- お役立ち記事
- AI導入でデータ整備に過剰な時間が割かれる問題
AI導入でデータ整備に過剰な時間が割かれる問題

目次
はじめに ― AI導入の壁「データ整備」への注目
製造業はデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれて久しく、AIの導入も“待ったなし”の経営課題となっています。
現場でも「AIで効率化を」「不良品の予測を自動化したい」といった声が上がり、自動化プロジェクトやスマートファクトリー化の流れは着実に広がっています。
しかし、この導入現場において最大の障壁となっているのが「データ整備に過剰な時間が割かれる」問題です。
私も長年、多くの現場でAI・IoT導入プロジェクトに携わってきました。
そのなかで常に耳にしてきたのが
「AIを動かす前のデータ準備が大変すぎる」
「欲しい分析に使えるデータがバラバラ」
「そもそも手書き日報のまま、電子化すらされていない」
という現実です。
そこで本記事では、製造業の現場目線で“AI導入の第一歩”でつまづきやすい「データ整備」の難題と、その解決のヒント、そして業界全体のアナログからの脱却の兆しについて解説します。
なぜデータ整備が「最大の壁」となるのか
AI導入には「きれいなデータ」が必須条件
AI導入と言っても、夢のような自動化システムが手軽に導入できるわけではありません。
AIは大量の“意味のあるデータ”を学習し、それをもとに判断・予測を行います。
「意味のあるデータ」とは、時系列や設備名、測定値といった項目が揃い、間違いなく記録された“クレンジング済み”のデータです。
つまり
・手書きの日報やアナログ台帳
・フォーマットもバラバラなExcelファイル
・測定機器ごとに粒度も単位も異なるデータ
では、そもそもAIが正しく活用できません。
現場が直面する「アナログの壁」と「派生する問題」
日本の多くの工場では、昭和から続く生産方式や文化が根強く残っています。
そのため、生産指示や検査結果の記録が紙に手書きされていたり、個人のExcel管理だったりするケースが非常に多いです。
このような環境の特徴として
・データの記入漏れ/転記ミスが起こりやすい
・異なる現場、ライン、部署でデータ形式が統一されていない
・「暗黙知」化している業務プロセスやルールが山積み
といった問題が発生しています。
特にサプライチェーン全体でデータを活かそうとすれば、社内外をまたぐ「マスタデータ」の粒度・項目・命名規則の違いも無視できません。
これを整えようとすると、現場の社員やスタッフが膨大な時間を「データの手直し」「フォーマット合わせ」に使う“本末転倒”が多発します。
「なぜ、データ整備に莫大な時間がかかるのか?」
データの“サイロ化”が生む非効率
多くの現場では、品質や生産管理、設備管理などのデータが、それぞれ独立したシステム(エクセル台帳・紙台帳・古い専用ソフト)で運用されています。
この“サイロ化”により、データ同士がリンクできない・横断的な分析ができないという大きな非効率が生まれます。
たとえば、品質不良発生時に
「このロットの生産条件」「設備の稼働ログ」「材料の仕入れ履歴」をAIに学習させ不良予測モデルを作ろうとすると、
一元管理されていない複数台帳からデータを抽出し、手作業で突き合わせをする必要が出てきます。
この時点で膨大な時間がかかるだけでなく、人的ミスやデータ漏れが発生します。
「人の記憶・経験」に頼った作業がAI導入を阻む
昭和から続く現場では、「この品番は例外ルールで」や
「○○課のAさんだけが知っているやり方」といった“属人化”が日常茶飯事です。
この「人の経験」はデータとして形式知化されていません。
AIを導入する際には、過去の実績や異常値、例外対応の経緯まで“構造化データ”に落とし込む必要がありますが、
「なぜこの判断をしたのか」「どの項目が重要だったのか」といった情報が現場の会話や口伝に埋もれており、これを発掘・整理するには多くのヒアリングと検証が必要になります。
現場リソースの枯渇 ― 結果、メイン業務が疎かに
