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投稿日:2026年10月1日

EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)と、輸出品の包装材

この記事のポイント(結論先出し)

EU の包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則 (EU) 2025/40)は 2026 年 8 月 12 日から適用されている(2026 年 10 月時点で、適用日を延ばす改正は確認できない)[1][2]。対象は素材や原産地を問わずすべての包装で、輸出品の段ボール箱やパレットの巻き付けフィルムなどの輸送用包装も入る[1][2]。いま効いているのは、鉛・カドミウム・水銀・六価クロムの合計 100 mg/kg 以下、食品に触れる包装の PFAS の上限、適合性評価・技術文書・EU 適合宣言書、包装の識別と製造者の表示である[1][3]。リサイクル可能性、プラスチックの再生材含有率、包装の最小化、空間率 50 % などは 2030 年以降に順に始まる[1]。日本から輸出する側は、EU の輸入者が受け取る書類を、日本の包装材の仕入先からの情報でそろえられるかを最初に確かめる。

適用は 2026 年 8 月 12 日。輸送用の包装も対象になる

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PPWR は、1994 年の包装・包装廃棄物指令に代わる規則で、加盟国ごとの国内法を介さず EU 全体に直接適用される。欧州委員会は、2025 年 2 月 11 日に発効し、適用日は 2026 年 8 月 12 日で、素材や原産地を問わず EU 市場に出るすべての包装と、すべての包装廃棄物を対象にすると説明している[2]。規則の第 71 条も、適用日を 2026 年 8 月 12 日としている[1]。

規則の「包装」は、経済事業者が製品を収めたり、守ったり、運んだり、届けたり、見せたりするために使う品目を広く指す[1]。消費者の手に渡る「販売包装」だけでなく、販売単位をまとめる「集合包装」、取り扱いと輸送のための「輸送包装」(道路・鉄道・船・航空のコンテナを除く)も定義されている[1]。ジェトロも、プラスチックに限らず紙や輸送用の包装を含むすべての包装が対象で、EU 域外の企業にも関わると整理している[3]。部品や機械を EU へ輸出する製造業にとっては、製品の箱、緩衝材、パレットと巻き付けフィルム、梱包用のテープまでが検討の対象に入る。

適用日を動かす改正については、欧州委員会が 2025 年 12 月の「環境オムニバス」で、他の加盟国の消費者に直接売る場合に生産者が代理人を指名する義務を停止する案を出しているが、欧州委員会のページは「審議中」としており[2]、適用日そのものを延ばすものではない。

2026 年 10 月時点の主な期日

次の表は、規則の本文で確かめた期日である。「〜または実施法令(委任法令)の発効から○か月後のいずれか遅い日」とある要件は、欧州委員会の法令の採択に連動して後ろへずれることがある。

要件 中身 適用 根拠
重金属 鉛・カドミウム・水銀・六価クロムの濃度の合計 100 mg/kg 以下 2026 年 8 月 12 日 第 5 条第 4 項[1]
食品に触れる包装の PFAS 個別の PFAS 25 ppb、合計 250 ppb、ポリマーを含む PFAS 50 ppm の各上限 2026 年 8 月 12 日 第 5 条第 5 項[1]
適合性評価・技術文書・適合宣言書 使い捨て包装は 5 年、再使用包装は 10 年保管 2026 年 8 月 12 日 第 15 条[1]
材料の組成の統一ラベル 分別を助ける絵記号のラベル 2028 年 8 月 12 日または実施法令の発効から 24 か月後の遅い日 第 12 条第 1 項[1]
リサイクル可能性(設計) 等級 A・B・C の包装だけを上市(2038 年からは A・B のみ) 2030 年 1 月 1 日または委任法令の発効から 24 か月後の遅い日 第 6 条[1]
プラスチックの再生材含有率 食品などに触れない一般のプラスチック包装は 35 %(2040 年は 65 %) 2030 年 1 月 1 日または実施法令の発効から 3 年後の遅い日 第 7 条[1]
包装の最小化 重量と容積を機能に必要な最小限に 2030 年 1 月 1 日まで 第 10 条[1]
空間率 集合包装・輸送包装・通販の包装の空間率を最大 50 % 2030 年 1 月 1 日または実施法令の発効から 3 年後の遅い日 第 24 条[1]
輸送包装の再使用 EU 域内の輸送でパレット・箱などの 40 % 以上を再使用の仕組みで 2030 年 1 月 1 日 第 29 条[1]

再生材含有率の 35 % は、食品や医薬品などに触れる「接触に敏感な包装」以外のプラスチック包装の値で、接触に敏感な包装は材質(PET かそれ以外か)によって 30 % または 10 % と分かれている[1]。包装全体の重量の 5 % 未満のプラスチック部分には適用されない[1]。再生材を求める規制の動きと再生材の調達そのものは再生材の使用を求める規制の動きと、再生材の調達で扱う。

