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OEMパーカーを企画する前に知っておくべき生地流通の仕組み

目次
はじめに – OEMパーカー企画の第一歩とは
OEMパーカーの企画に取り組む際、多くの方がデザインやブランドマーケティングに注目しがちです。
しかし、製造業の現場経験者として最初に声を大にして伝えたいのは、「生地の流通と調達の仕組みを知らずにスタートすると、商品化までの道のりで必ず壁にぶつかる」という事実です。
生地流通の現場は、今もなお昭和的なアナログ慣習が強く残る領域です。
本記事では、OEMパーカーを企画・発注する前に知っておきたい生地流通の仕組みや業界の構造、そして実践的な調達ポイントまで、現場目線・バイヤー目線の両方から解説します。
OEMビジネスとパーカー企画の基礎知識
OEMとは何か?
OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、他社ブランドの製品を自社で製造するビジネスモデルです。
ファッション業界では、ブランド企画会社が自社のブランド名で商品を販売し、実際の生産は外部工場に委託します。
この構図はパーカー企画でも一般的です。
メーカー(=工場)は、ブランドから届いた仕様に沿って「素材調達」から「生産」までを担います。
なぜ生地調達が重要か
パーカーはその着心地や風合い、耐久性がブランド価値を大きく左右します。
これらの品質は「生地選定」と「調達ルート」によってほぼ決まるため、OEMパーカー企画において最重要ポイントです。
にもかかわらず、生地の流通構造は複雑で、企画担当者や新規参入企業が“どうやって信頼できる生地を手に入れるか”という情報はなかなか表に出てきません。
生地流通の仕組み – 見えにくい業界の全体像
生地流通の基本構造
日本国内においては、生地は一般的に次のような流通経路を辿ります。
原糸メーカー → 紡績工場 → 生地メーカー(織布・編立工場) → 整理加工工場 → テキスタイル商社・問屋 → 製品メーカー → OEM工場 → ブランド
この間に複数の業者が介在し、工程ごとに担当が細分化されます。
多層構造が病的に細かく分かれているのは、日本特有のアナログ取引と、商習慣の強さが背景にあります。
なぜ流通が複雑なのか
生地は「一反(約50m~60m)」といったまとまった単位で流通します。
さらに色や仕上げのバリエーションが多く、それぞれで加工や検査が必要です。
多頻度・小ロット化の要求にそぐわず、昔ながらの分業体制・帳票主義が今も根強く残っています。
これが、発注リードタイムの長期化や、生地の在庫コントロールの難しさを招く原因にもなっています。
生地市場の流通形態
大きく分けて、以下の3パターンがあります。
- 生地メーカー直販型(生地産地に多い)
- テキスタイル商社や問屋経由型
- 産地の「現物市」「在庫市」活用型
OEMパーカーの場合、現実的には2番が多いですが、小ロットやスピード重視の場合は1や3を狙う選択肢も有効です。
パーカー生地の代表的な素材と流通上の考え方
代表的な素材
パーカーに最も多用される素材は「裏毛(スウェット)」と「裏起毛」です。
主な素材構成は以下の通りです。
- 綿100%の裏毛
- ポリエステル混紡の裏毛・裏起毛
- 一部、機能糸(吸汗速乾・抗菌など)混合
一見すると、「どこでも手に入る」と思いがちですが、実は等級や風合い、大手ブランドでないと入手が難しい稀少生地も存在します。
糸から始まるもの作り – 差別化ポイントはどこか
パーカー素材の競争力は「糸の紡績」や「編み密度」「表面仕上げ」「整理加工」など、実に細やかな工程の積み重ねで生まれます。
ブランド独自の膨らみや軽さ、光沢、肌触り—これらはOEMでは「どこの工場ならどんな糸、どう加工できるか」を知る情報戦ともいえます。
流通経由で一般的な生地を仕入れる場合、差別化要素の投入が難しく、ロットや価格での勝負になりがちです。
OEMパーカー企画において押さえるべき流通の実務ポイント
商習慣 – いまだに根強い“口約束”と帳票文化
多くの生地関連会社はFAXや電話、紙帳票のやり取りが中心です。
初取引や条件交渉の際、「現場で〇〇さんが言っていたから」「口頭で確認した」という“昭和的商習慣”が根強く残っています。
OEMパーカーの企画担当者は、メールや見積書で必ず記録を残す習慣を徹底することがリスク回避の鉄則です。
MOQ(最小発注ロット)による調達制約
生地メーカーや商社のほとんどは“反”単位の発注が常識です。
100着や200着程度の小ロットパーカーの場合、既存在庫からの調達以外は難易度が高まります。
そこで、産地在庫市や、OEM工場が常備している「定番生地」を選ぶ方が実務的にはリスクが低減します。
リードタイム – パーカー納期の本当の壁は?
