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グラフィックTシャツ印刷で線の太りを防ぐための露光解像度と乳剤厚管理

目次
はじめに — グラフィックTシャツ印刷業界における課題
Tシャツやアパレルプリント市場は、近年ますます多様化し、短納期・高品質対応が求められています。
とりわけ、グラフィックTシャツの印刷工程は、色数・デザイン精度・素材の違いによる品質安定性確保が課題となり、それらが最終製品の評価を大きく左右します。
このなかでも、スクリーン印刷方式で発生しやすい「線の太り」(デザイン本来の線より太く印刷されてしまう現象)は、多くの現場担当者・管理者を悩ませています。
顧客満足度に直結する品質指標であり、ここでつまずくと製品価値・納品信頼度が大きく損なわれる危険性があります。
なぜ線の太りが起こるのか。
その原因の一つが、スクリーン製版時の「露光解像度」と「乳剤厚管理」にあります。
本記事では、昭和時代から受け継がれた“勘と経験”だけに頼らない、現代製造現場で科学的・理論的に品質管理を高めるための現場目線と新たな提案を交えて、「線の太り」防止のポイントを徹底解説します。
線の太りとは何か?実践現場でのリアルな悩み
線の太り=お客様クレームの種
グラフィックTシャツでは、ブランドロゴや細かいイラスト、拘りの線画など再現性の高い意匠が増えています。
こうした中、「元データでは細い線が、印刷すると太く潰れてしまう」「輪郭のぼやけや文字のつぶれが目立つ」——これは非常に多い品質クレームです。
ときに0.1mm単位の世界で妥協が許されないアパレル商材だけに、微細な再現精度こそ信頼構築の命綱です。
「この工場では思い通りの仕上がりが得られない」と思われれば、すぐに商流・受注が途絶えてしまう危機感が現場には常にあります。
なぜ線は太ってしまうのか?
線の太りは主に3つの要素によって引き起こされます。
1. 製版工程(スクリーン露光時)の問題
2. 乳剤(感光液)の選定・塗布管理の不備
3. 実際の印刷条件(インク粘度、圧力、版離れなど)
これらが複雑にからみ合い、一見些細な作業のブレが最終印刷物に大きく現れてしまいます。
以下では、要因1と2にあたる「露光解像度」と「乳剤厚管理」の基礎知識から、現場ならではのノウハウまで分かりやすく解説していきます。
スクリーン製版と露光解像度—線の太り防止の基礎
露光工程で押さえるべきポイント
「露光解像度」とは、デジタルデータから感光乳剤へ正確な形で転写する際の“再現力”そのものです。
いくら高精細なデザインを作っても、このステップでボヤけたり、エッジが甘くなれば元も子もありません。
現場で見落としがちな落とし穴は、以下のような点に集約されます。
・露光時間が長すぎて線が膨張する
・露光時間が短すぎて線が欠ける
・光源の分布や波長が適正でない(経年劣化やフィルムの汚れ)
・製版フィルムと感光面の密着不良
こうした問題が複合的に発生し、“線の太り”という形で現れます。
最新の現場データを活かすラテラルシンキング
昔ながらの露光条件「目安時間」「肌感覚」では、再現性が低下しています。
今や大手では、
・露光機の光量(lxまたはmJ/cm²)を定量管理
・毎ロットで標準露光チャート(ステッパー)を添付して検証
・真空式密着プレスの導入
・作業者の手順徹底トレーニング
こうした理論×定量×標準化によって、誰がやっても一定品質が確保できる管理手法へとアップデートされています。
アナログ文化が根強い現場でも、「データ化・見える化」の発想が差別化ポイントです。
乳剤厚管理—細部再現には“厚み”こそ命
乳剤厚がなぜ重要なのか?知っておきたい物理現象
乳剤(感光液)は、スクリーンメッシュに薄く塗布されることで感光層となり、ここにデジタル画像のポジ/ネガを焼き付けて“版”が作られます。
乳剤層が極端に厚い・薄い場合、次の不良を招きます。
・厚すぎる→感光後に端部がもやけて線がぼやけ太る(エッジ膨張)
・薄すぎる→感光層が破れやすく、細線が抜け落ちる・寿命が短い
乳剤厚は、業界平均で10〜20μm程度ですが、極細線や高精度品ではさらに5μm単位で最適化が必要です。
Tシャツ用のコットン素材では“布目を埋める”必要もあり、厚みによる効果と影響は決して無視できません。
きちんと管理しよう!現場でできる乳剤厚管理方法
現場でもできる乳剤厚管理のポイントは以下の通りです。
・専用厚みゲージ(マイクロメーター)で定点測定
・版枠ごと、用途ごとの標準厚みを工程表として明示
・温度・湿度管理で乳剤粘度も一定化(温度23℃/湿度60%が目安)
また、現場によっては「刷毛の持ち方」「最初の一塗りの濃度」「乾燥工程での重ね塗りの数」といった人のスキルに大きく依存しやすいため、動画マニュアルや写真付き手順書で“作業のばらつき”を減らす工夫も重要です。
ラテラルシンキングで考える—アナログ工程のDXは可能か?
