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投稿日:2026年10月1日

EU機械規則(2027年適用)と、機械部品・安全部品の調達

この記事のポイント(結論先出し)

EU の機械規則(規則 (EU) 2023/1230)は、官報の訂正で2027 年 1 月 20 日から適用される(2026 年 10 月時点)[1][2]。それまでに上市する機械は今の機械指令 2006/42/EC に従い[3]、指令に適合して上市された製品は適用日以降も流通を妨げられない[1]。部品を買う側にとっての変化は、安全部品の定義にソフトウェアなどの「デジタルの部品」が入ったこと、機械学習で振る舞いが変わる安全部品が第三者の評価を要する区分に入ったこと、人の存在を検知する保護装置や安全機能を確保する論理ユニットは整合規格または共通仕様で必須要求を全部満たさない限り第三者の評価が要ること、改ざんへの保護が必須の安全要求に入ったこと、取扱説明書と組込み宣言書をデジタルで渡せるようになったことである[1]。仕入先には、EU で上市する日が 2027 年 1 月 20 日以降になる製品に組み込む分から、規則に基づく適合宣言書・組込み宣言書・組立説明書を求め、ソフトウェアの版と変更の連絡を取り決めておく。

適用は 2027 年 1 月 20 日。官報の訂正で日付が変わっている

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機械規則は 2023 年 6 月 14 日に採択され、2023 年 6 月 29 日の官報に載った[1]。元の本文では第 54 条の適用日が「2027 年 1 月 14 日」と書かれていたが、2023 年 7 月 4 日の官報に載った訂正で、適用日は 2027 年 1 月 20 日に改められ、通知機関の規定(第 26〜42 条)の適用日なども同じように直された[2]。欧州委員会の機械のページも、適用日に関する誤記を直す訂正が出されたと説明している[3]。ジェトロの CE マーキングのガイドブックも、適用日を 2027 年 1 月 20 日としている[5]。古い資料や元の本文だけを見ると 14 日と書かれているので、社内の予定表に写すときは訂正後の日付にそろえる。

移行の扱いについて、欧州委員会は、2027 年 1 月 20 日より前に EU 市場に出す機械は今の機械指令に適合していなければならず、該当する場合は適合宣言書に機械規則にも適合していると書いてよい、と説明している[3]。規則の第 52 条も、指令に適合して適用日より前に上市された製品について、加盟国はその流通を妨げてはならないと定めている(日付は訂正後の 1 月 20 日)[1][2]。指令に基づいて出された EC 型式審査証明書は、有効期限まで有効である[1]。

ジェトロのガイドブックは、規則で新しく加わった主な要求として、アフターマーケットへの義務、大幅な改造、メンテナンス、デジタルの取扱説明書、機械からの有害物質の排出の情報、デジタル技術を載せた機械の安全、人と機械の相互作用、自ら学習して変化する機械への要求、安全に関するトレーサビリティなどを挙げている[5]。以下では、このうち部品を買う側の書類と取り決めに効くものに絞って見ていく。

規則の対象は機械だけではない:安全部品・部分完成機械

規則は、機械に加えて、交換可能機器、安全部品、吊り具、チェーン・ロープ・ベルト、取り外し可能な機械式伝達装置を「関連製品」として対象にし、部分完成機械にも適用される(第 2 条第 1 項)[1]。部品の調達で特に関係が深いのは、安全部品と部分完成機械である。

安全部品:ソフトウェアも含まれる

規則の定義では、安全部品は「規則の対象となる製品の、物理的またはデジタルの部品(ソフトウェアを含む)で、安全機能を果たすよう設計され、単独で上市されるもの」で、その故障や誤作動が人の安全を脅かすが、製品が機能するのには必要でない(または通常の部品で代えられる)ものを指す[1]。付属書 II には、人の存在を検知する保護装置、安全機能を確保する論理ユニット、非常停止装置、両手操作装置などが例示されている[1]。

付属書 I の A 部は、第三者(通知機関)の関与する適合性評価の手続きを使わなければならない 6 つの区分を挙げており、その中に「機械学習による完全または部分的に自ら変化する振る舞いを持ち、安全機能を確保する安全部品」と、そうしたシステムを組み込んだ機械(そのシステムに関してのみ)が入っている[1]。この区分では、EU 型式審査と型式適合、全面的品質保証、個別検証のいずれかを使う(第 25 条第 2 項)[1]。付属書 I に載っていない機械・関連製品は、製造者自身による内部生産管理の手続きでよい(第 25 条第 4 項)[1]。

