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地域行政が推進する“マルチサプライヤー化”で調達の安定性を高める方法

目次
はじめに 〜製造業を取り巻く「マルチサプライヤー化」への要請〜
近年、製造業界ではサプライチェーンの分断や、不透明な国際情勢、天候災害などのリスクが顕在化しており、「調達の安定性」が経営課題として強く意識されています。
こうした中、各地域の行政や産業支援機関が推進する「マルチサプライヤー化」の流れが加速しています。
調達先を特定サプライヤーや一国に依存するリスクを分散し、BCP(事業継続計画)強化にも繋がるこの取り組みは、昭和時代から続く長年の商習慣に根差した“単一サプライヤー信仰”から脱却する大きな転機ともいえます。
この記事では、ものづくり現場の視点からマルチサプライヤー化のメリット・デメリット、現場が直面するリアルな課題、そして実際に調達の安定性を高めるための具体的なステップをご紹介します。
なぜ今「マルチサプライヤー化」が重要なのか?
変化する世界情勢と調達リスクの多様化
地政学リスクの高まり、感染症によるサプライチェーンへの打撃、デジタル化によるグローバル調達競争——今や調達リスクは従来のコストや品質だけでなく、あらゆる外部要因によって日々複雑化しています。
中国依存度の高かった部品・原材料が突然納入不能となったり、単一工場からの供給停止で生産ラインが止まる事例が続出しました。
調達力・サプライチェーンの信頼性こそが競争力の根幹となった今、複数のサプライヤーと連携を図るマルチサプライヤー体制の構築は、すべての日本のものづくり企業に共通する急務となっています。
なぜ昭和型の「御用聞き一本化」から脱却しにくいのか
日本独自の取引慣行では「御用聞き」的な特定仕入先に全面依存した安定志向や、長年の信頼(義理・人情)を重視した排他的発注スタイルが今も根強く残っています。
特に中堅・中小メーカーでは、購買担当者自身が「他社見積依頼をかけるのは気が引ける」「価格交渉で関係が悪化したら…」といった心理的障壁を抱えがちです。
サプライヤー側も“お得意様”との長期関係性を重んじ、変化を歓迎しないケースが多く、結果として単一依存が常態化してしまうのです。
行政の「マルチサプライヤー化」支援策と業界の潮流
行政による後押しと補助金制度
自治体や経済産業省、各地の中小企業支援機関は、リスク分散を目的にサプライヤーマッチングや新規取引開拓のための補助金・コンサルティングを積極化。
たとえば、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などの助成事業において、調達体制の強化や流通経路の多様化を目的とした経費も支援対象となり、設備投資やサプライヤー開拓の後押しが進んでいます。
加えて、異業種交流会や 商工会を挙げた展示会、行政主催のオンライン商談会等も活発化しつつあります。
製造業界におけるマルチサプライヤー化の進展事例
食品・医薬品・自動車など、特に安全保障の観点が強い分野では、複数取引体制の構築がスタンダードになりつつあります。
大手完成品メーカーの調達部門がサプライヤーに対し「二重系」「三重系」の供給体制を指示するケースが増え、下請け(協力工場)サイドでも「いつでも新規取引先の開拓ができる体制」が求められています。
業界を挙げた商流の多様化が浸透しつつあることを実感します。
マルチサプライヤー化の実践的メリットとデメリット
メリット ~安定供給と交渉力強化~
・突発事象へのリスク分散:自然災害や事故、倒産などによる供給停止時も、他サプライヤーからの調達が可能
・価格競争力の向上:複数社見積で価格の妥当性を確保しやすい
・技術・サービスの多様化:各社の得意領域を比較・活用できる
・調達リードタイム短縮:納期が逼迫してもバックアップ対応が可能
デメリット ~管理コスト・品質維持の課題~
・管理の煩雑化:図面・仕様・購入履歴などの情報整理や、納期・品質管理体制が複雑になりやすい
・社内工数の増加:新規サプライヤーの探索、監査、評価、契約プロセスが必要
