投稿日:2025年10月26日

営業人材が不足する中小企業が全国展開を実現する外部営業連携法

営業人材の不足が深刻化する製造業中小企業の現実

近年、製造業中小企業における「営業人材不足」は全国的な課題となっています。

2030年には労働人口が大幅に減るとの予測もあり、事業拡大はおろか既存取引の維持すら危うくなる企業も少なくありません。

AIやIoTなどデジタル化が進むと言えども、商談や課題解決には「人と人」のきめ細かいコミュニケーションが不可欠です。

しかも営業スタッフの求人倍率は業種平均の2~3倍とされ、経験者の採用難は年々深刻さを増しています。

一方、「高齢化」「若手定着率の低さ」「地場密着ゆえの閉鎖性」に悩む企業も多く、昭和的な「職人営業」に頼ったままでは立ち行かなくなる現場が増えています。

このままでは良い技術や製品を持っていても、市場に広げられずに埋もれるリスクが高まります。

そうした中、“営業機能の外部活用=外部営業連携” に活路を見出す企業が、着実に成果を上げているのが実態です。

外部リソースの活用はITや一部のベンチャーだけではありません。

伝統的でアナログな業界にこそ、知恵と仕組み化で営業活動を変革し得る余地が残されています。

なぜ営業人材が中小製造業で不足するのか

1. 社員の高齢化と未経験若手の定着難

製造業は、長らく一人の「営業ベテラン」に頼った属人的体制が珍しくありません。

引退期を迎えるベテランの後継者が育たず、求人を出しても未経験の若手社員が大半。

営業現場の人脈やノウハウをゼロから吸収することは容易でなく、数年で辞めてしまうケースも多発しています。

2. 地域密着ゆえの内向性

地方都市や産業クラスターで安定的に受注できてきた企業ほど、外の世界へのアプローチが希薄になりがちです。

新規の営業戦略やデジタル活用も“本社決裁が通らない/変化に及び腰”といった昭和的な組織風土に阻まれて、営業人材の採用・育成が後回しになる傾向があります。

3. 産業構造の変化

大手メーカーによる本格的な内製化、EMS/ODMの拡大、設備投資の二極化など、サプライチェーン構造や購買の意思決定プロセスが大きく変化しています。

こうした現場構造の変化に対応できる営業人材の質的不足も深刻です。

外部営業連携とは何か?

外部営業連携とは、自社の営業活動(新規開拓・既存深耕・マーケティング・カスタマーサポート等)の一部または全部を「社外」の専門人材やサービスと協働することを指します。

かつては自社の“営業マン”に全て任せるしかなかった部分も、
近年では
– 外部の営業代行会社との連携
– 業界コミュニティを活用したネットワーク営業
– 大手商社・代理店とのパートナー関係強化
– デジタル営業プラットフォームの積極活用
など様々な選択肢が定着し、多様なモデルが誕生しています。

営業人材不足の「付け焼き刃」ではなく本質的な解決策

単なる人手不足の対症療法ではなく、外部営業連携を「営業競争力の強化」と捉える意識改革が極めて重要です。

なぜなら、外部リソースの活用によって獲得できるものは「人手」だけでなく、
– 新たなネットワーク
– プロ視点による営業手法
– ITや最新ツールによる省力化
– 属人的営業脱却による“仕組み化”
など、企業成長の原動力となる資産そのものだからです。

実践!中小製造業が全国展開を叶える外部営業連携の手法

1. 営業代行サービスとの協働でアプローチ裾野を拡大

最近は製造業の商材(部品加工、試作開発など)に特化した営業代行会社も増えています。

また、単発スポットや案件単位での「営業マン派遣」から、月額固定のアウトソーシング契約まで形態も様々です。

これにより
– 営業未開拓の新規地域(関東から関西へ/中部から九州など)にも短期間で販路拡大
– 顧客訪問や展示会対応などで人手を一時的に補完
– 既存顧客をフォローし、隠れたニーズを発掘

といった活躍が期待できます。

但し、「商材理解の深さ」「御用聞き型にならない自立型営業であること」など、パートナー選定は極めて慎重に行うことが重要です。“丸投げ”には絶対にしない方が賢明です。