見落としやすいのが付属書 I の B 部である。B 部には、部品として買うことの多い「人の存在を検知する保護装置」(15)と「安全機能を確保する論理ユニット」(17)が入っている[1]。B 部の区分では、その区分に固有の整合規格または共通仕様で、関係する必須安全要求を全部カバーして設計・製造した場合に限って内部生産管理を選べる。そうでなければ、型式審査と型式適合、全面的品質保証、個別検証のいずれか(通知機関が関与する手続き)を使わなければならない(第 25 条第 3 項)[1]。通知機関が関与した場合は、CE マーキングの後に通知機関の識別番号が付く(第 24 条第 3 項)[1]。ライトカーテンや安全コントローラを買うときは、仕入先がどちらの道を選んだかを書類で確かめる。非常停止装置は付属書 II の例示には入っているが付属書 I には載っていないので、内部生産管理で足りる。

一方で、元の機械の製造者が、同一の部品を交換するための補修部品として供給する安全部品は、規則の対象から外れる(第 2 条第 2 項 (a))[1]。補修用に同じ安全部品を買う場合と、新しい機械に組み込むために買う場合とで、扱いが違う点に注意が要る。

部分完成機械:組込み宣言書と組立説明書

部分完成機械は、それだけでは特定の用途を果たせず、他の機械などに組み込まれて機械になることを前提とした組立品である[1]。その製造者は、付属書 IV の B 部の技術文書を作り、EU 組込み宣言書を作成し、付属書 XI の組立説明書を添えなければならない(第 11 条)[1]。ロボット単体や、搬送ユニットなどの「機械の一部」を外部から買って自社の設備に組み込む場合、仕入先から受け取るべき書類は、適合宣言書ではなく組込み宣言書と組立説明書になる。

組立説明書はデジタルで渡してもよい。その場合、製造者は、どこから入手できるかを製品や包装・添付書類に示し、印刷・ダウンロード・保存ができる形にし、上市から少なくとも 10 年はオンラインで入手できるようにしなければならない。購入時に求められれば、紙の組立説明書を 1 か月以内に無償で渡す(第 11 条第 7 項)[1]。

部品の種類ごとに、仕入先から受け取るもの

次の表は、規則の条文をもとに、部品の種類ごとの位置づけと、受入で確かめる書類を整理したものである。「受け取るもの」の欄は、条文が製造者に課している書類を、買う側が求めておくという実務の提案である。

買うもの 規則上の位置づけ 受け取るもの(実務) 条文
単独で上市される安全部品のうち付属書 I に無いもの(非常停止装置など) 関連製品。仕入先が製造者として内部生産管理で適合性評価と CE マーキング 規則に基づく EU 適合宣言書、取扱説明書(デジタル可) 第 2 条・第 10 条・第 25 条第 4 項[1]
人の検知装置(ライトカーテンなど)、安全機能を確保する論理ユニット 付属書 I の B 部。整合規格・共通仕様を全部適用すれば内部生産管理、そうでなければ通知機関の関与が必要 上の書類に加え、適用した整合規格の一覧、または通知機関の証明書(CE マーキングの後の識別番号も確かめる) 第 25 条第 3 項・第 24 条第 3 項[1]
機械学習で振る舞いが変わる安全部品 付属書 I の A 部。通知機関の関与が必要 上の書類に加え、通知機関の関与した手続きの証明 第 25 条第 2 項[1]
部分完成機械(ロボット単体、搬送ユニットなど) 組込み宣言書を作る製品 EU 組込み宣言書、組立説明書(デジタル可・紙は請求で 1 か月以内) 第 11 条[1]
補修用の同一の安全部品(元の機械の製造者が供給) 規則の対象外 元の部品と同一であることの確認 第 2 条第 2 項 (a)[1]
完成した機械(設備として購入) 機械。製造者が技術文書を 10 年以上保管 EU 適合宣言書(またはその入手先)、取扱説明書 第 10 条第 3 項・第 8 項[1]
安全機能に関わるソフトウェア・制御装置 改ざんへの保護と制御系の安全が必須要求に。単独で上市される安全用の論理ユニットは付属書 I の B 部 ソフトウェアの版の一覧、変更の連絡の取り決め 付属書 III 1.1.9・1.2.1[1]

