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陶器プレート印刷で微細線を再現するための露光強度とインク粒径調整

目次
はじめに:製造現場で求められる微細線の再現性
製造業の現場では、年々求められる製品品質の基準が高まり、特にデザイン性や精密さが問われる分野では、微細な線やパターンの再現性が重要となっています。
陶器プレートへの印刷分野も例外ではありません。
食器や装飾品としての陶器は、単なる道具ではなく、その美しさや企業ロゴ、独自デザインが競争力に直結します。
微細線の印刷技術が高まれば、従来困難だった表現や新しい商品価値の創造につながります。
本記事では、陶器プレート印刷における微細線の再現性を高める「露光強度」と「インク粒径調整」に焦点を当て、現場目線の実践的な技術解説と、昭和的アナログ業界で根強い慣習やその変革へのヒントを交えて紹介します。
陶器印刷の基礎と課題:なぜ微細線が難しいのか
陶器プレート印刷の基本プロセス
陶器への加飾は、スクリーン印刷やパッド印刷、デカール印刷などがよく使われます。
一般的なプロセスは以下の通りです。
1. デザインデータを製版用に編集する
2. プレート(版)を作製し感光材で処理
3. インクを盛り付けて印刷
4. 焼成やコーティングで定着・完成
中でもプレート作製の露光工程と、使用するインクの性状が微細線の品質を大きく左右します。
微細線再現が難しい理由
微細線再現の高難度化の理由には、以下のようなものがあります。
– 陶器表面の凹凸や吸水性が一定でない
– インクがにじみやすく、細い線が潰れやすい
– 版(プレート)の感光性や露光ムラによる微細な抜け・かすれ
– インク自体の粒径が大きいと線が太ったりぼやけたりする
特に、現場では「去年と同じ条件でやっているが細かいロゴが出ない」「新しいデザインでは線が切れてしまう」といったクレームが多発しがちです。
ここからは具体策としての「露光強度設定」と「インク粒径の管理」に絞り解説します。
露光強度が微細線再現のカギとなる理由
プレート製版における露光の役割
露光は、感光性樹脂や乳剤でコーティングしたスクリーン(版)を、デザインデータを通して紫外線などにさらす工程です。
適切な露光設計ができていれば、デザイン通りの細い通路やラインが「抜け」て、インクが正確に通過できるマスキングが形成されます。
露光強度の最適化が微細線を救う
露光強度が不適切だと以下の問題が起こります。
– 強すぎる露光:感光材が硬化しすぎて微細部が抜けない(線が消える)
– 弱すぎる露光:硬化不足でインクがにじみ、エッジがぼやける(線が太る、滲む)
特に昭和的な現場では「慣例通り〇分で露光してきた」という風習が今も残っています。
しかし、デザインや版材質、照射距離、使用する光源によって最適条件は大きく異なります。
従来の暗黙知だけでなく、客観的な露光量(J/cm2)に基づく評価や、段階的なテスト感光による検証が必須です。
現場に求められる露光プロセスの見直し
例えば、最新のLED露光装置や紫外線測定器を導入できれば理想ですが、アナログ志向が強い現場ほど最低限ハンドヘルドUVメーターの活用や、綿密な試験露光での角度・距離管理を推奨します。
実践例としては、
– 「1分ずつ露光時間を変えた版をいくつか焼き、ルーペとマイクロスコープで線幅・抜け具合を評価」
– 「プレートの端と中央それぞれ同じ精度で線が出るか分布評価」
などを繰り返し、データをロット・季節ごとに記録します。
昭和時代の“勘と経験”から一歩抜け出し、“見える化×標準化”を心がけることが求められます。
インク粒径調整による微細線コントロール
インク粒径が微細線に及ぼす影響
インクの粒径が大きい場合、線幅と同等またはそれ以上の粒子がプレートの抜けに入り込めず、インク詰まりや通過時のぼやけが発生します。
反対に、粒径が小さいと微細な隙間にもインクが均一に充填されやすくなり、狙い通りのエッジが得られます。
工場現場では「ロットで仕入れたインクの粒径分布管理」をおろそかにしがちですが、これは微細線再現に直結するポイントです。
インク粒径の調整・選定方法
近年の高品質インクには「ナノ粒径」「サブミクロン粒径」といった表示が増えています。
具体的な選定ポイントは以下の通りです。
– 微細な線を出す場合は、線幅の20%以下の粒径分布インクを選ぶ
– 顕微鏡観察や、粒径分布分析(レーザー回析など)を定期的に行う
また、インク粘度の調整(希釈や攪拌)も重要です。
粘度が高すぎると詰まり、低すぎるとにじみ・線切れやすいので製造毎の管理記録・調整が不可欠です。
現場導入事例と注意点
実際に大手陶器メーカーでは、製版で使う露光強度のレシピ管理と、印刷で使うインクの粒径・粘度記録をセットで標準化することで、不良率の大幅低減を達成しています。
ただし、大量生産現場でインク切り換えのたびに粒径分析するのは非現実的なこともあるため、「同一ロットのインクを使い切る」「新ロット導入時だけミニ試作を行う」といった工夫も有効です。
一度標準条件を作り込み、その後は工程ごとのチェックシートや写真記録を徹底することが、ミス防止・品質安定への近道です。
アナログ文化とデジタル技術の融合:業界動向と今後の展望
昭和的職人芸から工程見える化へ
かつては、「あの人にしかできない」「ベテラン職人の勘」という暗黙知が、現場の品質を支えていました。
しかし、世代交代や担い手不足でその知見が失われつつあります。
現在では
– 露光機械やUV計測器の簡易導入
– インク引継ぎ時のサンプルシート残し
– デジタルマイクロスコープによる線幅記録
など“誰でもできる標準化”が推進されています。
現場のコメントや改善案もIT化して蓄積されつつあります。
サプライヤー×バイヤー間の情報共有の重要性
微細線印刷の安定化には、インクメーカー、プレート提供業者、印刷現場が互いの事情を理解し、細やかに情報伝達することが肝要です。
サプライヤー視点では「どの粒径・粘度まで管理すれば評価されるのか」
バイヤー視点では「新しい柄で必要な抜け性能をどちらに要望すべきか」
という歩み寄りが進化しています。
現場改善提案をサプライヤーと連携して進めることで、「工程での異常発生時の共同対策」「逆提案によるコスト削減」などが現実味を帯びてきました。
まとめ:トライ&エラーとデータ標準化が未来をつくる
陶器プレート印刷分野で微細線を美しく再現するためには、露光強度の“見える化”とインク粒径管理の“標準化”が不可欠です。
職人的な勘や伝統も重要な資産ですが、それを誰でも再現可能な「技術標準書」とし、各工程で数値化・記録することが今後の競争力につながります。
今も息づく昭和的な製造現場の良さを守りつつ、デジタル計測やIT連携を活用し世代・業種を超えたノウハウ共有によって、陶器印刷業界の新たな地平線を切り拓いていきましょう。
製造業で働くすべての方、これから業界を志す方、サプライヤーとして新しい付加価値提案をしたい方に、この記事が現場改善と未来戦略の一助となれば幸いです。
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