2. 既存取引先・協業先と連携したネットワーク営業

地元大手・既存取引先(特にローカル商社やエンジニアリング会社など)とタッグを組み、共同プロモーションやクロスセルに取り組む事例が増えています。

外部企業とのコラボ営業は
– 取扱製品の補完性(例:金属加工会社+表面処理業者など)
– 顧客課題へのワンストップ解決力の強化
– 相互案件紹介ルールの構築

という観点で、自社単独ではリーチできない「全国」に通じる営業チャネルを獲得できます。

3. オンライン商談・マッチングサイト・SNSを活用したデジタル外部営業

コロナ禍で一気に市民権を得たのが「Web商談」やB2Bマッチングサイトの活用です。

– 接触機会の減少
– 全国規模のバイヤーへ同時PR
– 試作依頼・見積り依頼の自動取得

こうしたデジタルツールで営業リソースそのものを仮想的に拡張し、都市部・大手案件への入り口が格段に広がりました。

特に、「下請型」から脱却したい中小メーカーにこそ、外部営業メディアの出番は大きいはずです。

4. 人材シェアリング(副業/フリーランス/OB人材)による柔軟な営業体制

経験豊富な営業OBや、B2Bセールスに強い副業人材、営業+技術解説ができるフリーランス等をプロジェクト単位で活用する動きも活発です。

従来の「採用」や「常勤化」にこだわらず、営業現場もシェアリングエコノミーが本格化しつつあります。

週1日・月10時間程度のコミットから始めることで、リスクとコストを抑えつつ様々なノウハウを吸収できます。

外部営業連携を成功させるための5つのポイント

1. 自社が「出せる価値」と「ロスしていた機会」を徹底棚卸し

どんなに優れた営業パートナーでも、商材や技術を正しく伝えられないと成果に繋がりません。

差別化できる「製造工程」「特徴ある実績」「スピード納期」「カスタマイズ性」など、自社の強みを棚卸ししましょう。

合わせて、過去ロストした案件や対応できなかった案件も分析し、外部営業でこそ巻き取れそうな「機会損失」を洗い出すことがカギです。

2. KGI・KPIなど明確な目標設定とフィードバック

「営業活動=訪問件数」「リード数」だけでなく、「成約率」「見積依頼数」「新規エリア開拓数」など複数のKPIを設けて、パートナーと共通のゴールを可視化します。

定例ミーティングや、案件分析会、顧客フィードバックの活用など、伴走型の運用サイクルこそが成果を押し上げます。

3. 丸投げNG、伴走型・共創型の姿勢を貫く

「売れるなら何でも/ウチの分身になってくれ」と丸投げすると、短期的な数字は上がっても、ニーズに刺さらず継続展開が難しくなります。

あくまでも“自社をよく知るパートナー=仲間”と位置づけ、一緒に顧客獲得のPDCAを回していく姿勢が欠かせません。

4. 成功事例・ベストプラクティスの共有と展開

外部営業から得られた「良い事例」は、他のエリアや他部門にも迅速に横展開し、社内ナレッジとして資産化しましょう。

「ウチの業界では無理」という既成概念を壊し、営業自体が変化していく感覚を会社全体で共有することが大切です。

5. 社員自身にも外部志向・ダイバーシティのマインドセットを

外部営業連携は、単に人手を借りる仕組みではありません。

現場が刺激を受け、既存社員自身も「営業スキルの棚卸し」「新しいやり方・考え方」を吸収するきっかけにする。

こうした外部との共創経験が、次世代の営業人材育成に繋がります。

アナログ現場でも今すぐ始められる外部営業改革の第一歩

「昭和から抜け出せない」と悩む中小製造業であっても、今日から実施できる外部営業連携アクションはたくさんあります。

例えば、
– 業界の展示会やユーザー会で「隣の会社」と情報交換し、小規模な案件紹介ネットワークを作る
– 過去に縁のあった営業担当者やOB、リタイア人材にスポットコンサルとして現場訪問を依頼する
– SNSやB2Bプラットフォームに会社ページを整備し、見積対応は外部サポートを活用

など、“限界集落化”しがちな営業活動を、少しだけ「会社の外」に開いてみることが第一歩です。

一人の優秀な営業マンも重要ですが、複数の外部チャネルを組み合わせて「組織的に営業力」を底上げする――。

これはまさに、アナログ現場ならではの“人情と信頼”を活かした新しい成長戦略だと自信を持って言えます。

バイヤー志望者・サプライヤーの皆様へのメッセージ

バイヤーを目指す方には、ぜひサプライヤー側が「なぜ営業リソースの不足で困っているのか」「どのように新たな連携先を探しているのか」という現場事情を知ってほしいと思います。

またサプライヤーの立場で“バイヤー思考”を学ぶことは、今後の交渉力強化・提案力UPに直結します。

デジタル全盛時代であっても、「人と人」「現場同士」の連携が、ものづくりの現場に安心と可能性をもたらします。

今こそ「外部」「社外」への積極的な一歩が、全国規模の販路開拓だけでなく自社の未来を切り開く道しるべになるはずです。

製造業で培った知恵とネットワークを、共にシェアし合い、日本のものづくりを次世代まで支えていきましょう。

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