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システム導入後のサポート体制を整えず定着しなかった失敗談

目次
はじめに:システム導入の現場に潜む“見えない盲点”
製造業の現場において、近年システム導入は急速に進んでいます。
調達購買部門での電子調達、生産管理の見える化、品質管理システム、さらには工場の自動化を推進するIoTやAIまで、多種多様なソリューションが導入されるようになりました。
一方で、「せっかく高価なシステムを導入したのに、現場に全く定着せず、使われなくなった」「担当者以外は誰も触らない」といった声を多数聞いたことはありませんか。
高度な技術や最先端のITツールも、“現場で使われなければ絵に描いた餅”です。
特に、昭和時代のアナログな業務フローが根強く残る現場において、この課題はより深刻さを増しています。
本記事では実際に私や周囲が経験した導入失敗談をもとに、なぜシステムが現場に定着しなかったのか、その根本原因と解決アプローチについて現場目線で深堀りしていきます。
これからシステム導入を検討する方、すでに導入済みで活用度向上を目指す方にとって有益な実践知を共有します。
システム導入が失敗する典型例
実話:「現場教育は要らない」という思い込み
ある大手部品メーカーでは、購買プロセスを効率化する調達システムを全社導入しました。
経営サイドは「現場もそのうち慣れるだろう」と考え、最初の初期教育だけで運用を任せました。
しかし、実際に発注現場を巡回してみると、『以前の紙発注書を相変わらず使い続けている』、『システムログイン画面で固まり、上司呼び出しが頻発』…。
結果、システム利用率は目標の2割にも満たず、マニュアル作成やヘルプ対応も現場任せで「新しい仕組みには絶対手を出さない」と現場の反発は高まるばかりでした。
私の知人の工場長も、「システム担当者に相談するより、手書きでFAXした方が早い」という空気感が蔓延したと振り返っています。
「導入=ゴール」になっていないか?
多くの現場では、「新システムを入れること」がプロジェクトの目標になりがちです。
しかし、実際に必要なのは“導入後の現場定着”です。
民主導(トップダウン)でシステムを入れ、説明会を一度やっただけでは、知識も、現場の納得感も、なかなか浸透しません。
現場作業者やバイヤー、管理部門それぞれに理解度の差・仕事観の違いがあり、それぞれの障壁を丁寧に解消していくことが不可欠です。
失敗の根本原因を深掘りする
原因1:サポート体制が「机上の空論」になっている
上層部は、「トラブルや困りごとはIT部門が対応するから大丈夫」と考えがちです。
しかし、実際には
・IT部門と現場の距離が遠い
・現場は些細なことでも相談しづらい、もしくは「自分たちでどうにかしろ」と冷たくあしらわれる
・バグ報告してもたらい回し
といった“温度差”が生じやすいのです。
よくあるのは、「ヘルプデスクは9-17時、緊急時はメールのみ」や、「担当者が多忙で対応が2週間後」など、現場感覚から大きくズレているケースです。
結局は昔ながらの「ベテラン頼み」や「紙帳票回帰」が再燃します。
原因2:現場の声を拾った設計・運用になっていない
システム開発は本社のIT部門やベンダー主導で進みがちです。
「現場の実態とかけ離れている」「必要な機能が足りない・逆に不要な画面ばかり増えた」など、現場が置き去りにされてしまうことが多々あります。
定期的な現場ヒアリングやフィードバックサイクルがなければ、机上の論理だけで仕組みが設計され、「現場の生産性向上」ではなく「現場の負担・ストレス増加」につながります。
原因3:「人は変わらない」ことへの過小評価
システム導入プロジェクトの多くで、「1回しっかり説明すればみんな使いこなせる」と思い込んでしまう傾向があります。
しかし、昭和からのアナログ文化が根付いている現場では、
・新しい仕組みそのものへの警戒心
・ルーチンワークから変わることへの強い抵抗
・入力ミスに対する“責任を問われる”不安感
こうした“心理障壁”は非常に根強いです。
現場の価値観・働き方・不安感を無視したまま、新しいやり方を押しつけても絶対に定着しません。
定着率を劇的に高める“現場密着型サポート体制”
