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候補材リストのプリクオリ認証で設計自由度と調達速度を確保

目次
はじめに
製造業の現場では、設計と調達、品質管理のバランスをどう取るかが、競争力を左右します。
特にコストダウンや納期短縮が厳しく求められる現在、設計の自由度を維持しつつ、調達速度をいかに高めるかが重要な課題です。
そのカギを握るのが「候補材リストのプリクオリ認証(事前認証)」というプロセスです。
本記事では、20年以上の現場経験を持つ筆者が、プリクオリ認証がなぜ今の製造業で必要なのか、その効果、実践ノウハウ、さらにはアナログな業界文化とどう向き合いながら運用していくかまで、実務目線で深掘りします。
候補材リストとは何か?
設計と調達が交差する「リスト」
候補材リストとは、製品を設計する際に選択できる部品・材料の一覧表です。
設計部門はここから必要な部材を選定し、購買部門はそのリストにもとづいて調達を担当します。
過去の実績がある、安全/品質が担保されたサプライヤーのリストにもなっており、調達リスクを減らす役割を持ちます。
リストの形骸化と業界の実情
昭和から続く多くの日本の製造業では、候補材リストは「前例踏襲」の象徴ともいえます。
既存サプライヤーに依存しやすく、新規開拓がしにくい、設計柔軟性が失われる、という負の側面を持っていることも事実です。
プリクオリ認証とは?
「プリクオリファイド(Pre-qualified)」の意味
プリクオリ認証とは、供給候補となる部品・材料・サプライヤーを事前に仕様や品質、納期対応力などで審査し、「いつでも使える状態」にしておく運用です。
調達プロセスにおいて、新規案件ごとに一から仕様確認や認証を繰り返す手間を省けるのが大きな利点です。
サプライヤのプリクオリ認証も重要
部材そのものだけでなく、サプライヤー企業自体についても「プリクオリ認証」しておくことで、安定供給やトラブル時のリスク管理にも寄与します。
設計自由度と調達速度がなぜ確保できるのか
設計者が選択可能な幅が広がる
従来の「固定リスト」であれば、一覧に載っていない素材や部品を使いたい場合、新規認証プロセスが入り、多大な時間がかかります。
プリクオリの枠組みで候補範囲が広がっていれば、設計段階で多様な材料や新技術を盛り込みやすくなります。
調達プロセスの短縮効果
各部品・材料がすでに認証済であれば、個々の案件ごとに「仕様書の確認」「品質証明」「取引契約」「初回受入検査」など余計なプロセスを省略できます。
新製品立ち上げや設計変更時のリードタイム短縮は、競争力そのものにつながります。
業界アナログ文化との葛藤
なぜ昭和ノスタルジーな運用が残るのか
「何かあったら困る」「前例が安全」「顔の見える関係性が一番」といった文化は、失敗を許さない現場で必然的に根付いてきました。
一方で、その慎重さが新しい挑戦や効率化を妨げてしまう側面も無視できません。
ラテラルシンキングで突破口を探る
既存の枠組みに単純に乗るのではなく、「そもそも何のために認証するのか」「真に守るべき品質・リスクは何か」を問い直す姿勢が、新たな時代の候補材リスト運用には欠かせません。
アナログの良さは残しつつ、デジタルも取り入れる「ハイブリッド発想」が、これからの解決策です。
バイヤー目線でのプリクオリ認証のメリット
安定調達とリスクコントロール
バイヤー側から見れば、プリクオリ認証されたサプライヤーは品質・コスト・納期での信頼性が高く、突発的なトラブル発生時も迅速な切替えが可能です。
サプライヤーとの関係性強化と新規開拓
認証プロセスを経ることで、お互いに選ばれる状況を作ることができます。
一部の「御用聞き」のみならず、新しい技術・部材サプライヤーを積極的に選定し、サプライチェーン全体の底上げが図れます。
サプライヤーがバイヤーの意図を理解するために
プリクオリ認証が求められる本質を知る
サプライヤー側として理解すべきは、「安心して使い続けられる供給力」「変化に柔軟に対応できる開発力」「トラブル時の責任体制」を、客観的・継続的に証明してほしいというバイヤー側の本音です。
認証プロセスを自社成長の機会に
審査基準を「めんどうな書類作業」ととらえるのではなく、国際標準の品質認証やサステナビリティ基準を自社改善のきっかけとして捉える。
これができるサプライヤーは、バイヤーから選ばれ続ける存在になります。
プリクオリ認証を現場に定着させるためのポイント
部門連携と情報共有の仕組み作り
設計部門、調達部門、品質保証部門が「サイロ化」していると、候補材リストの更新がスムーズに進みません。
社内SNSや共有クラウド、定期的なレビュー会議などの仕組みで、相互の知見をリアルタイムで反映する文化づくりが必須となります。
更新サイクルの明確化とデジタル化
プリクオリ認証対象のリストは、最初に作ったら終わりではありません。
半期ごとや年度ごとの定期レビュー、サプライヤー評価システムを持ち、デジタルDB(データベース)管理で属人化を防止しましょう。
小さく始めて改善を繰り返す
いきなり全品目でプリクオリ運用を始めるのは難しいものです。
まずは重点品目や新製品ラインで「試し運用」し、現場でのフィードバックを得ながら段階的に拡大するのが、硬直した現場の合意を得やすい戦術です。
ラテラルシンキングで新たな候補材管理を
今後の業界動向とプリクオリ認証の位置づけ
グローバル化・多品種少量化・カーボンニュートラル・リスク分散といった時代の大きなうねりの中、設計自由度と調達速度の両立は生き残り条件です。
AIやビッグデータ活用による候補材自動提案、ブロックチェーンによる部品履歴管理など、次世代の仕組みも視野に入れなければなりません。
一歩先の取り組みで差をつける
プリクオリ認証は単なる効率化手段ではありません。
「本当に必要なものを、最適なサプライヤーから、必要なだけ、素早く」仕入れるという調達の理想形を追求する、新たな地平線を目指す仕掛けです。
まとめ
昭和時代から受け継ぐアナログな調達慣習を再発見し、その良さを活かしつつも、プリクオリ認証の活用による設計自由度と調達速度の確保は、今この瞬間の製造業現場で求められています。
候補材リストの運用を「なぜやるのか」「本当に必要な管理・連携は何か」から考え直し、部門横断で仕組みを育てていく先に、サプライチェーン全体の強化と持続的競争力向上が現実のものとなるでしょう。
バイヤーを目指す方、サプライヤー側でバイヤーの考えを知りたい方は、相手の立場と根本目的も意識しつつ、プリクオリ認証という共通言語を活用し、より良いモノづくり社会を一緒に作っていきましょう。
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