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古い設備と新システムの相性が悪く現場で使えなかった中小企業の失敗

目次
はじめに ~レガシー設備と新システムの“壁”をどう乗り越えるか~
製造業の現場は今、大きな変革期を迎えています。
IoTやAI、DXといったキーワードがあふれ、工場にも最新のIT技術を取り入れる流れが加速しています。
しかし、その一方で多くの中小企業では“古い設備”と“最新システム”の相性が悪く、現場でシステムがうまく活用されていないという課題が山積みです。
特に私のように昭和世代から平成・令和にかけ長く現場を見てきた者にとっては、「システム導入したのに誰も使っていない」「何か起きると結局は元の手作業に戻っている」という光景がデジャヴのように繰り返されているのを痛感します。
本記事では、実際に起きた中小企業の失敗事例をひも解き、「なぜうまくいかなかったのか」「どこに本質的な壁があるのか」「どうすれば成功させられるのか」について、現場目線で深掘りしていきます。
現場でよくある失敗パターン
1. 現場の“アナログ文化”が変われない
多くの中小企業では、設備はもちろん業務の進め方自体も“昭和モード”が色濃く残っています。
エクセルや紙帳票が依然として主流。
ベテラン社員の頭の中にしかないノウハウ。
また、長年同じ設備・同じ手順で生産管理がまわっていたため、
「今さら(新しいシステムは)要らないよ」
「うちのやり方じゃ無理」
といった声が現場から根強く出がちです。
これにより、せっかく最新システムを導入しても、
・帳票は出せたが現場記入内容とリンクできず手入力が消えない
・一部の古い設備データは自動連携できず二重管理が発生
・現場リーダー層が“手書き主義”のため、データ入力が進まない
こうした非効率な状態が逆に業務負担を増やす結果となってしまいます。
2. レガシー設備が足枷になる
中小工場の多くでは、20年〜30年もののNC旋盤や成形機、プレスなど、現役バリバリで稼働する旧型設備がたくさんあります。
これらはシリアル通信、フロッピー保存など今どきのITとは相容れないインターフェースです。
新システム側は「標準でEthernet対応!」とうたっていますが、現場では簡単に繋がらないことが大半です。
高額な“設備IoT化コンバーター”や別途改造費用が発生し、予算オーバーに。
結局、
「じゃあ入力は目視で」
「伝票は現場で印刷して箱に入れておいて」
といったバッドノウハウが温存されがちです。
3. システム導入目的が“不明確”
「他社が入れたから」
「国からDX化をやるよう言われたから」
「見栄えがよさそうだから」
というように、導入の目的がぼんやりしたまま走り出すと大怪我につながります。
システム会社から「最新のトレーサビリティ管理が可能!」「全数データが瞬時に見える化!」と聞かされて、
つい期待値を高めすぎてしまう。
しかし、現場の運用を深く理解せずに導入すると、
“できること”と“やりたいこと”のズレが大きく、使われなくなってしまう悪循環に陥るのです。
なぜ古い設備×新システムは相性が悪いのか?“本質”を考える
1. 技術の“世代ギャップ”
昭和・平成初期の設備は、基本的に“人が器用に運用する”のが前提でした。
小さなトラブルも現場のベテランが五感と経験でチューニングする。
一方、新しいシステムは“オートメーションが前提”です。
「人がミスをするからデータで管理しよう」
「現場の属人性を無くそう」
という哲学に立っています。
この思想のギャップが、両者の根深い相性の悪さにつながっています。
2. “小量多品種”の現実とのズレ
特に中小企業では、大量生産よりも小量多品種生産が中心
です。
新システムは標準的な製品・業務フローを前提に設計されているため、現場特有の“イレギュラー”や“手直し”が頻発する工程にはフィットしません。
結果、現場担当者が無理やりシステムを運用しようとすることで
「結局いちばん大事な現場ノウハウは“紙や口伝え”に残ったまま」
という事態を招きます。
3. 組織内コミュニケーションの壁
現場の声が経営やIT部門に正しく伝わらない。
経営陣は「自分たちも情報システムには疎いのでベンダー主導で」
現場は「使いにくいけど、直してもらえないから自分流にやるしか」
といった“分断”状態が温存されている企業も多いです。
これが、システム浸透の最大の障害です。