・品質ばらつきの懸念:複数サプライヤー間で品質規格・管理レベルに差が出やすい
現場目線で考える「マルチサプライヤー化」推進ステップ
1.現状課題の“棚卸し”
まずは現行の調達先を改めて洗い出し、「特定サプライヤー依存率」「納品実績」「過去の納入問題」などを数値で見える化します。
過去3年以内に供給停止やトラブルが発生した品目、また災害時に調達がひっ迫したカテゴリーを抽出。
生産ライン停止のリスクが大きい部材・工程から優先順位をつけてサプライヤー分散余地を検討します。
2.候補サプライヤーの探索と選定
商工会や行政主導のマッチングサイト、業界団体名簿、展示会等を活用し、地場の有力サプライヤーや新興企業をリサーチ。
ポイントは「既存サプライヤーの代替になり得るか」「品質基準に適合するか」「BCP対応(複数拠点生産等)が可能か」といった観点で、現場主導で下見・工場監査を実施することです。
単に見積りを集めるだけでなく、現場同士で実際の生産現場の雰囲気・技術力・担当者の機動力を“肌感覚”で見極めることが極めて重要です。
3.発注ガイドライン・取引ルールの構築
マルチサプライヤー化にあたっては、従来の「なあなあ発注」から“見える化された公平ルール”への切替が求められます。
予備発注制度、品質基準の統一、BCP発動時の緊急調達ルール(例:ある発注数量の3割は常時セカンドベンダーに割り振る等)を社内規定として整備。
サプライヤー側とも「なぜ2社化するのか」「どのような場面で発注が増減するか」を丁寧に共有し、“双方納得”の形をつくることがスムーズな運用のコツです。
4.品質・購買部門と現場の垣根を超えた連携強化
購買担当・品質管理・生産技術が縦割りで動きがちな日本の現場ですが、サプライヤー2社化・3社化の際は、図面・仕様・品質検査項目の揺れを極小化し現場からのフィードバックを密にすることが肝です。
定期的なサプライヤーミーティングを設け、トラブル発生時の原因分析や改善策を迅速に共有。発注実績や品質データも「見える化」し、社内外の信頼関係を築きましょう。
バイヤー/サプライヤー 双方が「マルチサプライヤー化」に抱く本音とは
バイヤーの不安:本当に新規サプライヤーは信用できるのか?
「いつ状態が不安定になるか分からないからバックアップは欲しい、でも新規サプライヤーの応対やリードタイム、技術力に本当に期待できるのか…。」
現場の調達担当者からすれば、既存サプライヤーの“安心感”を手放す不安は常につきまといます。
しかし、業界標準や他社ベンチマーク情報にアンテナを張っておくことで、本当に「使いやすい新規サプライヤー」「切替えやすい部品カテゴリ」の見極めが可能になり、安定供給に自信を持つことができます。
サプライヤーの不安:取引が分散し売上減につながるのでは?
サプライヤー側から見れば「二社化・三社化されたら自分の売上は減るのか」「なぜ今までの阿吽の呼吸が破られるのか」と抵抗感を持つ場合も少なくありません。
しかし、リスク分散への積極的な協力が評価され、結果として新たな取引案件や大手バイヤーからの評価、紹介につながる事例も増えています。
むしろ長期的に見て、バイヤー側の成長や信頼関係を構築しやすくなること、異業種案件など“新しい道”が開けやすいことが最大のメリットなのです。
まとめ 〜「マルチサプライヤー化」がもたらす製造業界の新地平〜
地域・行政が推進するマルチサプライヤー化の波は、従来の昭和流商慣習に根ざした“なれ合い型”サプライチェーンから、「強靭で透明性の高い調達体制」への大きなシフトです。
単なる取引先の分散ではなく、サプライヤーとの真のパートナーシップを築く絶好の機会になります。
業界横断の交流・情報共有で技術力と信頼感を高め、経営層も現場各部門も一体となって新しい付加価値を創出できるよう、今こそ柔軟な発想で、現代の“ものづくり調達”に挑戦していきましょう。
製造業の現場から、現状維持ではなく“未来志向の冒険”をともに開拓する意識が、日本の産業発展と地域経済の未来を切り開きます。
ぜひ、皆さんの現場でも一歩踏み出してみてください。
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