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自治体主導の商談会・展示会で強化される地域サプライチェーンの広がり

目次
はじめに:地域サプライチェーンの再評価が進む背景とは
コロナ禍を経て、製造業界ではグローバルなサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになりました。
コンテナ不足や部材の納期遅延など、これまで当たり前と思われていた調達の安定性が揺らぐ中、再び脚光を浴びているのが「地域サプライチェーン」です。
そんな中で、自治体主導の「商談会」や「展示会」が、単なるマッチングの場としてだけでなく、地域内の産業連携を強化し、持続可能なものづくり基盤を構築する場へと進化してきています。
本記事では、私自身が製造業の現場や調達部門、サプライヤー、バイヤー双方の視点で触れた経験をもとに、自治体主導の商談会や展示会が地域サプライチェーンにもたらす実践的な価値や、今後の展望について解説します。
昭和から続くアナログ感も残しつつ、新たな産業構造への道筋を考察します。
自治体主導の商談会・展示会がもたらす4つの実利
1. 地域密着型の調達・供給ネットワークの発見
従来、大手メーカーやバイヤーが新規調達先を探す場合、多くはインターネット上のデータベースや、専門商社を介したルートが主流でした。
しかし、意外なことにデジタルだけでは見つからない“地元の隠れた技術”や“少量多品種生産に特化した企業”が、地方には数多く眠っています。
自治体主導の展示会は、こうした企業をまとめて紹介する場となっています。
例えば、東京都や大阪府、地方中核都市が主催する「地域ものづくり展」などでは、その地域ならではの強みや独立系サプライヤーのリアルな情報を直に得る機会が広がっています。
実際、私がバイヤー業務を担っていた際も、こうした展示会を通じて「カタログやネットでは絶対に出会えなかった」パートナー企業との取引が始まり、安定供給やコスト低減につながった経験が何度もあります。
2. フェイス・トゥ・フェイスの情報伝達による信頼構築
製造業、とくにBtoB領域では情報の非対称性や、“これまでの取引関係重視”という昭和的な文化が根強く残っています。
メール一本で新規発注、というのは現実的ではありません。
やはり対面で顔を合わせることで、互いのニーズや技術レベル、QCD(品質・コスト・納期)に対する考え方を深く共有できるのが最大のメリットです。
展示会や商談会の場では、バイヤーから技術部門担当者までが同席し、具体的な製造現場の課題や、求める提案をすぐにディスカッションできます。
それにより、社内調整や現場レベルでの信頼関係構築、さらには予想外の協業アイディアの創出も促進されます。
3. 製造DX(デジタルトランスフォーメーション)への足がかり
昭和から現代にかけて、日本の製造業現場は「現物・現場主義」を軸に長らく進化してきました。
しかし、IoTやAI、ロボット技術の進化で工場自動化が進む一方、特に中小製造業ではDX導入がなかなか進まない現状があります。
自治体主導のイベントでは、こうした最新技術展示や、地元ベンダーによる現場デジタル化事例の紹介が増加傾向にあります。
特に近年では、自治体の補助金や人材支援とセットとなって、デジタル化パートナーの紹介、現場への実証実験フィールドの提供など、「言いっぱなし、やりっぱなし」ではなく伴走型のサポートに力が入れられています。
4. サステナビリティ・CSR経営への貢献
脱炭素やカーボンニュートラル、地域活性化など、「社会との共生」も製造業経営の大きな指標となりました。
自治体主導イベントでは、地場産品の活用、地域エネルギー資源のマッチング、地元企業参加型の社会貢献プロジェクトなど、多様なテーマが取り上げられます。
大手メーカーがCSRの一環で地域調達を強化したり、若手人材のUターン誘致につなげたりする事例も増えてきました。
商談会・展示会の裏側:なぜ自治体主導が今、強いのか
環境変化への迅速な対応
リーマンショック以降、サプライチェーンのリスク分散が叫ばれ、コスト一辺倒のグローバル調達から、柔軟性や地政学リスク対策を重視する流れに変化しました。
こうした中、自治体は地元企業のための新たなビジネスチャンス創出や雇用の維持・拡大を重視し、行政のネットワークを活用した「マッチングサポート」を強化しています。
情報発信・ネットワーク構築の役割
企業単独では宣伝・営業力が限られる中、自治体による情報発信やイベント運営は費用対効果に優れ、サプライヤーにとっても魅力です。
特に、自治体主導の場合は“行政の信頼性”が担保されるため、新規バイヤーも安心して参加できるのがポイントです。
昭和的アナログ文化と現代的デジタル施策のハイブリッド
実際、説明会の運営一つをとっても、デジタルカタログやマッチングアプリの導入、QRコードでの資料配布、といった新しさと、現場でのカタログ手配・名刺交換・手土産文化、といった昔ながらのアナログ要素が共存しています。
これは「古さ」ではなく「現場目線による臨機応変さ」と言えるでしょう。
まだまだ製造業の調達現場ではアナログが根強いですが、徐々に“つなぎ役”としての自治体の役割が大きくなっているのです。
バイヤー・サプライヤー双方が知っておきたい「商談会活用のコツ」
バイヤー視点:現場課題を「言語化」して伝える
単純な価格交渉だけではなく、「なぜ、その調達課題が解決できないのか」「どこに現場のボトルネックがあるのか」を明確に伝えることが大切です。
現場で使う用語、工程・装置の特性、検査・品質基準などを洗い出し、サプライヤーとの対話の中で具体的なニーズを共有しましょう。
自治体スタッフも交えてアイデアを膨らませることで、思わぬ解決策が生まれるケースも多いです。
サプライヤー視点:自社の「何が強みで、どこまでできるか」を磨く
来場バイヤーは、必ずしも自社の技術や製品を詳しく知っているわけではありません。
「何ができる会社なのか」「小ロット・短納期は可能か」「特殊ニーズへのカスタマイズ経験はあるか」など、“他社との違い”を端的に伝えるシナリオや資料の準備が求められます。
自社の開発ストーリーや原点、中小企業ならではの現場対応力なども大きなアピールポイントです。
自治体のサポートを「活用し倒す」
多くの自治体は、商談成立後のフォローアップや、事業化に向けた補助金・助成金、セミナー・勉強会、商社や専門家の紹介など、さまざまな追加支援を用意しています。
これを積極活用することで、単なる名刺交換で終わらない、持続的な地域ビジネスネットワークが構築できます。
今後の展望と、製造業が目指すべき未来の地平線
地域サプライチェーンの再編は、単に「コスト抑制」や「リスク分散」だけが目的ではありません。
むしろ、“顔の見える関係性”を活かしながら、新しい付加価値や、社会課題解決型ビジネスへのシフトを生み出せるフィールドです。
ハードウェアだけでなく、リモート保守、サブスク型アフターフォロー、地域でのCO2削減プロジェクトなど、自治体主導イベントを活用した新たな取引・協業も日々生まれています。
昭和から続く「現場力」と、令和的な「デジタル連携」を掛け合わせた、より強靭でしなやかな産業構造の実現こそ、これからの製造業界が切り拓くべき道だと確信しています。
まとめ
自治体主導の商談会・展示会は、単なる調達先探しの場に留まらず、地域サプライチェーン再編や産業イノベーションの中核へ進化しています。
「アナログとデジタル」「顔の見える取引とグローバル分業」を組み合わせ、地域企業と大手の双方向連携を促進することで、日本のものづくりは新たな地平線を拓きつつあります。
ぜひ現場目線で、こうしたリアルな価値に触れ、積極的に活用していきましょう。
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