投稿日:2025年7月7日

各種アクチュエータ特性と制御技術で高機能化を実現するポイント

はじめに:アクチュエータの高機能化が製造業にもたらす価値

製造業の現場では、アクチュエータは単なる“動力源”としての役割を超え、設備の自働化・省力化や品質安定、スマートファクトリーへの移行の鍵を握っています。

20年以上、現場の最前線で調達購買・生産管理・品質管理・工場長として歩んできた中、まさにアクチュエータの技術革新が現場の課題をいくつも解決する姿を目の当たりにしてきました。

本記事では、「各種アクチュエータ特性と制御技術で高機能化を実現するポイント」というテーマのもと、昭和的なアナログ文化が根強い現場でも取り入れやすい実践的な視点を重視し、これから製造業を支えるエンジニアや購買担当者、またサプライヤーの立場の方々へ価値あるヒントをお届けします。

アクチュエータの基礎:種類と機能の違いが現場を左右する

アクチュエータとは何か?現場が求める基本動作

まずアクチュエータとは、電気などのエネルギーを機械的な運動エネルギーに変換し、装置やロボットの動作を制御する機構全般を指します。

その種類も多岐にわたり、現場のニーズや制御の容易さによって選定が異なります。

代表的なアクチュエータには以下があります。

電動式アクチュエータ(サーボモーター、ステッピングモーター)
空気圧(エア)アクチュエータ
油圧アクチュエータ
その他(熱/磁気/音響アクチュエータなど)

現場で目立つのは「コストや使い慣れたエアアクチュエータへの偏重」ですが、一方で制御性・省エネ・精度要求など次世代のトレンドは「電動アクチュエータ」の利用拡大へ進化しています。

各種アクチュエータの特徴と適用シーン

電動アクチュエータは、精密な位置決め・速度制御ができ、サーボ制御技術を活用することで自動車・電子部品製造等に不可欠です。

空気圧アクチュエータは、単純な往復動作や、多数のシリンダを安価に動かしたい場合に強みがあります。

油圧アクチュエータは、超大きな力や重い負荷物の駆動で力を発揮し、プレスや建設機械でよく使われています。

昭和の現場ではエアシリンダの“定番感”が根強いですが、現代はIoT対応・スマート設備移行を意識し、電動アクチュエータの再評価が静かに進行中です。

制御技術の進化:アナログからデジタルへの転換点

現場の課題:制御の難しさと属人化の壁

調達購買や生産管理の立場でよく突き当たるのは、設備制御の“ブラックボックス化”やオペレーター個人の経験則に依存する運転調整です。

これは以下のような現場課題を生み出します。

– 同じ装置でも品種やロットごとに調整結果がばらつく
– トラブルシュートや計画外停止が属人対応になる
– 稼動データが蓄積されず、改善も進みにくい

こうした現場の壁を打ち破るためには、アクチュエータの「特性を活かした制御系設計」と「デジタル管理による標準化」が重要です。

精度・応答性を向上させる制御方式の選定

電動アクチュエータでは、位置や速度、推力の高精度化とともに、センサーからのフィードバック制御(クローズドループ制御)が主流です。

– PID制御(比例・積分・微分の複合調整)
– 先進的なモデル予測制御やAI制御技術の応用

一方、アナログ主流のエアアクチュエータでも、リードスイッチや圧力センサー、流量制御などを組み込むことで「実質的なデジタルフィードバック」が可能となります。

大切なのは、「現場の人・もの・機械に適した制御を選定し、運用現場に確実に落とし込む」ことです。

高機能化実現のポイント:調達・バイヤー目線からの視点

1. アクチュエータの“スペック至上主義”に陥らない

調達・バイヤーの現場でよく起こるのは、カタログ上のスペックや最大推力、最小寸法など「数値比較」で判断が先行するケースです。

しかし現実の現場では、“本当に必要なのは立ち上げ初日の安定稼動”や“トラブル時の復旧性”であり、カタログにない部分が競争力や差別化になります。

例えば、「ライン停止のリスク低減を設計にどう反映させるか」や「シンプルでわかりやすい保全性の向上」など、現場運用まで想定したアクチュエータ選定が重要です。

2. 制御方式とIoT対応の“連続性”を重視

昭和型アナログ設備からデジタル転換する際、「一部だけ先進機能にしても全体の歩留まり・可用性が向上しない」という罠があります。

アクチュエータ単体の高機能化はもちろん、通信機能(ネットワーク対応)、データ取り込みのインターフェースやクラウド接続のしやすさを、運用管理の視点からも評価することが大切です。

現場担当者も、購買選定のタイミングで「高機能制御=トラブルシュートや自己診断機能」「IoT連携での予知保全」など、数年後の運用性まで含めて打合せすることをおすすめします。

3. サプライヤーとの対話:本音の“現場課題”を持ち込もう

購買・現場担当者がサプライヤーに価格や納期だけでなく、

– 「これまで困ってきた典型的なトラブルケース」
– 「稼働現場で起きている微妙なバラつき」

などの現場課題をできるだけ具体的に持ち込むことで、サプライヤー側の技術者も本気で“現場寄りの最適提案”を用意してくれるはずです。

これこそが、日本のものづくり現場を次世代へアップデートするための「パートナーシップ思考」の起点となるでしょう。

アナログ文化の壁を超える:導入浸透のための工夫

現場教育・運用ルールの標準化がカギ

どんな先進技術も、“昭和型現場”ではベテランオペレーターの経験則がベースになっている限りは定着しません。

電動アクチュエータやIoT制御を導入する場合、下記のような地道な取り組みが最終的な設備力・生産性の向上を支えます。

– 誰でも理解できる「現場マニュアル」とトラブル時の復旧早見表の作成
– 導入初期は“旧設備との比較実演”を行い、納得感と安心感を提供
– “異常発生時のパターン化”で属人性を低減し、ノウハウ継承を促進

現場に根付く教育と運用ルールの標準化なくして、高機能アクチュエータの真価は引き出されません。

長期運用コストを意識した設計思想

一時的な投資コストや初期導入のインパクトだけでなく、“運用5年、10年目以降のメンテナンス性・拡張性”も重視して設計思想を貫くことが、特に日本の製造業に通底する王道です。

プログラムの再利用性やパーツ標準化、予備品補給性も含め、トータルコスト視点でサプライヤーと設計段階から詰めることを強く推奨します。

まとめ:製造現場の未来を切り拓くアクチュエータ活用の提言

アクチュエータの高機能化は、製造業のスマート化・省力化・コスト競争力強化のためにますます欠かせない時代となっています。

– アナログ文化とデジタル制御の“架け橋”となれる機種・運用設計に目を向けましょう
– スペック至上主義ではなく、運用現場の“使われ方”に配慮した調達・導入が重要です
– サプライヤーと本音をぶつけ合いながら、長期的なパートナーシップを築きましょう

現場の第一線で感じる“使いにくさ”や“改善点”こそが、未来の日本のものづくりを変えるヒントになります。

新旧技術の橋渡し役として、次世代現場を切り拓く皆さんと一緒に、進化を楽しみながら取り組んでいきましょう。

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