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消耗品OEMでの海外展開を視野に入れた輸出規制対応策

目次
はじめに
日本の製造業において、消耗品OEM(Original Equipment Manufacturer)の需要は年々高まっています。
多様化する顧客ニーズやコストダウンの要請に加え、海外市場への進出意欲もますます強くなっています。
しかし、グローバル展開を視野に入れる際には、さまざまな輸出規制やコンプライアンスの課題が立ちはだかります。
この記事では、現場で30年以上培った実体験と失敗、そして成功事例を交えながら、消耗品OEMで海外展開を目指す企業に不可欠な輸出規制対応策を、現場目線で整理します。
アナログ文化が根強い製造業でも実践できる方法から、2024年以降の最新動向も踏まえて解説します。
なぜいま、消耗品OEMの海外展開なのか
国内市場の成熟と限界
日本のものづくりが長年支えてきた国内市場は、高度成長期からバブル崩壊を経て徐々に成熟化。
新規参入が難しく、コスト競争も激化しています。
特に消耗品分野では中国・アジアメーカーの台頭により、国内需要だけに頼る将来性は限られてきました。
このため、販路を海外へ広げることがまさに企業の生存戦略となっています。
OEMの強みとブランド力
OEMは「相手先ブランド名製造」と訳されます。
製品そのものに自社ブランドが露出しない分、他社との差別化要素を、品質・納期・コスト競争力・技術ノウハウで勝負する必要があります。
国内シェアを誇る企業も、海外の大手ユーザーやサプライヤーから「日本製なら間違いない」と信頼されるため、これが海外展開の突破口となりうるのです。
越えるべき壁 — 輸出規制とその現実
2024年版 輸出規制のトレンド
過去数年、世界規模で安全保障・経済安全保障の観点から、輸出関連法規制が厳格化しています。
日本でも「外為法(外国為替及び外国貿易法)」の運用が強化され、軍事転用の可能性のある資材・特殊材料はもちろん、普通の工業消耗品も管理対象となるケースが増加しています。
また、米中対立の影響も無視できません。
日本にサプライチェーンを持つ企業は、米国の「エンティティリスト(輸出規制リスト)」や中国の「未認可輸出品リスト」も意識しなければなりません。
海外顧客と取引する際、「書類上、どちらの最終ユーザーか」「第三国への転売リスク」「二重用途(デュアルユース)品か」など、現場がチェックすべきポイントが増えています。
アナログ現場での“うっかり輸出事故”
昭和から続く多くの企業では、“良いものを作れば売れる”“相手も分かっているはず”という暗黙の了解があります。
しかし、時代は大きく変わり、何気なく出荷した資材が、後から当局に指摘を受ける事案が相次いでいます。
たとえば、切削工具や潤滑油など、「普通の商品」と思っていたものが、微細加工や特殊合金を使用していたがために「規制対象」に該当したという例もあります。
現場の担当者レベルで「そんなはずはないだろう」が通じない時代です。
輸出規制への現場主導の対応策
1. データベース化とマスター管理
まず最初に着手すべきは、自社で取り扱うすべての消耗品アイテムの仕向国・品目ごとの「輸出管理マスター」を作ることです。
これはASEANや中国、インドなど、伸び行く市場に輸出したい商品全リストを棚卸しし、法規制や該否判定の情報とひもづけて管理する仕組みです。
古くはExcelベースで充分ですが、近年はクラウド管理も有効です。
法改正やリスク通知があったとき、迅速にマスターをアップデートできる体制を整えましょう。
2. 全社で意識・教育の底上げ
多くの工場長は「自分たちは製造が本業、法務は法務の担当だろう」と思いがちですが、現場にこそ最大のリスクが潜みます。
出荷前チェックリストや「一次仕向け先が変更になったら出荷停止する」など、シンプルで現場感覚に合った運用を作りましょう。
短時間のeラーニング、法務部門による現場巡回研修など、全員の“当事者意識化”が必要です。