日本から輸出するとき、誰が「製造者」になるか

PPWR の「製造者」は、包装または包装された製品を製造する者で、自らの名前や商標で包装・包装された製品を設計・製造させた者がいればその者が製造者になる[1]。「輸入者」は、EU 域内に拠点を持ち、域外からの包装を上市する者である[1]。日本で梱包した製品を EU の販売会社や代理店に出す場合、日本の会社は「包装された製品の製造者」に当たり、EU 側の受け手は「輸入者」に当たることが多い。

製造者は、上市の前に適合性評価の手続きを行い(または行わせ)、付属書 VII の技術文書を作り、適合が示されたら EU 適合宣言書を作成する。技術文書と適合宣言書は、使い捨て包装なら上市から 5 年、再使用包装なら 10 年保管する(第 15 条第 2・3 項)[1]。包装には型式・ロット・製造番号などの識別要素と、製造者の名称と連絡先(郵便の住所と、あれば電子の連絡手段)を、包装か QR コードなどで示す(第 15 条第 5・6 項)[1]。

輸入者は、上市の前に、製造者が適合性評価と技術文書の作成を済ませ、表示と識別・連絡先の表示を満たしていることを確かめ、適合していないと考えれば上市してはならない(第 18 条第 2 項)[1]。自らの名称と連絡先も包装に示し、適合宣言書の写しを保管し、技術文書を当局の求めに応じて出せるようにしておく(第 18 条第 3 項・第 7 項)[1]。つまり、EU の輸入者は、日本の製造者からの書類が無いと上市できない立場にある。

ジェトロが 2026 年 7 月に在ドイツの日系企業に聞いた話では、輸入元のメーカーに重金属の含有量や適合宣言書の作成を確かめても「対応中」との回答が多いという商社の声や、正規品とは包装が違うサンプル品の輸入にも適合宣言書などの要件がかかることが取引の速さを妨げる、という声が紹介されている[5]。EU 側の取引先から書類を求められたときに、すぐ出せる状態にしておくことが、輸出側の実務の中心になる。

欧州委員会の FAQ で明確になった扱い

ジェトロによると、欧州委員会は 2026 年 8 月 3 日に PPWR の「よくある質問」を更新し、次の点を明確にした[4]。

  • 8 月 12 日までに製造され、まだ EU 市場に上市されていない包装の在庫は、廃棄・作り直し・貼り替えをしなくてよく、識別情報の表示は添付書類で対応できる。8 月 12 日より前に上市された包装は、PPWR に適合していなくても流通を続けられる
  • 8 月 12 日以降は、識別情報や製造者の情報を包装に直接表示できない場合に限って、添付書類による対応が認められる。識別はロット単位でよく、カップ・ふた・スリーブのように分けられる部材から成る包装でも、代表的な部材に表示すればよい
  • 適合宣言書は、部材ごとではなく包装の単位で作ればよく、そこにすべての構成部材の情報を書く
  • 適合性評価の手続きは試験機関などに委託できるが、技術文書の作成責任と適合の法的責任は製造者に残り、契約で他社に移せない
  • 重金属の試験方法として、CEN の報告書 CR 13695-1:2000 に基づく測定・検証を推奨。現行の整合規格 EN 13428:2004 は、改定規格が整うまで使ってよい
  • 8 月 12 日以降に適合しない包装が直ちに市場から排除されるわけではなく、当局はまず違反を通知して合理的な是正期限を設け、是正されない場合に販売禁止などの措置をとれる。FAQ に法的拘束力はなく、執行は加盟国当局に委ねられる

食品に触れる包装の PFAS については、整合規格が示されておらず[4]、欧州委員会の PPWR のガイダンス文書でも EU レベルで統一された方法論は無く、段階的なアプローチを推奨している、とジェトロは紹介している[5]。欧州委員会はこれとは別に、サンプリングと分析の進め方に絞った作業文書(7 月 16 日付・法的拘束力なし)も出しており、こちらは三つの上限すべてに適合する必要があると説明している。総フッ素量だけで適合と判断してよいかは、作業文書の中身とあわせて下の PFAS の記事で確かめてほしい。PFAS 全般の規制の動きと部材の調達はEU の PFAS 規制の動きと、PFAS を含む部材の調達で扱う。

包装材の仕入先から受け取る情報

規則は、包装材を製造者に供給する「供給者」にも義務を課している。供給者は、製造者が包装と包装材の適合を示すのに必要な情報と書類(付属書 VII の技術文書と、第 5〜11 条で求められるものを含む)を、製造者が理解できる言語で、紙か電子で渡さなければならない(第 16 条第 1 項)[1]。日本の段ボール・フィルム・緩衝材の仕入先は EU の規則の直接の名宛人ではないが、輸出品の包装について技術文書を作るには、同じ情報が要る。

