投稿日:2025年10月22日

イベント会社が記念グッズを自社企画・生産するためのパッケージ設計と物流ノウハウ

はじめに

イベント会社が記念グッズを自社で企画・生産しようとすると、「パッケージ設計」と「物流」の知識が重要になります。
従来はOEM委託や外部業者任せが一般的でしたが、最近は差別化やコスト削減のために、内製に挑戦する企業が増えています。

本記事では、製造業で培ったノウハウをもとに、記念グッズを自社企画・生産する際に押さえておきたいパッケージ設計のポイント、物流設計のコツを、現場目線かつ業界動向を交えて解説します。

パッケージ設計の基本とトレンド

なぜパッケージが重要なのか

記念グッズの価値は、単なる商品スペックにとどまりません。
パッケージは購買意欲を高め、「思い出」や「ストーリー」といった感情価値を強化する大切な役割を持ちます。

しかも、最近ではSNS映えやエコ意識の高まりなど、従来の「箱」の考え方を超えたクリエイティブが求められています。

パッケージ設計に必要な業務フロー

パッケージを自社で設計するためには、以下のようなフローを押さえましょう。

1. 目的明確化(ブランド・イベントコンセプト整理)
2. グッズの形状・仕様を決定(素材、寸法、内容物ラフ設計)
3. パッケージ素材の選定(紙・プラ・布・バイオマスなど)
4. デザイン(社内外デザイナーとの協業や指示)
5. 試作・モックアップ作成(現物合わせ)
6. コスト・納期・ロットの確定
7. 大量生産に向けた詳細設計・金型手配
8. 工場での生産立ち会い・品質チェック

このフローを明確にし、「作って終わり」ではなく、顧客体験と現場でのハンドリング、要件の伝達、トラブル対応まで考えておくことが肝要です。

パッケージ設計で失敗しがちなポイントと解決策

多くのイベント会社が陥りやすいパッケージ関連の失敗例として、以下が挙げられます。

  • 複雑で見栄え重視すぎる設計→現場での組立や梱包が困難・コスト大幅増
  • 現物寸法とあっていない→内容物が入らない、破損・潰れやすい
  • エコ対応を謳いすぎて強度不足→輸送時や店頭で破損・クレーム多発
  • サプライヤー任せの曖昧発注→イメージ齟齬、再制作で納期遅延

これを防ぐには、製造側の限界と、現場での「動線」「積載」「持ち運び」まで意識したラテラルな視点を持つことが重要です。

物流ノウハウの基本と業界最新動向

イベント業界特有の物流課題

イベントグッズは、期間・数量・納品先が流動的です。
「限定品だから数が読めない」「短納期」「現地直送」「複数会場一括」など、一般的な定番商品の物流とは一線を画します。

加えて、昨今は物流業界の2024年問題(配送ドライバー不足、働き方規制)により、輸送コストと納期確保が最大のリスクになっています。

記念グッズ物流の全体設計

グッズ物流には下記の重要な設計ポイントがあります。

1. 生産工場から倉庫・現地会場までの最適導線
2. 梱包・梱包資材の現地適合性(設営スタッフの負担も想定)
3. 梱包サイズ・積載効率(トラック積載数、2次輸送も意識)
4. 輸送手段の選定(路線便/チャーター便/宅配便/航空/船便など)
5. 保管期間に応じた在庫管理、ロット管理
6. ケース割れ、セット品組立、ノベルティ封入などの作業工程の外注判断

特にイベント開催直前は「混乱」がつきもので、現場では「箱がどこ?」「A会場とB会場で仕様が違う」「急な追加発注」が頻発します。
この「現場の混乱」まで見据えた物流設計が、実はプロジェクトの最大成功要因です。

物流コスト削減の実践的ノウハウ

物流コストは「量×距離×頻度×特急度」で決まります。
コスト削減には、下記のような工夫が有効です。

  • 多品種を1パレット単位にまとめ、定型サイズで発注
  • 会場ごとの納品仕様を共通化し、梱包デザインも極力統一
  • 海外生産の場合、国内デポやラピッド配送とのハイブリッド調達も検討
  • サプライヤー・3PL倉庫との事前調整で効率的な分納・一括納入を実現
  • 輸送途中の検品・逆物流(返品・余剰品回収)まで事前フロー化

また、運送キャリアが細分化された現代では「誰が運ぶか」よりも、「どう組み合わせるか」の戦略構築が肝になります。

昭和的アナログ業界からの脱却と、現場感の本質

昔ながらの取引慣習が根強く残る理由

記念グッズの生産・物流業界は、大手メーカーほど系列・長年の信頼重視の「昭和的アナログ慣行」が主流です。
「FAX発注」「電話口頭指示」「紙の現物チェック・現場立会い」など、IT化が進まない現場も多く見受けられます。

この背景には、「ものづくりや物流は人の手と勘と気合いが命」「現場に強い人間こそが評価される」という文化と、ミスを避けるための『目で見る・触る』確認文化があります。

今だからこそ活きる現場力×デジタルのハイブリッド

ただし、物流業界も2024年問題やSDGs、DX化の波が避けられません。
「パッケージも物流も現場丸投げ」ではなく、現場スタッフの経験・暗黙知を、デジタルで可視化・合理化する工夫が必要です。

例えば、

  • 過去トラブル事例データベース化
  • 現場写真・動画をクラウド共有
  • 納品現場用のマニュアル動画・チェックリスト整備
  • 物流工程にタグ・バーコード管理を導入

などは、属人的ミス削減と効率化に直結します。

サプライヤーとバイヤー双方から見た、企画生産の現場思考

サプライヤーの立ち位置から考える

サプライヤーは「設計情報が曖昧」「こだわりが多く伝わらない」「工程見積りが困難」な案件を嫌います。
バイヤー目線に立てば、「現場品質」「コスト・納期バランス」「トラブル時の柔軟対応」まで意識した情報共有と事前相談が欠かせません。

また、サプライヤー側としては「コストだけでなく業界トレンドを押さえた提案型営業」ができれば差別化につながります。

バイヤー目線で重視すべきポイント

多品種・小ロットの記念グッズは、バイヤーが「量産の常識」だけで動くと失敗します。
「現場の手間」「付帯作業コスト」「納品時リスク」をシミュレーションし、必要ならば現地視察や生産工程見学を実施しましょう。

また、「不測の事態を想定した予備スケジュール組み」「現場の声を設計・発注に反映する橋渡し役」にバイヤー自身が積極的に関与する姿勢が望まれます。

まとめ:イベント会社による自社パッケージ設計と物流成功のために

記念グッズの自社生産・物流には、「思い付きのデザイン」×「現場で動く実務」の架け橋となる知恵が必要です。
パッケージ設計も物流工程も、見た目だけ・コストだけ・納期だけのどれかに偏れば必ず失敗します。

昭和的な現場流儀の良さは残しつつ、業界のアナログから抜け出し、デジタルと現場感のハイブリッド化を進めましょう。
情報の共有と現場目線の協調こそが、モノづくりを成功に導く最大のポイントです。

製造業で得た「現場思考」を活かし、貴社ならではの「魂のこもった」記念グッズ企画をぜひ実現してください。

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