AIを活用するためには、現場のベテラン・中堅社員が
・マスタ整理
・データ名寄せ
・不整合データの調査
などの担当を任されがちです。
しかし彼らは通常業務で多忙です。
「AIで省力化」を目指したはずが、莫大なリソースがデータ整備に割かれ、
生産性本来の向上がストップしてしまうという悪循環に陥ります。
業界動向 ― アナログからの脱却と「意識変革」
「DX」の掛け声と現場の乖離
国も後押しするDX推進ですが、現場では「掛け声だけに終わっている」「RPA導入と言いつつ一部帳票だけ電子化」など、部分最適で止まってしまう例が目立ちます。
こうなる背景には
・IT部門と現場(生産、調達)が分断されて対話がない
・新旧交代が進まない“昭和文化”の残存
・「何のためのデータ活用か」が腹落ちしていない
という根深い組織課題があるのです。
バイヤー・サプライヤー双方にとってのデータ整備の重要性
調達・購買のバイヤーにとっては、サプライヤーからの納入履歴や品質データが整っていれば、リスクマネジメントや新規取引の判断が迅速化できます。
逆にサプライヤー側も、自社が提供する情報をきちんと整理・電子化できていれば、差別化や「選ばれる取引先」への第一歩となります。
つまり「現場のデータ整備」は、取引全体での信頼性確保や、サプライチェーン全体の競争力向上につながるのです。
AI導入で“データ整備沼”にハマらないためのヒント
1. 最初から“完璧”を目指さない ― PoC型アプローチへ
AIの活用ポイントは、「全社横断のデータ整備」をいきなり目指さず
「まずは現場の小さな課題(例:設備異常の予兆検知)」にフォーカスし、限られた範囲のデータから始めることです。
PoC(概念実証)の中で“足りないデータ項目”や“不整合点”を洗い出し、徐々に拡張していくほうが、遠回りに見えて実は現実的な近道です。
完璧主義は挫折のもとです。
2. “現場主導”と“現場巻き込み”を徹底する
データ項目の標準化や新たな電子化ルールは、「現場の納得感」を大切に
・なぜこの項目が必要か
・どう使うか
を現場社員とすり合わせしながら進めましょう。
やらされ感だけの「上からのシステム化」では、運用が形骸化し
「あのAIは役に立たなかった」という話になりがちです。
3. “現場暗黙知”の形式知化はIoT+ヒューマンで進める
例えば熟練スタッフが紙日報に書き込んできた「微妙な異音」「現場の勘」といったデータもIoTセンサやモバイル端末で可視化し、記録していきましょう。
さらに現場へのインタビューやワークショップで「なぜそう判断したのか」という背景情報も合わせて記録しておくと、AI開発段階での重要なヒントになります。
4. 不整合・バラバラなデータは“自動連携”の視点で
中長期的には、IoT連携による自動データ収集やAPIによる帳票自動登録など、システム同士の橋渡し(インターフェース設計)を強化しましょう。
これにより手作業での突き合わせや転記作業が大幅に減り、現場本来の「付加価値創造」に人を割けるようになります。
まとめ ― データ整備を“面倒な作業”から“価値創出”へ変える
AI導入の本質は「現場の付加価値を高め、ヒトの力をより経営に生かす」ことにあります。
そのためには、データ整備が単なる“面倒な作業”や“やらされ仕事”で終わらぬよう、現場起点のプロジェクトデザインが欠かせません。
昭和的なアナログ管理のままでは、せっかくのAI導入も空回りします。
まずは一歩、身近な課題からデータ整備をはじめ
「現場で使えるAI」
「現場で“ありがたい”と感じるデータ活用」
を目指しましょう。
これからの製造業は、データ整備のあり方そのものが業界競争力・信頼力・取引先との関係性に大きな影響をもたらします。
バイヤーやサプライヤーなど立場を問わず、“価値あるデータ”の整備と活用こそが、現場の進化を支えるカギとなるでしょう。
今こそ「AI導入=データ沼」という固定観念から新たな突破口を切り開き、製造業の未来を共にアップデートしていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)