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FPGAで実現したTDCの例と分解能向上時間領域アナログ回路への応用

目次
はじめに
製造業の進化とともに、計測技術は革新的な進歩を遂げてきました。
その中でもTDC(Time-to-Digital Converter、時間-デジタル変換器)は、極めて精細な時間間隔の測定を可能にする重要な技術です。
近年では、汎用性の高いFPGA(Field Programmable Gate Array)を使ったTDCの実装事例が増加しています。
この記事では、FPGAを活用したTDCの実例と設計のポイント、さらに分解能の向上方法や、時間領域アナログ回路への応用について、現場経験者の目線から詳しく解説します。
昭和から続くアナログ主流の現場で、デジタル技術がどのように調和や進化を遂げているのかにも触れていきます。
TDC(Time-to-Digital Converter)とは何か
TDCの基礎原理
TDCは、アナログ信号の特性である時間の長さや遅延、イベント間の時間差を高精度にデジタル値へ変換する装置です。
例えば、2つの信号パルスが入力された際、その立ち上がりのタイミング差をピコ秒(ps)~ナノ秒(ns)単位で計測できます。
生産ラインのアライメント制御や高品位な品質管理、さらには装置間の同期など、幅広い現場で不可欠な装置となっています。
TDCが注目される背景
従来は、精密な時間計測には高価な測定器や専門設計のLSIが必要でした。
ですが、ここ数年でFPGAの性能が大きく向上したことで、現場レベルでも比較的簡単かつ安価にTDC回路がカスタム開発できるようになりました。
また、自動車の衝突検知やTOF方式の距離計測(例:LiDAR)、生産設備のエンコーダタイミング制御など、高速でなおかつ信頼性が求められる場所で需要が高まっています。
FPGAでTDCを実装するメリットと構成例
なぜFPGAなのか?
FPGAは、現場仕様の変更や多品種少量生産に柔軟に対応できることが大きな利点です。
「あとから機能を追加したい」「プロトタイプ段階でパラメーターを調整したい」といった現場ニーズに強く、ハードウェア資産の再利用性も高い点が支持されています。
FPGAベースTDCの基本構成
典型的なFPGA-TDCは、以下のような構成になります。
- スタート、ストップ信号用のデジタル入力回路
- FPGA内部の高速クロックカウンタ(例:500MHz~1GHz動作)
- ファインタイム補間用の遅延チェーン(CarryチェーンやDelay Line)
- カウンタ値・補間値の同期、ラッチ、デジタル変換部
- 市販のFPGA開発ボードと制御用ソフトウェア(PC・PLC・MCU)
この仕組みにより、外部イベント間の微小な時間差を、1カウントあたり数ピコ秒レベルで読み出すことができます。
Carryチェーンを利用することで、FPGAの内部配線遅延自体を「はかり棒」として活用する点が特徴です。
現場目線からの実装ポイント
私の経験上、TDC回路の開発においては下記5点が重要です。
- クロックジッターの最小化:高精度に測定するためにはクロック源の安定化が不可欠。評価基板レベルで水晶発振器やPLL IC選定にはこだわるべきです。
- 基板配線の最適化:GNDライン共有などによるノイズ混入を避け、TDC回路部分のシールドやパターン配置を工夫しましょう。
- キャリブレーション機構:FPGAの内部配線遅延は温度や電源電圧で変動します。セルフキャリブレーション設計が必須です。
- システム全体設計:TDCの出力値と外部インターフェース(シリアル、Ethernetなど)のバランスが重要です。
- 保守容易性:現場で交換や修理が発生する環境では、FPGAのリモート書き換えやモジュール交換性も考慮します。
FPGAならではの柔軟性を活かすことで、現場仕様の「ちょっとした」変更依頼にも迅速対応でき、生産ライン停止リスクを抑えることができます。
分解能向上のための工夫と最新動向
分解能を向上させるキーアイディア
TDCの分解能は、FPGA内部のクロック周期と遅延素子(ディレイライン)の精度で決まります。
ここで特に効く技法を3つご紹介します。
1. 多段ディレイチェーン利用
FPGAのCarryチェーンや内部メモリ、Gated Ring Oscillator等を活用し、100ps以下の細かい時間ステップを実現できます。
大手LSIメーカーのリファレンス設計では、40ps/カウントといった分解能も報告されています。