現場でよく耳にする“生々しいエピソード”集
1. 「IoTセンサーをつけてもデータがおかしい」
古いプレス機にIoTセンサーを後付けし、稼働率把握を目指したA社。
しかし、センサーの位置決めがイマイチでセルの“微妙な振動”まで異常検知扱いになり、真のダウンタイムと混同してしまいました。
現場はもともとの“作業者の勘”を頼りに稼働管理していたため、「使えない」と早々にあきらめることに。
2. 「入力作業が増えて本末転倒」
帳票電子化・見える化のシステムを導入したB社。
設備が古く自動連携できない工程が多かったため、現場には新システムと従来手書き帳票の“二重入力”が発生。
結果、現場作業者は「これじゃむしろ手間が倍に」とモチベーションダウン。
改善提案が出るどころか「もう前のやり方に戻してくれ」と逆風が吹きました。
3. 「ベテランのノウハウが消えた」
QC工程の履歴管理をすべてデジタル化したC社ですが、
現場ベテランが長年活用してきた点検表の“備考欄メモ”にこそ、工程改善や予防保全につながるヒントが詰まっていました。
IT化で標準化は進みましたが、逆に現場ノウハウの伝承が途絶えてしまい、不良率のみならず士気までも下落してしまった、という事例も耳にしています。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点で考える“本当の課題”
バイヤーが知っておくべき現場のリアル
サプライヤー提案のシステムが「理論上は対応可能」でも、実機・実工程では思わぬ落とし穴があります。
バイヤー(購買担当)としては
・導入前の現場ヒアリング
・既存設備の制約把握
・現場ベテランの声の拾い上げ
を重視すべきです。
また「ベンダー任せ」の姿勢では、システムが現場に根付きません。
現場担当やエンジニア、情報システム部門と一体になって、導入プロセスにコミットすることが重要です。
サプライヤーが意識すべき提案姿勢
・現場で使いこなせるか?
・現場の“裏技・例外”に耐えられるか?
を想像できるかが最大のポイントです。
理想論だけでなく、現場の“カオス”を見通した提案・サポート体制を整えましょう。
また、アナログ管理からいきなり最先端を目指すのでなく
「段階的移行」
「混在期間の丁寧なフォロー」
が重要です。
成功させるために絶対必要な五つの視点
1. “現場ファースト”を徹底する
導入前から現場担当の声を徹底ヒアリングし、「どんな課題が多いのか」「何なら自動化できるか」を炙り出しましょう。
2. “段階的なアナログ-デジタル混在”を許容する
古い設備を一気にアップデートするのは非現実的です。
まずはボトルネック工程の一部から小さくスモールスタートし、現場に“デジタルに触れる習慣”を作るところから始めることです。
3. “現場リーダーの巻き込み”
現場に最も影響を与えるのは現場リーダーや班長の理解と納得です。
彼らが自らシステム利活用の“旗振り役”になれるかどうかが成否を分けます。
4. “トライ&エラー文化”の促進
一度の導入で完璧は目指せません。
小さな失敗を恐れず、「やってみて、ダメなら直す」姿勢と現場との対話を重ねていきましょう。
5. “知恵の見える化”へのこだわり
システム導入と同時に、現場の小さな工夫や現場ノウハウも積極的にデジタル化していきましょう。
単なるデータ入力に終わらず、現場の生きた知恵が蓄積される仕組みが長寿命化の鍵となります。
まとめ ~レガシー×DX時代の答えは“現場起点”にある
製造業の“現場力”は、歴史ある設備や技術者の経験知の上に立脚しています。
それを一足飛びにデジタル化しようとすると、必ずどこかに歪み・軋轢が生まれます。
本当に現場に役立つ新システムを根付かせるには、現場の声に寄り添い、組織横断で粘り強く小さな改善を積み重ねる“人間中心”のアプローチが不可欠です。
「古い設備だからシステム活用は無理」ではありません。
段階的に、アナログとデジタルが共存する“グラデーション”の中で少しずつ最適形を探りましょう。
それが、現場主義を貫く製造業だからこそできる“唯一無二のDX”なのです。
昭和から令和に至る製造業の現場を知る者として、皆様にエールを贈ります。
失敗から学び、現場の知恵と新技術を掛け合わせて、より強くしなやかな“明日のものづくり”を共に目指しましょう。
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