実務として、包装材の購買仕様書や見積依頼に、次の項目を足しておくとよい。仕様書の書き方の全体は購買仕様書の書き方で扱っている。

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  1. 材料の組成:主材料と副材料(インキ、接着剤、コーティング、ラベル、テープ)の材質と重量比
  2. 重金属の含有:鉛・カドミウム・水銀・六価クロムの合計が 100 mg/kg 以下である根拠(宣言と、必要に応じて分析結果)
  3. 食品・医薬品などに触れる用途か:該当すれば PFAS の上限への適合の根拠と、総フッ素が 50 mg/kg を超える場合の内訳の提供(第 5 条第 5 項)
  4. 再生材の有無と割合:プラスチック部分の再生材の割合と、その根拠(2030 年に向けた準備)
  5. 識別の情報:ロット番号の付け方と、出荷品との対応
  6. 変更の事前連絡:材質・インキ・接着剤・製造所を変えるときの連絡
  7. 書類の言語と形式:EU 側に渡せる言語(英語など)と電子の形式で出せるか

含有化学物質の情報は、日本の製造業ではすでに chemSHERPA でやりとりしていることが多い。重金属の項目が包装材まで調査の範囲に入っているかを確かめ、入っていなければ範囲を広げる。依頼の進め方は含有化学物質の調査を仕入先に頼むときにまとめている。

2030 年に向けて、梱包の仕様を見直しておく

2030 年に向けた要件は、どれも梱包の仕様そのものに効く。第 10 条は、包装の重量と容積を、形と材料を考慮したうえで機能に必要な最小限に抑えることを求め、二重壁や上げ底のように容積を大きく見せるだけの包装を認めない[1]。第 24 条は、集合包装・輸送包装・通販の包装を詰める事業者に、空間率(包装の総容積から中の販売包装の容積を引いた空き)を最大 50 % にするよう求める。紙の詰め物、エアクッション、発泡材のチップなどで埋めた空間も「空き」として数える[1]。

輸送包装の再使用の目標(第 29 条)は、EU 域内での輸送に使うパレット、折りたたみ式のプラスチック箱、箱、トレイ、クレート、ドラム缶などを対象に、2030 年から 40 % 以上を再使用の仕組みで使うことを求めている[1]。ただし、危険物の輸送用、発注者の個別の要件に合わせて作る大型の機械・設備のための特注の包装、段ボール箱などはこの目標の対象外である[1]。機械を木枠で輸出するような場合は、自社の梱包が例外に当たるかを条文で確かめておくとよい。

リサイクル可能性の等級(A・B・C)の具体的な基準は、2028 年 1 月 1 日までに委任法令で定めることになっている[1]。ジェトロの概要資料は、等級を重量ベースで A(95 % 以上)、B(80 % 以上)、C(70 % 以上)の三段階と整理している[3]。半導体の部材に使うアルミ蒸着の包装のように、リサイクルできないが品質の保持のために素材を変えにくいものについて、取引先と相談しているものの課題が多い、という日系企業の声をジェトロは紹介している[5]。段ボールや包装資材の価格の動きと梱包仕様の見直しは段ボール・包装資材の価格改定と、梱包仕様の見直し、国内の制度との違いはプラスチック資源循環法と、製品・包装の部材の選び方で扱う。

まとめ

PPWR は 2026 年 8 月 12 日から適用され、輸送用の包装を含むすべての包装が対象である[1][2]。いま求められるのは、重金属と(食品に触れる包装なら)PFAS の上限、適合性評価・技術文書・適合宣言書、識別と製造者の表示で、EU の輸入者は日本の製造者からの書類が無ければ上市できない[1]。欧州委員会の FAQ で、在庫の扱い、包装単位の適合宣言書、委託しても責任は製造者に残ることなどが明確になった[4]。輸出する側は、包装材の仕入先から組成・重金属・再生材・ロットの情報を受け取れる取り決めを先に作り、2030 年の最小化・空間率・リサイクル可能性に向けて梱包の仕様を見直しておく[3][5]。

出典・参考資料

  1. Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste(包装・包装廃棄物規則)(EU 官報/2025 年 1 月 22 日)
  2. Packaging waste(包装廃棄物)(欧州委員会 環境総局/2026 年 10 月 1 日閲覧)
  3. EU の包装・包装廃棄物規則(PPWR)の概要(日本貿易振興機構 調査部欧州課/2026 年 8 月)
  4. 欧州委、包装・包装廃棄物規則(PPWR)の「よくある質問」更新版を発表(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2026 年 8 月 10 日)
  5. 在欧日系企業、PPWR 適用開始へ対応進めるも適合宣言書(DoC)作成などに課題、在ドイツ日系企業に聞く(日本貿易振興機構 ビジネス短信/2026 年 7 月 31 日)

輸出先の規則が変わるたびに、包装材の仕様と書類を見直す

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