担っていただきたいと思います。
サウンドデザインは、単なる流行りやオマケではありません。
「音」が作り手とユーザーをもっと身近につなげ、製品体験そのものを豊かにしてくれるのです。
明日の製造業を変えるのは、あなたの“耳”かもしれません。
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