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防爆機器設計基準を満たす安全設計と規格適合の実践ポイント

目次
はじめに:防爆機器の必要性と時代背景
製造業の現場では、多様な可燃性ガスや粉じんが飛び交う環境が少なくありません。
こうした現場での爆発事故は、いったん発生すれば人命にかかわる重大なリスクとなります。
爆発事故を未然に防ぐため、防爆機器の導入とその設計基準の満足が求められています。
とくに近年は労働安全衛生基準や法規制も厳格化しており、昭和時代のアナログな現場とは異なり、高度な安全設計と規格適合が求められる時代となっています。
本記事では、20年以上の現場経験を持つ私が、バイヤーや調達担当・サプライヤーの実務者にも役立つよう、
防爆機器設計基準を満たすための実践的な安全設計のポイントと、最新の業界動向を踏まえた規格対応の勘所について解説します。
防爆機器設計の基本:まず知るべき3つの原則
防爆機器と聞くと「とにかく頑丈ならいい」「密閉すれば安心」と考えがちですが、安全設計には根本となる原則があります。
防爆3原則を理解する
1. 爆発性雰囲気の発生を防ぐ
2. 着火源を排除する
3. 爆発による被害の拡大を抑える
これらの原則に基づき、設計・調達・保守すべての段階で対策を考えることが重要です。
工場ごとの危険場所区分を明確に
危険場所は国際規格IEC60079や、国内では労働安全衛生規則等により、「ゾーン0/1/2」や「第1類危険場所」などで区分されます。
防爆機器の選定や設計の出発点は、「自社の工場内のどこに」「どのクラスの危険場所」が存在するのか、を正しく把握するところから始まります。
ここを疎かにすると、過剰投資や逆にリスク残留の原因になります。
防爆規格の最新動向を押さえる
防爆の世界は、昭和中期以降で大きく変わっています。
ここでは、業界動向として押さえておくべき主な防爆規格を紹介します。
IECExと国内JISおよびTIIS規格の関係
国際的にはIEC規格(IEC60079シリーズ)、国内ではJISやTIIS(労働安全衛生総合研究所による検定)が主軸です。
グローバルサプライチェーンが一般化した今、日本製造業もIECEx(国際認証)適合品の調達や設計が求められるケースが増えています。
そのため、調達や設計時には「TIIS適合」だけでなく「IECEx適合(Exマーク)」にも目を向けましょう。
対応すべき主な防爆構造
代表的な防爆構造には、以下のものがあります。
1. 耐圧防爆(d)
2. 本質安全防爆(i)
3. 増防爆(e)
4. 内圧防爆(p)
5. 油入防爆(o)
これらに加え、最新では「非点火防爆(n)」といった低リスク環境向けの軽快設計も台頭しています。
設計段階で「どの防爆構造を、どの危険区分に対して適用すべきか」まで深掘りして判断する必要があります。
設計・調達の実務ポイント:現場経験から見た本音
昭和的な「ベテラン職人に任せきり」「帳面管理だけでOK」といった体質が残る現場は少なくありません。
しかし、実際の事故データや規制強化を鑑みれば、属人化や旧来型アナログ管理では通用しない時代です。
ここでは、現場目線で現実的に注意すべき設計・調達のポイントを整理します。
1. 図面と現場情報を完璧にリンクさせる
設計側は「カタログスペック上はOK」でも、実際の現場では想定外の可燃物、配線距離、気流影響などがリスク要素になります。
調達前の設置場所現場調査を必ず実施し、危険源の洗い出しを設計図面に必ず反映しましょう。
曖昧なフィールド情報は爆発事故の温床です。
2. サプライヤーへの技術質問(TQ)は徹底的に
サプライヤーが提出する製品仕様書・カタログの「防爆等級」や「認証番号」だけで判断しないことが重要です。
必ず「どの規格に基づく」「どの防爆構造か」「危険区域ごと設置可否」などを、書面で突き合わせましょう。
