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賞味期限・消費期限管理が物流負荷を極端に高める構造

目次
はじめに
賞味期限や消費期限の管理は、食品業界に限らず多くの製造業で非常に重要なテーマです。
しかし、実際の現場ではこの期限管理が物流現場に多大な負荷をかけ、調達・購買、生産管理、在庫管理、さらにはバイヤーやサプライヤーの関係性にまで大きな影響を及ぼしています。
多くの現場で「なぜこんなことに?」と頭を抱える現実があり、その背景には業界全体の構造的な課題が横たわっています。
今回は、この「賞味期限・消費期限管理が物流負荷を極端に高める構造」について、製造業現場で20年以上培った知見をもとに、現場目線で深く掘り下げていきます。
“期限”が物流に重くのしかかる現実
そもそも賞味期限・消費期限とは何か
賞味期限は「おいしく食べられる」期間、消費期限は「安全に食べられる」期間と定義されています。
食品だけではなく、医薬品、化学品など多様な製品で期限管理が求められており、その管理方法は製品ごとに複雑さが異なります。
一見シンプルに思えるこの“日付管理”ですが、物流で取り扱う場合は「先入れ先出し」「トレーサビリティ確保」「在庫ロス防止」など、多岐にわたる管理業務が必要となり、ちょっとしたミスが大きな損失に直結します。
業界のアナログ体質がもたらす複雑化
昭和から続く製造業の現場は“アナログ文化”が根強く残っています。
多くの現場では伝票・帳票処理や棚卸が手作業のまま、Excelでの個人管理や紙ベースの期限リストが平然と活用されています。
バーコードやRFIDといった最新技術を導入しても、結局人手によるダブルチェックが必須となり、ミスが許されない現場では“チェックのためのチェック”で回り道が当たり前です。
このアナログ体質が、期限管理による物流負荷をさらに増大させる構造を生んでいます。
期限管理が引き起こす具体的な物流負荷
在庫管理の複雑化と“余剰在庫”のジレンマ
期限付き商品は「何が、いつまでに、どこに、どれだけあるか」を徹底管理する必要があります。
この管理を精緻に行うほど、賞味期限切れや消費期限切れを避けることができますが、現実には「余裕を持って在庫を多めに」「とりあえず仕入れておく」といった対応も多いです。
結果として、使い切れなかった期限切れ在庫が物流倉庫に滞留し、廃棄コストやロスコストが発生します。
「余剰在庫」と「欠品リスク」という板挟みに悩み続ける現場は、期限管理がもたらす物流負荷の象徴と言えるでしょう。
先入れ先出し(FIFO)の徹底がオペレーションを難化させる
期限管理の基本は“先入れ先出し”、つまり製造日や納品日が早いものから先に出荷・使用することです。
理論上は簡単ですが、現場では棚の奥に埋もれた在庫や、誤って新しいロットが先に使われてしまうといったミスが後を絶ちません。
出庫時に毎回、期限日ごとにピッキング作業などの工数が増え、繁忙期や人手不足のタイミングでは“間に合わない、人が足りない”と現場が疲弊します。
バイヤー・サプライヤーに迫られる柔軟な対応
調達や購買の現場では、サプライヤーとの交渉で「期限が短いものは仕入れない」「最低残存期限◯日以上」という条件交渉が当たり前です。
一方、サプライヤーは残った期限が短い在庫を“押し付け合い”のように処分先を探す事態も多く、両者は“最長期限”を巡って綱引き状態となります。
さらに、納品時には現場で「このロットは受け取れない」「返品してほしい」といったトラブルも頻発しています。
なぜ業界全体で抜本的な改善が進まないのか
価格競争優先による「物流コストの歪み」
調達・購買の現場では、コスト削減が第一目標となりやすく、物流現場の効率や作業負荷に予算を割く風土は弱い傾向にあります。
「安く買いたい」「安く納めたい」という価格競争の中で、期限管理に関わる人件費やIT投資、システム統合といった根本対策は後回しとなりやすいです。
短期のコスト削減が、長期的な効率化やミス防止を妨げている構造が業界全体に染み付いています。
アナログ管理からデジタル化への“移行障壁”
自動化やIT化を推進すれば、現場の負荷は大きく低減する——それは理屈では当たり前でも、実際には「古いシステムが現場から抜けない」「現場スタッフのリテラシーに差がある」など、移行には高いハードルが存在します。
既存の紙文化、本音での「変えたくない」という抵抗、そして投資に踏み切れない経営判断など、あらゆる障害が立ちはだかります。
1990年代から変わらない現場が「まだまだ多数派」であり、DX(デジタル・トランスフォーメーション)がスローガン止まりとなっているのが現実です。
抜け出すための新しい地平線——現場目線で考える“ラテラルシンキング”のヒント
“判断基準の見える化”ד現場主導の改善”
最大の鍵は、「期限管理」にまつわるルールや判断基準を、経営・バイヤー・現場スタッフなど全レイヤーで見える化することです。
ロット管理や先入れ先出しを自動化する仕組みだけでなく、“いつ”“どの判断が”“どこで”求められるのかを明確にし、エラーが起きた際に誰が手を打つのかをワンストップで整理する。
これにより「判断の丸投げ」や「誰も責任を取らない」という構造から脱却できます。
物流“前工程”・“後工程”の連携を再デザインする
多くの現場で見落とされがちなのが、物流の“前工程”、すなわち製造現場や調達サイドの“作業負荷”と、“後工程”(流通・顧客)で生じる変化への素早い対応です。
DX推進を単なるデジタル化ではなく、「現場に役立つ仕組みに落とし込む」ためには、物流担当者×調達担当者×バイヤー×現場スタッフが一緒になって、現場を歩き、細かいパターンを洗い出す必要があります。
“ラテラルシンキング”で既存の考え方に縛られず、たとえば「賞味期限付き商品は一箇所に集約する工夫」「先入れ先出しをAIやカメラ画像認識で自動化」「現場で期限切れ商品をリアルタイム通知」など、現場ならではの改善策を積極的に模索することが必要です。
“協調型サプライチェーン”の実現
期限付き商品の管理は、自社だけでなくサプライヤー・物流会社・販売先まで巻き込んだ「協調型サプライチェーン」が必須となります。
たとえば共同在庫システムやEDI(電子データ交換)、リアルタイムで全体在庫を共有するプラットフォームを活用すれば、「どこに新しいものがどれだけあるか」「期限が近づいたものをどう優先するか」などをシームレスに判断できます。
また、返品や廃棄といった末端処理も自動でアラート管理し、現場の精神的・物理的負荷を大きく軽減する仕組みが構築できます。
まとめ:賞味期限・消費期限管理がもたらす“次の進化”へ
賞味期限・消費期限管理が物流負荷を極端に高めている業界構造は、現場のアナログ体質、仕組みの未整備、調達・購買現場の意識、過去の成功体験が絡み合った結果です。
しかし今、「データ」「現場」「協調」の観点から全体最適を目指すことで、構造的な負荷を抜本的に減らす次の時代が近づいています。
製造業で働く方、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの立場から「バイヤーの思考」を知りたい方にとって、賢い期限管理は“現場価値”を創り出す新たな武器となります。
変化は一朝一夕には訪れません。
それでも現場で「なぜ、どうして、もっと良い方法はないか」と問い続けること、それこそが物流負荷を減らし、製造業の新しい地平線を切り拓く唯一の方法です。
あなたの現場で、今日からできる小さな一歩を、ぜひ見つけてください。
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