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投稿日:2025年12月12日

現場の“経験値差”が生産性を左右し続ける問題

はじめに:現場の“経験値差”とは何か

製造業の現場で「経験は宝」とよく言われます。
確かに、熟練者の持つ“勘”や“手際の良さ”は、生産ラインを支え、トラブルを未然に防ぐ力となっています。
一方で、この“経験値差”が現場の生産性や効率、人材育成のあり方にどんな影響を与えているのか、冷静に見直す必要が高まっています。
とくに昭和の高度経済成長期を支えた工場文化が、令和の今も生産現場に色濃く残り、「なぜ同じミスが繰り返されるのか」「どうして人によって成果が違うのか」といった課題を浮き彫りにしています。
本稿では、20年以上の現場経験をもとに、“経験値差”が生産性に与える影響、そしてアナログな現場に根付く問題点とその解決策を探ります。

ベテランと若手、それぞれの強みと弱み

熟練者の強みは「再現性のないノウハウ」

熟練工が持つ“経験値”は、研ぎ澄まされた観察力や、一瞬の判断で不良品を未然に察知する能力、そして異常時の対応力として現れます。
ライントラブルが発生した際、「なんとなく嫌な音がした」「手触りがいつもと違う」といった定量化できない感覚で異常を察知します。
しかし、こうしたノウハウは文章やマニュアルに落とし込みにくく、若手への伝承が難しいという課題も内包しています。

若手や未経験者の強みは「新しい発想と柔軟性」

一方で、若手や未経験者は機器のデジタル化やIT活用に強い点が際立っています。
生産管理システムやIoTデータの分析といった、従来の“勘”にはなかった視点を現場にもたらします。
また、固定観念にとらわれないため、「なぜこの作業が必要か?」と根本的な問い直しによる業務改善提案ができるのも魅力です。

なぜ“経験値差”が生産性の足かせになるのか

人依存の作業が属人化を生み出す

アナログ文化が根強く残る現場では、業務の標準化・マニュアル化が立ち遅れています。
その結果、「あの人しか分からない」「あの人がいないと止まってしまう」という状態が慢性化しています。
特に調達購買・生産管理などの間接部門でも“伝票処理の細かいコツ”“急な発注先交渉の勘所”といった経験値頼みの仕事は今も多く、これが生産性のバラツキや、継続的な改善の障害となっています。

新人教育の形骸化とOJTの限界

現場ではOJT(On the Job Training)が主流です。
ベテランの背中を見て覚える、トラブルが起きた際に初めて教えてもらう、といった教育スタイルが長らく続いてきました。
しかし、作業そのものが多様化・複雑化している今、OJTだけでは知識や技術の伝承が追いつかず、同じ失敗が繰り返される温床になっています。

昭和的アナログ業界に根付く“経験値偏重”の背景

「現場力」という言葉の呪縛

日本の製造業は「現場力」を大切にし、「熟練者の勘と経験」に大きな価値を置いてきました。
不良が発生したら、“なぜ現場で止められなかった?”と管理職が叱責するシーンも珍しくありません。
これは「困った時でも誰かがなんとかしてくれる」「現場に一任すれば大丈夫」という無意識の依存に繋がっています。

IT導入や自動化に対する心理的抵抗感

業務標準化やIT導入の話が出ると、「うちのやり方には合わない」「結局、機械ではトラブルに対応できない」といった反発も起こりがちです。
また投資に対するハードルも高く、「トータルで考えると人でやる方が早い・安い」と判断され、人依存の業務体制が強化されてきたのが現実です。

“経験値差”による現場の停滞と危機感

品質不具合の連鎖と属人的ボトルネック

ベテラン限定の「勘」に頼った工程は、彼らが不在となった瞬間にミスが多発しやすくなります。
また、複雑な装置のトラブルやサプライヤとの交渉といった局面で「この人がいないと話が進まない」といった属人化は、企業にとって大きなリスクです。
昨今の人手不足や高齢化、働き方改革による残業規制などを鑑みると、“経験値差”を放置したままでは安定生産や品質維持が困難になる恐れがあります。

新しい世代とのギャップ拡大

若手は“なぜこの方法なのか”を構造的に理解したい、データや数値で納得したいという傾向が強くなっています。
一方で「昔からこれでやってきた」という理屈で押し切る昭和的な現場。
このギャップが、「製造業離れ」「若手の定着率低下」というネガティブな現象として表れています。

経験値偏重から脱却するための実践的アプローチ

業務の見える化とナレッジの共通化

まずは「現場のノウハウ」「調達・交渉のコツ」という曖昧な情報を、できる限り“見える化”することが不可欠です。
動画・写真・チャットツールなど現場感覚を補完する手段や、失敗事例集・Q&A集などの“生きたコンテンツ”も推奨です。
こうした情報を管理・共有するナレッジマネジメントシステムの導入は、企業全体の“経験値底上げ”に直結します。

標準作業と異常対応の切り分け

「標準作業」と「イレギュラー対応」は本質的に求められるスキルが異なります。
前者は誰がやっても80点以上取れるような仕組み化(動画手順書、ピクトグラム化、立て看板など)、後者はリーダー層へのトラブル対応教育や、先輩とのジョブローテーション強化で、“見せて学ぶ”機会を意図的につくりましょう。

IT・自動化投資の意義を再定義する

「今まで人がやってきたから…」という後ろ向きな理由でIT化や自動化を避けるのではなく、“経験値には限界があり、人は人にしかできないことに注力すべき”という発想への転換が必要です。
MES(製造実行システム)、AI画像検査、調達EDIの活用例を現場にフィードバックし、小さな成功体験を積み上げていくことが“抵抗感”を和らげていきます。

バイヤー視点から見る“経験値差”の課題とヒント

購買・調達部門でも「あの担当者しか価格交渉がまとまらない」「熟練バイヤーのネットワークだけが頼みの綱」という状態が往々にしてあります。
これを防ぐため、過去の交渉記録や見積条件、契約交渉のQ&Aを蓄積し、若手に“見える化知恵袋”を提供してください。
サプライヤー側も、“交渉に強い担当者の論点”や“重視したい評価基準”を事前に研究し、自社のアピール力向上に役立ててください。

まとめ:今こそ“経験値”の意味を問い直そう

現場で長く働いてきた者として、“経験値差”が生産性や現場改革の足かせとなっている現状には強い危機感を持っています。
人の経験や勘はもちろん大切です。
しかし、それを“神格化”したままでは、いつまでも属人化ループから脱却できません。

見える化・標準化・ITや自動化の活用、体系的な教育とナレッジ共有。
これらを地道に推し進め、ベテランも若手も力を発揮しやすい現場環境を整えることこそが、令和の日本製造業で求められる新しい“現場力”です。

短期的な手間や投資を惜しまず、経験とデジタルを融合させた先にこそ、成熟した工場文化と新たな生産性の地平線が広がっています。
今こそ自社・自部門の“経験値差”に正面から向き合い、脱昭和・現場改革をスタートしませんか?

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