必要であれば第三者機関(例えばTIISやIECEx認証書)の写しを確認する習慣を付けてください。
3. アナログ現場にもなじむ運用設計
昭和時代からのアナログ現場では、「伝統の自主管理」や「口頭での申し送り」文化が根強く残っています。
デジタル管理システムを導入しても、運用設計が現場と乖離していれば形骸化します。
例えば、保守点検の着火源管理マニュアルを分かりやすく現場掲示し、紙ベースでも必ず点検チェックリストを残す仕組みにしておくことが堅実です。
購買・調達担当者のための規格適合チェックリスト
現場経験を踏まえ、購買担当者やこれからバイヤーを目指す方に向けて、実際の発注業務で外せない防爆機器の適合チェック項目を紹介します。
発注時の防爆仕様チェックリスト
1. 設置場所の危険区分(ゾーン、類別)を発注仕様書に明記
2. 製品がどの規格(TIIS, IECEx, ATEX等)で認証されているか明確にする
3. 防爆構造(d, i, e, p, o, n 等)を証明できる第三者認証書の提出依頼
4. 防爆等級(例えば「ExdⅡBT4」等)が実際の設置環境に適合するかをサプライヤーと相互確認
5. 定期保守・再認証が必要な製品の場合は、対応体制(国内修理拠点等)も併せて確認
設置工事・立会検収時の注意点
・現場配線の引き回し経路が、防爆機器メーカー想定通りか確認
・現場増設や移設で危険区分が変わっていないか二重チェック
・防爆機器本体だけでなく、付帯部材・ケーブルも防爆認定品か検証
これらの細かい積み重ねが、爆発事故ゼロの工場運営につながります。
業界あるある:昭和からの慣習と現代的設計との“せめぎあい”
現場管理職の視点から見て、昭和的な“人頼み”文化や、「ここまでやれば大丈夫だろう」という暗黙知が根強く残っています。
しかし、事故の多くは「想定外」が生じたところで発生します。
例えば、「一度も爆発したことがないから大丈夫」という思い込みや、設置機器更新の際に「同等品なら安全」だと見なしてしまう傾向が、今でも多くの工場で見受けられます。
このような“慣れ”や“油断”にこそ、爆発事故リスクの本質があります。
したがって、現場目線としては「自分だけは大丈夫」と思わず、規格や業界ベストプラクティスに忠実に従う設計・運用が、これからのものづくり現場で求められます。
バイヤー・サプライヤーから見た防爆設計の新潮流
防爆機器の調達や設計は、コストと安全性のバランスで悩む場面が多いです。
ただし、グローバル化の進行やIOT化・DX化にともなって、「IoT機器の防爆認定」や「リモート保守データの取得」など、新しい設計思想が業界に広がりつつあります。
・海外工場展開時にIECEx・ATEXにも適合したマルチ規格品を選ぶ
・IoT遠隔監視付きの本質安全防爆センサーを導入する
・防爆化とともに省人化・自動化設計も並行して進める
このように、従来の「安全だけ守れば充分」という発想から、「デジタル・グローバル・自動化も見据えた包括的調達・設計思考」への転換が、今後ますます重要となります。
まとめ:防爆機器の安全設計は“現場・規格・未来”が三位一体
製造現場において防爆機器の安全設計・規格適合は、単なる法令遵守や技術的知識だけでなく、
現場のリアル・人の運用・最新の業界動向を3つ巴で考えることが肝要です。
– なぜ自社には「どの防爆レベルが必要か」
– 調達予定の製品は「どの規格」に適合し、「どの防爆構造」で、「現場変更時に柔軟に対応できるか」
– 現場管理者が「運用・メンテナンスまで安心して任せられる体制」になっているか
これらを現場・技術・経営の三者で定期的に見直すことが、事故ゼロ・安定生産・持続的成長への最短ルートです。
昭和の知恵と現代の工学的合理性を融合させた、安全設計の実践をめざしましょう。
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