毎年1度の点検ではなく、「想定外の圧力」や「市場の変化」をリアルタイムで吸い上げ、現場改革の糸口を作りましょう。
3. サプライチェーン全体の透明化
OEMの現場では、往々にして「委託先サプライヤーの材料調達ルート」がブラックボックス化しています。
しかし、輸出先で万一何かあった場合、OEM元である貴社にも連帯責任・説明責任が問われます。
部材サプライヤーにも「最終ユーザー国」「輸出判断基準」を開示し、契約書やSCM(サプライチェーンマネジメント)ルールに明記する。
また、四半期ごと・年次ごとのヒアリングや棚卸しを行うことで、ブラックボックス化を防ぎましょう。
バイヤー・営業部門の視点も加えた実践的対応
バイヤーが気をつけるべきポイント
バイヤーの立場では、「調達ルート」「ロット管理」「輸送トレース」が不可欠です。
例えば、日本国内で在庫化した資材でも、後から海外販売した場合は「再輸出管理」の対象になることがあります。
また、商社を経由した“間接的な”輸出時には、経由地の法規・ラベリング要件・梱包基準などにも注意が必要です。
定期的にサプライヤーから「非該当証明書」等の証憑を入手し、現場では都度保存・バックアップすることが、リスク回避の王道です。
サプライヤーから見たバイヤー要求
サプライヤー(供給業者)は、しばしばバイヤーから迅速かつ正確な納期・品質対応を求められます。
しかし、輸出規制という文脈では「納品遅延を最小限にするための書類・情報提供能力」が評価の対象になります。
サプライヤー自身が「どの規制、どの市場ならOKか」「必要書類は何か」を自信をもって説明できる体制づくりが、OEM受託元として信頼を獲得し、選ばれるポイントとなります。
OEM現場のアナログ革命 — 帰納的アプローチで突破せよ
型にはまらない輸出管理の試み
日本の製造現場には、「昔からこうだ」「これで問題なかった」という無意識バイアスが根強いです。
しかし、デジタルでもアナログでも、本質は“継続・仕組み化”です。
たとえば、紙の出荷ラベルの裏に「輸出管理チェック欄」をひと手間手書きで設ける。
出荷前ミーティングで「当日の輸出案件」を10分だけ全員で共有する、といった現場主導のミニ改善は強力な効果を生みます。
また、小さな工夫が積もることで、次のデジタル移行・自動化にもつながります。
業務フローの「なぜその工程が必要か」を改めて分析し、本当に必要な手順だけを可視化することから、すべては変わり始めます。
現場から事例紹介 — 失敗から学ぶこと
かつて私が工場長として指揮した案件で、輸出時の該非判定の書類が1週間遅れ、それが発端で先方ユーザーの工場ラインが一時停止になったことがありました。
その際、商社担当者から、極めて初歩的な「該非証明書の何がNGだったか」を現場全体で議論し、「法務部」「調達部」「製造現場」が一堂に会する場を持った経験があります。
このような「当事者連携型ワークショップ」を繰り返すことで、現場の熟練工も“本質”に立ち戻るきっかけとなり、結果としてミスの再発防止や全社体制の底上げにつながりました。
まとめ — 長期視点での輸出規制対応と海外展開の未来
消耗品OEM分野での海外展開は、国内市場の縮小を打破するだけでなく、日本のモノづくりの「品質」「技術力」を世界に伝える大きなチャンスとなっています。
しかし、その実現には、複雑化する輸出規制やサプライチェーン管理の“地味だけど大切な努力”が不可欠です。
バイヤー、サプライヤー、工場現場が一体となり、社内外の透明性を高め、アナログな強みを活かしつつ、着実なデータ管理と仕組みづくりを進めていくことこそが、グローバル競争を勝ち抜くための王道です。
輸出規制対応を面倒な「守りの業務」と捉えるのではなく、「攻めのビジネス開拓」のための土台づくりと位置付け、日本の現場力をもう一段引き上げていきましょう。
製造業の皆さん、いまこそ“ニッポンの底力”が問われています。
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