自動石鹸ディスペンサーOEMでタッチレス需要を拡大する赤外多点センサー

はじめに：自動石鹸ディスペンサー市場の変遷と新たな潮流

衛生意識が高まる現代社会において、自動石鹸ディスペンサーの需要はかつてないほど拡大しています。

公共施設、医療機関、オフィス、家庭など、あらゆるシーンで「非接触」「タッチレス」というキーワードの重要性が増してきました。

その中でもOEM（相手先ブランドによる生産）による自動石鹸ディスペンサー開発は、顧客ごとの独自性やマーケットへの迅速な対応という面で大きな注目を浴びています。

そして今、新たな技術として「赤外多点センサー」を搭載した自動ディスペンサーのOEM化が、業界に新しい可能性をもたらしています。

この記事では、長年の製造業現場経験をもとに、自動石鹸ディスペンサーのOEM開発における赤外多点センサーの価値や最新業界動向、課題、導入メリットについて現場目線で詳解します。

特に、メーカーのバイヤー、購買担当、またそれを支えるサプライヤーにとって「今、どんな観点でディスペンサー開発が進んでいるのか」を、昭和のアナログ文化を今も色濃く残す業界の現状とともに読み解いていきます。

従来型ディスペンサーが抱える真の課題

自動石鹸ディスペンサー自体は決して新しい製品ではありません。

しかし、その多くは「単一の赤外線センサー」を用いたシンプルな仕組みでした。

この従来型センサー方式が、実は多くの現場課題を生み出しています。

誤作動・誤検知の頻出

手のひらの位置や本体に付着した水滴、周囲の光環境、設置角度など些細な環境変化によって、誤作動や誤検知が生じがちでした。

特に大量の人が使う公共施設や工場、更衣室などでは「出過ぎる」「出ない」といった問い合わせや修理依頼が絶えませんでした。

「昭和的な」現場対応の煩雑さ

ディスペンサー内部の清掃やメンテナンス、手動リセット等、アナログなメンテナンス作業に多くの時間が割かれ、「ただでさえ人手が足りないのに…」という声もしばしば現場から上がっていました。

本当は欲しい“カスタマイズ性”の欠如

OEM開発においても、センサーの検知感度や液体噴射量、取付位置の自由度、高耐久性など「顧客の現場毎の本当の要望」を反映しきれない局面が数多くありました。

このような課題がある中、今業界で求められているのが「多点式赤外線センサー」という技術革新です。

赤外多点センサーとは何か？ 〜タッチレス需要拡大を支える技術の本質〜

赤外多点センサーとは、複数の赤外線送受信部を本体内部に備え、より複雑かつ緻密な動作判定を可能にするセンサー技術です。

従来の「1点検知」ではなく、「面」での検知や3D的な距離認識を実現することで、下記のような劇的なメリットがOEMディスペンサー設計にもたらされています。

誤動作を劇的に低減

手以外の物体（たとえば袖口や荷物）がディスペンサーに近づいた場合、複数点での照合判定により「液体を出す／出さない」を高精度で分けることができます。

また、水滴や光の乱反射などにも強く、公共の多人数が利用するシーンや工場などの過酷な環境下でも安定動作が可能です。

カスタマイズ性の大幅拡大

検知エリアや距離、噴射量やタイミングなど、顧客ごとの要望にきめ細かく対応でき、OEM開発における差別化やブランド価値向上に直結します。

たとえば「手を2秒以上かざした場合だけ大容量を出す」「1人1回だけ吐出」など顧客ごとにユニークな使い分けも可能です。

設置場所の柔軟性が大幅アップ

センサーが多点化することで「机の隅」「角度のついた壁面」「狭い洗面台の下」など、これまで難しかったスペースでも設置しやすくなります。

施設ごとの細かなニーズに寄り添えることは、バイヤーにとっても大きな訴求ポイントとなります。

現場が本当に欲しい、OEMディスペンサー開発の勘所

OEMメーカーやサプライヤーとして心がけたいのは、「いかに現場目線でディスペンサーを設計できるか」という点です。

純粋な製品性能はもちろんですが、工場のバイヤーや販路拡大を狙う事業者が重視するポイントを、ここで整理します。

1. 保守・補充のしやすさ

石鹸や消毒液の残量確認や補充、詰まりやすい噴出口の清掃など、「メンテナンス性」は現場で最も切実な要望です。

センサー多点化とあわせて、液残量のアラート通知や噴出口の取り外し易さ、配管設計のシンプル化など、トータルでの使い勝手が各現場で支持を集めています。

2. 原材料コストと調達リードタイム

部品点数の多いセンサーは、コスト高や部品供給トラブルのリスクにも直結します。

サプライヤーやOEM元は、「安定的で短納期な調達」「リードタイム短縮化」「急な需要増加にも対応できる冗長性」を常に確保しておくことが、昭和的な“流通リスク回避”に有効です。