CE マーキングの手続きの全体の流れ(該当法令の特定、適合性評価の選び方、技術文書)は、既存の記事CE マーキング取得の流れと落とし穴でも扱っている。ここでは、機械規則への切り替わりで、部品の仕入先に求める書類がどう変わるかに絞った。

デジタルの取扱説明書と適合宣言書

機械規則は、取扱説明書をデジタル形式で渡してよいと明記した。その条件は、どこから入手できるかを機械(できなければ包装・添付書類)に示すこと、印刷・ダウンロード・電子機器への保存ができる形にすること(ソフトウェアに組み込む場合も同様)、機械の想定寿命の間、かつ上市から少なくとも 10 年はオンラインで入手できるようにすること、である。購入時に利用者が求めれば、紙の説明書を 1 か月以内に無償で渡す。非専門家が使う、または使うことが合理的に予見される機械では、使い始めと安全な使用に欠かせない安全情報は紙で渡す(第 10 条第 7 項)[1]。適合宣言書も、添付する代わりに、取扱説明書の中に入手先のアドレスや機械で読み取れるコードを示す形にでき、その場合はやはり少なくとも 10 年間オンラインで入手できるようにする(第 10 条第 8 項)[1]。

調達の側で見落としやすいのは、仕入先がデジタルで渡すと決めた書類を、自社の技術文書としていつでも出せる状態に保つことである。製造者は技術文書と適合宣言書を、上市・使用開始から少なくとも 10 年間、市場監視当局に出せるよう保管しなければならず、必要な場合はソースコードやプログラムの論理も、理由のある求めに応じて当局に出す(第 10 条第 3 項)[1]。仕入先のウェブサイトにある説明書が、仕入先の事情で消えたり版が変わったりしても困らないよう、受入の時点で該当版を取り込み、品目と結び付けて保管しておくとよい。

改ざんへの保護と、ソフトウェアの版の管理

付属書 III の必須安全衛生要求には、1.1.9「改ざんに対する保護」が入った。機械に他の機器を接続しても危険な状態にならないこと、規則への適合に欠かせないソフトウェアに接続・アクセスするための信号やデータを伝えるハードウェア部品を偶発的・意図的な改ざんから適切に守ること、適合に欠かせないソフトウェアとデータを特定して守ること、安全に動かすのに必要なソフトウェアを機械が識別して容易に示せること、ソフトウェアやその設定への正当・不正な介入の痕跡を集めることが求められている[1]。EU のサイバーセキュリティ認証の枠組みで認証を受けた機械などは、その範囲で 1.1.9 と 1.2.1(制御系の安全と信頼性)に適合すると推定される(第 20 条第 9 項)[1]。

これは、制御装置や安全 PLC、センサーなど、ソフトウェアを含む部品を買う側に直接効く。仕入先には、出荷する部品のソフトウェア・ファームウェアの版を明示してもらい、版を変えるときは事前に知らせてもらう取り決めが要る。変更の連絡の運用は、設計変更の管理と同じ考え方で回せるので、変化点管理を DRBFM につなぐの「どの変化を載せるか」の線引きが参考になる。

ネットワークにつながる部品には、もう一つの EU 法がかかってくる。サイバーレジリエンス法(CRA)は 2024 年 12 月 10 日に施行され、主要な義務は 2027 年 12 月 11 日から適用される[6]。対象は、用途や合理的に予見できる使い方に、機器やネットワークとの直接・間接のデータ接続を含む「デジタル要素を持つ製品」で、別々に上市されるソフトウェア・ハードウェアの部品も含まれる(第 2 条第 1 項・第 3 条)[4]。悪用された脆弱性などの報告義務は 2026 年 9 月 11 日から先に適用が始まり、適用開始日より前に市場に出された製品も対象になる[7]。機械に組み込む通信機能付きの部品は、機械規則の 1.1.9 とサイバーレジリエンス法の両方の線で確かめることになる。部品の調達側から見た CRA の論点はEU サイバーレジリエンス法(CRA)と、組み込む部品・ソフトの調達で扱う。

大幅な改造をすると、改造した者が製造者になる

規則は「大幅な改造」を、上市・使用開始後に物理的またはデジタルの手段で行う改造のうち、製造者が予見・計画していなかったもので、新たな危険を生むか既存のリスクを高めることによって安全に影響するものと定義している[1]。そして、大幅な改造をした者は製造者とみなされ、第 10 条の製造者の義務を負う。改造が組立品の一部の機械にしか影響しない場合は、リスクアセスメントで示したその機械について義務を負う(第 18 条)[1]。