「生地が揃わない=製品の生産ラインが止まる」という現象は、現場では頻繁に発生します。
素材調達から納品まで、輸送・加工・検査を含めて2~3ヵ月かかるケースも珍しくありません。
特に新規開発素材や海外製生地を使う場合は、サンプルワーク段階から綿密なスケジュール管理と工程把握が欠かせません。
昭和的アナログから脱却できない理由と現場の“裏ワザ”
未だ無くならない産地ネットワークの意味
生地流通は「人のつながり」がモノを言う世界です。
新規OEMブランドが参入した直後は、価格や納期の面で“不利”になることも多々あります。
一方で、地場産地の問屋や商社と取引実績を積み上げることで、「掘り出し物の在庫生地」や「限定生産ロットの割当」など“現場限定の裏ワザ”を活用できる可能性が広がります。
目立たない「産地の現物市」活用術
産地の問屋街やテキスタイルマーケットでは、現物の在庫市、いわゆる「現物市」が定期的に開催されます。
小ロットやスポット調達には理想的な仕組みですが、こうした情報は一般には出回りません。
日々産地に通い、現地で直接サンプル取得・交渉することで、調達の工夫とコスト削減が可能となります。
バイヤーが知っている“現場流” 品質管理の落とし穴
なぜ「サンプル通り」にならないことが多いのか
パーカーの量産に移った際、「サンプルは良かったのに、実際の生産品は違った」というトラブルが多発します。
その原因は「生地ロットブレ」や「工場側の都合による生地仕入れ先の変更」にあります。
サプライヤーは守秘義務やコスト最適化のため、生地のサプライヤーを柔軟に変更することが少なくありません。
OEMバイヤーは、必ず量産時に現物確認(ロットアップサンプルチェック)を徹底し、不一致があれば即座に工場と連絡・調整しましょう。
“長い付き合い” が生む品質の安定感
現場経験上、サプライヤーや生地メーカーとの「長期的な取引関係」は、品質トラブルの回避や調達条件の緩和に直結します。
「価格交渉」を優先するより、「継続受注」を通じて信頼関係を積み上げることが、最終的に高品質なパーカーOEMの確立につながるでしょう。
今後のトレンドとデジタル化への課題
デジタル化の現実と限界
EC型の生地プラットフォームやIT化の動きは進んでいますが、本格的な広がりには至っていません。
その原因は、生地業界の細かなバリエーションや、逆に「現物を触らないと分からない」現場重視の文化にあります。
持続的価値を生む調達戦略とは
自社企画パーカーの差別化には、「一般流通していない生地」や「サプライヤー独自糸・加工」へのアクセスが重要となっています。
そのためには、従来の昭和的アナログネットワークも積極活用しつつ、少しずつデジタル手法による業務効率化も取り入れる“ハイブリッド戦略”が推奨されます。
まとめ – 知っているか知らないかで大きく変わる調達の結果
OEMパーカー企画における生地流通・調達の現場は、知識と思考の深さが、そのまま商品のクオリティ・納期・コストに跳ね返ります。
生地流通の仕組みを正しく理解し、時にはアナログネットワークを活用しながら、粘り強く現場に足を運び、信頼できるサプライヤーと協力関係を築くこと。
これこそが、今も日本のものづくり現場で「強いOEMパーカー企画」が生まれる根幹といえるのです。
あなたもぜひ、表面的な価格やカタログスペックの世界から一歩踏み込み、現場でしか分からない生地流通の奥深さに触れてみてください。
それが“バイヤー目線”で一歩先を行くOEMビジネスの極意です。
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