アナログのものづくり現場では、「長年やってきたやり方だから」「この人しかできない」……そんな固定観念がはびこってきました。
しかし、現代は“人×機械×データ”で現場力を底上げする時代です。
露光解像度や乳剤厚の管理も、「見える化」「データ収集」「デジタル基準」の積み重ねがストック型のノウハウとなります。
・露光条件ごとの歩留まりやクレーム率を日報で収集、エクセルでグラフ化
・AI画像認識を用いて製版時のライン幅再現性を自動判定
・IoT対応露光装置で全履歴を自動記録し、異常トレースが可能
・スマホ撮影で版ごとの差分をAIで解析し、厚みや密着具合を可視化
データに基づいた改善サイクル(PDCA)が回る工場ほど、属人性が薄れ、現場から信頼と評価を集めやすくなっています。
バイヤーとサプライヤーの立場から見た——差別化の武器に
バイヤー視点:なぜ線の太り防止は重要か
バイヤー目線から見たとき、品質管理力の高さとは「顧客からのクレーム率の低さ」「納品物の安定性」の指標に直結します。
複数の委託先を比較検討する際、同じ価格帯でも
・高精度印刷(極細線も安定)
・再現性、リピート性(版ごとにぶれない)
・納品前の全数チェック体制
・技術データの開示姿勢
これらがしっかりしているサプライヤーは、安心して繰り返し発注がしやすくなります。
特に最近は、「この工場はDX的取り組みにも積極的で品質リスクが少ない」と評価される製版企業が、確実に伸びてきています。
サプライヤー視点:「差別化武器」に変えるストーリーを
サプライヤー・工場担当者の立場からは、露光解像度&乳剤厚を「独自の品質ルール」「数値化された管理力」として積極的に開示、提案することがお勧めです。
「他社にはない管理チャートやサンプル版の提出」「過去のトラブル事例と対策の説明」など、現場発のストーリーは競争力となります。
たとえば、
「乳剤厚を全品測定し、±2μm以内の再現を保証しています」
「週次で全員参加の品質ミーティングを行い、クレームゼロへの現場活動を徹底しています」
など、属人技術から“工程として管理できる品質”へのアップグレードが、受注獲得の新たな切り札となります。
まとめ—「線の太り」をDXの入り口にしよう!
グラフィックTシャツ印刷の現場で、線の太り問題は“昔からの課題”でありながら、実は現代製造現場のDX・改善の大きな入り口です。
露光解像度・乳剤厚管理の徹底は、一手間かかりますが、差別化の大きな武器、そして新規バイヤー・サプライヤー間の信頼構築につながります。
今、昭和型の“職人芸”から脱却し、誰もが安定した高品質を届ける“新時代のものづくり現場”を一緒に創り上げるときが来ています。
日々の小さな不良も、科学的な工程管理・データ化で解決できる。
そうした積み重ねが、次代の製造業を確実に強くしていくのです。
この記事が、製造業に携わるすべてのみなさまの現場改善、キャリアアップ、企業間信頼向上の一助となることを願っています。
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