成功の鍵は「現場ピボット」にあり
私が工場長を務めていた際、失敗プロジェクトの経験を通じて辿り着いたのは、「徹底した現場寄り添い型サポート」の重要性です。
実際に効果的だった取り組みの一例を挙げます。
1. “なんでも相談できる現場スーパーユーザー”の配置
IT部門ではなく、現場や調達購買部門の中で新システムに最も詳しい担当者を「スーパーユーザー」として指名します。
この人に、現場の小さな疑問や困りごとをすぐに相談できる体制をつくります。
ポイントは、知識だけでなく
・現場の人柄をよく知っている
・アナログ派との橋渡し役になれる
・マニュアル作りやOJTまで手を貸してくれる
こうした“人間的なおせっかいスキル”があることです。
このスーパーユーザー活用によって、「困った時に誰に聞けばいいか分からず放置」が大幅に減りました。
2. マニュアル・教育ツールの“現場カスタマイズ”
ベンダーが用意するマニュアルは往々にして専門用語だらけです。
現場では「うちはこうやればいい」という手順や、“つまずきポイントQ&A”を写真や動画付きで作成し、「困ったらココを見よ」を徹底しました。
また、月に1度の少人数勉強会を実施。
雑談混じりで本音トーク、失敗談共有も交えて、現場の心理的ハードルを下げる仕掛けも有効でした。
3. KPIは「システム利用率」ではなく「業務変革成功率」で
目標指標を「システム導入した部門数」や「利用率」に据えると、“使ったふりをする現場”が出てきてしまいます。
“新システムによって業務でどんな成果(例:発注ミス半減、確認工数○%削減)を得たか”“現場の負担がどれだけ減ったか”…このように「変化そのもの」を評価指標に設定。
現場からの「やって良かった」という声を引き出すことで、定着が自然に進みました。
令和時代のシステム導入、定着戦略とは?
1. サプライヤー・バイヤー双方の“本音”を収集する
サプライヤー側の皆さんも、「システム導入でバイヤーが何を求めているのか分からない」「新フローに振り回されるだけでは意味がない」といった疑問や懸念を抱きがちです。
導入時には、サプライヤーデモやワークショップなど、双方の率直な意見交換の場を設けることが大切です。
バイヤー目線の取引効率アップだけでなく、サプライヤー側の“本質的な負担感”や“効率化メリット”を徹底的に対話し、真のWin-Winを目指しましょう。
2. “昭和的アナログ業務”をリスペクトし、段階的に刷新
「昔ながらのやり方は全部ダメ」と全否定すれば現場は強く反発します。
むしろ、“アナログ業務の強み”や“現場の知恵”をリスペクトし、そこから段階的にデジタル化ポイントを絞ることが重要です。
現場から見て、
「本当に手間が減った」
「この仕組みなら納得して使える」
という手応えを少しずつ積み上げていくことで、導入定着率は飛躍的に伸びていきます。
3. 現場の“ラテラルシンキング”を引き出すファシリテーション力
従来型のトップダウンではなく、現場のラテラルシンキング(水平思考:枠を超えた発想)を尊重します。
生産ラインのリーダーや調達購買の実務者、現場の若手・ベテラン含め、自由にアイデアを出せる雰囲気を作りましょう。
「他社はこうして成功した」だけでなく、「自分たち現場だからこそできる革新」を引き出すことで、システム定着だけでなく、持続的な業務変革力も鍛えられます。
まとめ:失敗は貴重なシグナル、現場で学び続けよ
「システムは入れたが、現場で使われない」
この失敗は、導入前・導入直後のサポート体制や現場との対話不足を示す、貴重なシグナルです。
本記事で紹介したように、成功へのカギは
・現場に密着したサポート体制の構築
・現場の“納得と自信”を引き出す運用設計
・失敗をオープンに共有し、学び続ける文化醸成
にあります。
「昭和的アナログ文化」を否定するのではなく、その知恵を生かしつつ、現場と一緒に少しずつ変革していく。
バイヤー・サプライヤー問わず、「現場の声を聴き、現場に根ざした仕組みづくり」を徹底することが、真に定着するシステム導入の第一歩です。
皆さんの現場が、失敗の経験も着実に活かしながら、次の新たな地平線を切り拓いていくことを心より願っています。
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