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受発注データ二重入力防止で残業時間を月30時間削減した工場のデジタル化施策

目次
はじめに:昭和型工場の“二重入力地獄”とは
製造業の現場に長らく身を置いてきた方なら、一度は「受発注データの二重入力」による手間やミス、それに伴う残業の増加を経験したことがあるはずです。
たとえば、生産管理担当がサプライヤーからFAXやメールで届いた発注データを手作業でExcelに転記し、その後、会計システムや自社基幹システムに再入力する――。
この“昭和型”のアナログな現場運用が、いまだに多くの工場で根強く残っています。
デジタル化が騒がれ続ける令和の時代に、なぜ二重入力のような無駄が解消できないのか。
本記事では、二重入力防止のために実際の現場で取り組み、月間30時間分もの残業削減を実現したデジタル化施策を、実例や業界動向を交えて解説します。
なぜ受発注の二重入力が発生するのか
アナログ文化が根深く残る日本の製造業界
日本の製造業、とくに中堅・中小企業では、かつて導入したレガシーシステムと紙・FAX文化が共存しているケースがよく見られます。
しかも、基幹システムや生産管理システムは大手ITベンダーのカスタマイズに頼ることが多く、現場が自由にデータ連携やフォーマット変更できないことが二重入力問題を助長します。
現場独自の“改善と属人化”の積み重ね
現場で「もっと効率を上げよう」と独自の管理ツールやExcelマクロを作ると、一時的に便利にはなりますが、公式なシステムとの連動がないため、結局はどこかで手打ちによる重複作業が発生します。
現場改善の積み重ねが、逆に属人化の温床になり、根本解決から遠ざかるというパラドックスが起きています。
二重入力削減の道は「システム連携」にあり
API連携やRPAの活用がカギ
近年、API連携で各業務システムをつなげたり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が現場の手入力業務を代行したりすることで、二重入力防止に成功する事例が増えてきました。
とはいえ、最新ITの知識が不足していたり、過去の運用を変える“痛み”を避けたりしたい現場が多いのも実情です。
現場目線での“すぐできる”二重入力対策
すべての業務システムをAPI連携で統合するのが理想ですが、初期投資やスキル面でハードルが高いのも事実です。
現場でまず着手できるのは「現状の情報入出力の棚卸し」「Excel等の共通フォーマットを用いたデータ流通」など、既存ツールの工夫による“アナログデジタルブリッジ”です。
たとえば、
– FAXや紙注文書はスキャン+OCR変換して直接Excelに落とし込む
– Excelで標準フォーマットを作り、そのまま各システムへコピペ、もしくはCSVとしてインポート
– データ連携できる簡易RPA(UiPath、Power Automateなど)の限定活用
といった“つぎはぎ型”でも効果的なアプローチは可能です。
【事例】月30時間もの残業時間を削減した現場の工夫
実際の取り組み:二重入力ゼロへ向けた布石
私が携わった工場では、資材発注~納品~検収~支払処理の各段階で発生していた二重入力・転記業務に着目しました。
労働時間のムダだけでなく、「どこかで転記ミスがある」「バイヤーが何度もサプライヤーに確認」といった負の連鎖が発生していたのです。
システム統合なし、“橋渡し機能”の構築
当時は現場担当者の業務Excelファイルによるデータ管理が主流でした。
ここに以下のような改善を加えました。
1. 発注書作成ExcelをVBA(マクロ)で自動化。発注内容を入力後、仕入れシステム用のCSVと、納品確認用リストを自動生成
2. 納品書データもExcelの標準フォーマットへサプライヤー側に入力協力を依頼。納品時はデータ取り込みのみで済む仕組み
3. 検収から会計へのデータ連携にも、受け渡し専用フォルダを作り、ダブルチェックを減らす
結果的に、月あたりの時短効果は平均30時間。何より、現場作業者や間接部門のストレスも大幅に減りました。
サプライヤー/バイヤー両視点の「二重入力ゼロ」への近道
バイヤー側のホンネ
製造業調達部門のバイヤーは「できるだけ効率化したい、でもシステム投資は最小限にしたい」「でも、サプライヤーの負担が増えるのは避けたい」という板挟みの中で運用しています。
バイヤーが考えていること、それは「標準フォーマットを徹底」「運用ミスを防ぐチェックリスト作り」「進捗共有の見える化」。
そして、サプライヤーにも“デジタル化協力”を段階的にお願いしたい、と考えています。
サプライヤー側が知っておきたい“バイヤーの課題”
調達側は、入力作業や確認工程を「できるだけ現場負担0」にしたい、と考えています。
ですから「御社のExcelが指定フォーマットならコピペ1回で済む」とか、「CSVを自動返送してもらえばミス0になる」、と積極的な提案ができるサプライヤーは歓迎されます。
受注データも「紙よりCSV・標準Excel」「メールより共有フォルダ」が喜ばれます。
これだけでサプライヤーの評価ポイントが上昇することは間違いありません。
業界動向:なぜ“アナログ運用”が未だ主流か
「一律標準化」は難しい現場の特性
日本のものづくり現場の多くは、「取引先ごとに仕組みが違う」ことが珍しくありません。
案件ごとに仕様も納期も違う中、「全部IT化・標準化」とは一足飛びには進めません。
そのため、データ受渡しの標準化・自動化に時間がかかりがちです。
国・業界団体の動きと今後の展望
経済産業省や各種団体も、受発注・検収・請求の電子化・EDI普及を推進中です。
しかし「サプライヤーのITリテラシー格差」や「高度なカスタマイズ要件」の壁が根強く、まずは“足元のExcel標準化”や“クラウドストレージの共用”から着手するケースが増えています。
実践ポイント:明日から始める工場デジタル化の一歩
1. まずは現場の「データ受渡し手順」を洗い出す
受発注~納品~検収まで、どこで“手作業の転記”が発生しているかを整理しましょう。現場ヒアリングやフローチャート化がおすすめです。
2. Excel標準フォーマットやテンプレートを活用する
「この書式なら、すぐシステムに取り込める」を共通認識にして、社内外で周知徹底します。
3. 可能な部分のみRPAやマクロ導入も視野に
現場によっては、10分でも20分でも時短すれば大きな成果になります。
4. “アナログ+デジタル”の混在を前提に運用を最適化
いきなりフルデジタルは難しいため、「アナログ現場でも使える仕掛けやルール」を意識して設計します。
まとめ:現場発のデジタル化で“新たな地平線”へ
受発注データの二重入力を防止すれば、月30時間もの残業削減は決して夢ではありません。
最先端ITの導入が難しくても、現場の“できる範囲”で標準化や自動化の工夫を積み重ねることで、大きな業務改革になります。
現場目線の工夫が、やがては全社一丸となったデジタルシフトへの新たな地平線を切り拓きます。
今こそ、昭和型工場運用から一歩抜け出し、データ活用によるものづくり現場の変革を始めてみてはいかがでしょうか。
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