3. 誤動作・異物混入時の現場対応プロトコル

現場・工場では、「もしも出すぎた／止まった／異物混入した」といった際にも、現場のスタッフが簡単なトレーニングで対応できる設計が強く求められています。

センサー多点化による診断機能や、モニター画面でエラー表示できるインターフェース搭載も強く要望されています。

なぜ今、「OEM＋赤外多点センサー」が支持されるのか

かつて製造現場は「与えられた製品をそのまま使う」のが当たり前でした。

しかし今や、各施設やブランドごとにユーザー体験をデザインする時代です。

OEMディスペンサーの現場ニーズは、以下のトレンドを背景に大きく変化しています。

衛生意識の飛躍的な高まり

新型感染症の流行以降、「手を触れずに使える」ことが安全性の象徴となり、省人化や自動化の象徴にもなりつつあります。

「タッチレス」というキーワードそのものが、購買部門での最大関心事として根付いているのです。

ブランドごとのカスタマイズ要望の増大

OEM化の進展で、「自社ロゴ」「本体色」「液体種別対応」「IoT連携」など、細かなスペック要求が標準化しています。

多点センサー搭載は、こうした差別化ポイントを支え、調達・バイヤー目線での「独自性」「付加価値」の源泉となります。

SDGs・ESG対応としての必然

液体の使用量削減、過剰噴射の防止、消耗品交換頻度の低減を赤外多点センサー制御で実現することで、持続可能な調達活動や環境負荷低減にも直結します。

環境配慮や企業イメージ向上という観点でも、OEMバイヤー・サプライヤー双方で評価されやすい提案です。

【事例紹介】多点センサーディスペンサーの導入効果と“意外な副次効果”

導入現場のリアルな声から、そのメリットを掘り下げます。

工場更衣室（大手自動車部品メーカー）

少し前までは「昼休みのピーク時、手をかざすたびに数台に1台は誤作動」という状況でした。

多点赤外線センサー搭載モデルに刷新後、「出ない・出過ぎる」といったクレームは激減。

現場作業者が持ち込む異物や水滴付着も誤検知につながらず、クレーム対応や修理コストも大幅に低下したという効果が報告されています。

公共施設（市民プールや公共トイレ）

手のひらの大きさや使用者の年齢差（子ども〜高齢者）による使い勝手のバラツキがほとんどなくなり、施設の満足度調査でも衛生面評価が向上しています。

また、IoT機能や残量通知システム追加による運用効率化（巡回・点検工数の削減）という“副次効果”も得られたとの声もあります。

昭和的アナログ慣習を乗り越え、「現場主義」から顧客価値提案へ

日本の製造業では、今も「現場第一」「アナログ管理」「昔ながらの人海戦術」といった文化が根強く残っています。

バイヤーもサプライヤーも、「今まで通り」が無難と思いがちです。

しかし実際は、現場目線のリアルを「次世代技術」と掛け合わせることで、下記のような現場発・顧客価値提案が可能になります。

・現場スタッフの「ちょっとした不満」を、多点センサーの導入で解消し、中長期のコスト削減や事故リスク低減につなげる
・顧客の「自社ならでは」なブランド要求や独自体験ニーズを、柔軟なOEM設計でカスタマイズし選ばれる理由を生む
・「触れない・混まない・こぼれない」という“3ない運用”を目指し、次世代衛生基準・持続可能な運用フローを提案可能

この価値観の転換は、アナログからデジタル、現場主義から顧客志向へのシフトでもあります。

まとめ：これからのディスペンサー戦略を考えるバイヤー・サプライヤーの皆さんへ

自動石鹸ディスペンサーのOEM開発は今、赤外多点センサーという新たな武器を手に「真の現場ニーズ」と「顧客体験価値」の両極を満たすフェーズに突入しています。

優れたセンサー技術は、それだけではただの“部品”ですが、現場目線での使いやすさ・保守性・安全性といった付加価値をプラスすることによってはじめて「新しい体験」「目に見えるコスト削減」「ブランド差別化」の象徴となります。

OEMバイヤーとしては、単なる価格比較ではなく、自社独自の顧客体験や持続的運用の観点からディスペンサーを選ぶ時代です。

また、サプライヤー側も、次世代センサー技術を活用したOEM提案力・保守対応力・短納期化といった“総合力”を持つことが選ばれる要件となります。

「昭和的アナログ思考」から一歩抜け出し、「現場ファースト×テクノロジー」の新しい価値創造へ。

自動石鹸ディスペンサーの赤外多点センサー化は、その小さな一歩でありつつ、次の時代を切り拓く大きなステップとなるのです。