2. サブクロック多重化(マルチフェーズクロック)
1つのクロック信号だけでなく、位相を少しずつずらした複数のサブクロックで測定し、「いいとこ取り」(インターリーブ処理)を行うことで、更なる高精度化が見込めます。
搬送波タイミング計測やリアルタイム距離測定など、高速化と精度追求が求められる現場で重用されています。
3. 麗瓏としたソフトウェア補正、キャリブレーション自動化
FPGA内蔵TDCは温度や電源電圧、デバイス個体ごとの差異で分解能が変化します。
常時テストパターンを流しながら、リアルタイムで補正定数を自動更新するキャリブレーション機能は、標準装備として推奨されます。
時間計測技術のアナログ現場への応用事例
工場自動化(FA)、生産ラインでの利用例
例えば、樹脂射出成形や金属プレスの生産工程では「機械のストローク動作」がμ秒単位で変化します。
TDCを用いた精密なパルス幅・遅延計測により、不良品予兆を見逃さず検知し、自動で設備調整や部品交換を促す仕組みが導入されています。
「うちは昔ながらのアナログセンサが主流」という現場でも、TDC技術を後付けすることで「今の投資資産を活かしつつ、デジタルの制度や柔軟性を享受する」というハイブリッド化が進行しています。
検査・測定装置への応用
半導体・電子部品の検査装置では、リークテストやパルス応答の測定等でナノ秒オーダーの時系列分析が求められます。
もし、オシロスコープの台数が限られている現場でも、FPGA TDC基板を増設することで、データ収集・合否判定の自動化が容易に実現できます。
しかも現場ごとのレイアウトや搬送ラインの違いにも、FPGAコードの修正だけで柔軟対応が可能です。
自動車業界での適用
近年注目される自動運転やADAS(先進運転支援)は、ミリ波レーダーやLiDAR信号の「飛び交う時間差」を高精度に測る技術が求められます。
TDCは、こうした車載センサの信号タイミング検出、物体検出アルゴリズムの根幹を支えています。
これにより設計者は、「一瞬のエラーが致命傷」となりかねない現場での堅牢な品質保証を実現しています。
昭和型アナログ主流現場と最新TDC技術の融合
なぜ「昭和的」設備が根強いのか
多くの現場は、長年使い続けてきたアナログ式制御・検出システムが未だ根強く残っています。
理由は「一度築いた信頼性」「部品・メンテ性の確実さ」「万一のトラブル時、現場で修理対応がしやすい」…といった現場原理があるためです。
こうした世界に最新のFPGAベースTDCを導入する場合は、“置き換え”ではなく「既存設備に上乗せ」するアプローチが現実的です。
現場力を活かすステップ進化
(例)
- アナログリレーやタイマースイッチの既設回路を温存しつつ、TDCで誤動作検出や異常検知を強化
- 不良発生後の工程停止だけでなく、工程の「予兆変化」を事前キャッチして現場改善につなげる
- 異常データをIoT化して、品質保証部門やサプライヤーとリアルタイム共有
こうした融合型のデジタル化推進は、「新旧世代共存の智慧」そのものです。
バイヤー・サプライヤー視点から見るTDC/FPGAのプロジェクト成功要件
バイヤー(設備導入/現場責任者として):
– 既存ラインとの整合性チェック(接続端子、通信用プロトコル、メンテのしやすさ)を怠らないこと。
– 予期せぬ工程停止やトラブル時の原因究明・復旧プロセスを、事前に明確化しておくこと。
– ベンダーにキャリブレーション・長期保守体制(基板交換・FPGAファーム更新)の明示を要求すること。
サプライヤー(部品・装置供給側として):
– バイヤー現場の運用リズムや業界文化に配慮し、「現場語で説明が通じる」設計提案力が求められる。
– 汎用FPGA+TDCシステムの他現場での適用事例・改善実績など、「失敗と成功の両面ナレッジ」を共有すると信頼構築が早い。
– モジュール単位/ソフトウェアアップデート型で段階的にデジタル化を進める共同作業の姿勢が重要。
まとめ
FPGAベースのTDC実装は、最新デジタル技術と伝統的アナログ哲学との「いいとこ取り」を可能にしました。
分解能向上の工夫や現場仕様合わせのノウハウを活かせば、より安全・安心かつハイレベルな生産ラインが実現できます。
「自分の現場に合った柔軟性・成長性をどう担保するのか」…それが、これからのバイヤー・サプライヤー双方に求められる最大のポイントです。
昭和アナログ魂と令和デジタル技術のハイブリッドこそ、日本のものづくり現場発展への新たな道しるべとなると確信しています。
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