調達の場面では、既設の機械に後から買った安全部品やソフトウェアを足す、制御のソフトウェアを外部の会社に書き換えてもらう、といった発注がこれに当たりうる。発注の前に、その変更が製造者の予見した範囲に入るのか(取扱説明書で認められた拡張か)を確かめ、範囲外なら、適合性評価をやり直す主体と費用を、発注の条件として決めておく必要がある。

仕入先との取り決めに入れておくこと

EU での上市が 2027 年 1 月 20 日をまたぐ時期は、同じ品番でも指令に基づく書類と規則に基づく書類が混在しうる。次の項目を、購買仕様書や品質の取り決めに入れておくとよい。

  1. 適用する法令の区別:2027 年 1 月 20 日以降に EU で上市するものは、規則に基づく適合宣言書・組込み宣言書を出すこと(第 54 条・訂正)
  2. 書類の種類:安全部品は適合宣言書、部分完成機械は組込み宣言書と組立説明書(第 10 条・第 11 条)
  3. デジタル書類の入手と保管:入手先の表示、10 年以上の公開、版の固定、紙の請求の窓口(第 10 条第 7 項・第 11 条第 7 項)
  4. ソフトウェア・ファームウェアの版:出荷品の版の明示と、変更の事前連絡(付属書 III 1.1.9 を支える実務)
  5. 機械学習を使う安全機能の有無:該当する場合は通知機関の手続きの証明(付属書 I の A 部)
  6. 付属書 I の B 部に当たる安全部品:人の検知装置や安全用の論理ユニットは、適用した整合規格の一覧か、通知機関の証明書と識別番号(第 25 条第 3 項・第 24 条第 3 項)
  7. 補修用の安全部品:元の機械の製造者が供給する同一品か、別の品か(第 2 条第 2 項 (a))
  8. 改造の発注:大幅な改造に当たる場合の適合性評価の主体と費用(第 18 条)
  9. 当局の求めへの協力:技術文書の該当部分やソフトウェアの情報を、求めに応じて期限内に出すこと(第 10 条第 3 項を支える実務)

量産前にこれらの書類をまとめて出させて承認する流れは、量産承認で仕入先に何を出させるかと同じ形で組める。搬送機器などで 2 kWh を超える電池を使う場合は、電池の側の義務(バッテリーパスポートなど)も別にかかるので、EU 電池規則とバッテリーパスポートもあわせて確かめておきたい。

まとめ

機械規則は訂正後の日付で 2027 年 1 月 20 日から適用され、それまでに上市する機械は今の機械指令に従う[1][2][3]。部品を買う側では、安全部品にソフトウェアが含まれること、機械学習を使う安全部品が第三者評価の区分に入ったこと、人の検知装置や安全用の論理ユニットは整合規格または共通仕様で必須要求を全部満たさない限り第三者評価が要ること、部分完成機械には組込み宣言書と組立説明書が要ること、改ざんへの保護が必須の要求になったことを押さえる[1]。仕入先とは、規則に基づく書類への切り替えの時期、デジタル書類の保管、ソフトウェアの版と変更の連絡、改造の扱いを取り決めておく。通信機能を持つ部品は、サイバーレジリエンス法の期日もあわせて追う[5][6][7]。

出典・参考資料

  1. Regulation (EU) 2023/1230 on machinery(機械規則)(EU 官報 L 165/2023 年 6 月 29 日)
  2. Corrigendum to Regulation (EU) 2023/1230 on machinery(機械規則の訂正)(EU 官報 L 169/2023 年 7 月 4 日)
  3. Machinery(欧州委員会 域内市場・産業・起業・中小企業総局/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  4. Regulation (EU) 2024/2847 on horizontal cybersecurity requirements for products with digital elements(サイバーレジリエンス法)(EU 官報/2024 年 11 月 20 日)
  5. 自己宣言のための CE マーキング適合対策実務ガイドブック(日本貿易振興機構/2023 年 10 月)
  6. 新たなセキュリティー規則、サイバーレジリエンス法施行(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2024 年 12 月 13 日)
  7. EU のサイバーレジリエンス法に基づく報告義務が 9 月 11 日から適用開始(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2026 年 9 月 18 日)

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