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ヨーグルトのなめらかさを決める発酵温度と撹拌プロファイル

目次
はじめに:ヨーグルトのなめらかさが生まれる瞬間
ヨーグルトは、滑らかな口触りとほのかな酸味が多くの人に愛されている発酵食品です。
市販されているヨーグルトの品質に大きな差が出るポイントの一つが「なめらかさ」にあります。
なめらかさを生み出している要素は多岐にわたりますが、中でも「発酵温度」と「撹拌プロファイル」が商品の個性を決定づける重要なパラメータです。
本記事では、長年の現場経験をもとに工場での実践的な管理ノウハウも交えつつ、なぜ発酵温度と撹拌プロファイルがヨーグルトのなめらかさに影響するのかを深堀りします。
また、アナログな工程が未だに残る昭和的な製造現場の事情や、デジタル化による変化の兆しにも触れ、現代の製造業がどこへ向かうべきかも議論します。
ヨーグルト製造の基本工程と「なめらかさ」の関係
ヨーグルトの製造工程は、原料乳の受入・前処理、殺菌、冷却、乳酸菌接種、発酵、撹拌、冷却、充填といった流れが一般的です。
この中で、なめらかさの決定に関わる重要なポイントが2つあります。
1つ目は発酵工程。
2つ目は発酵終了直後~充填前までの撹拌工程です。
これら2つの工程を現場でどのようにコントロールするかによって、その後の食感、つまり「なめらかさ」は大きく左右されます。
発酵温度が乳酸菌の働きと食感を左右する
発酵温度はなぜ重要か
一般的なヨーグルトには、主にブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)とサーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)が使われます。
これらの菌は、発酵温度によって増殖速度や産生する酸量(酸性度)・香気成分が大きく変わります。
特に40℃~45℃の間で、わずか1℃の差でも最終的なヨーグルトのテクスチャ、酸味、香り、「なめらかさ」に影響を及ぼします。
発酵温度が高すぎると、酸生成が急激に進み、固まった際のタンパク質網目構造が粗くなり、ざらついた舌触りとなりやすいです。
一方、温度が低いと菌の働きが緩やかになり、均一できめ細やかなタンパク質の網目が作られ、なめらかなテクスチャに仕上がります。
多くの工場では、43℃という温度がスタンダードになっていますが、なめらかさにこだわるメーカーでは、さらに細かい温度プロファイル管理(一定温度→徐々に降温など)を行っています。
乳酸発酵のリアルタイム管理の現状と進化
昭和から続くアナログな製造現場では、発酵温度の管理は壁掛け温度計とタイマー、作業者の勘に頼ることも珍しくありません。
「このロットはちょっとゆるいな」「酸味がとがっているな」といった現場のベテランのコメントが毎日の品質会議の話題になります。
しかし、近年はIoT/センサー技術の導入により、リアルタイムで温度・pH・粘度変化がモニタリングできる工場も増えてきました。
たとえば、pHの降下スピードに応じて発酵温度を微調整する自動フィードバック制御や、ML(機械学習)による予測品質管理などが広がっています。
こうしたデジタル化が進めば、なめらかさを定量管理しやすくなり、一貫した高品質製品の提供が可能になります。
一方で、昔ながらの現場作業の知見もうまく組み合わせることで最適な管理に近づくことができるでしょう。
撹拌プロファイルがヨーグルトの口当たりを決める
撹拌のメカニズム
ヨーグルトの食感やなめらかさは、発酵終了後の撹拌工程で大きく左右されます。
発酵が終わった直後、ヨーグルトはやわらかいゲル状態。
このまま静置型ヨーグルト(ソリッド型)として充填し冷却すれば、加熱したときの粗い網目構造がそのまま残り、しっかりとした食感になります。
一方、なめらかさを追求する場合、撹拌機(アジテーター、ホモジナイザーなど)を使用して、ゲルを崩しながら均一に分散させます。
このときの回転数、時間、撹拌の強さ、温度—これらパラメータの組み合わせ「撹拌プロファイル」がなめらかさを決定します。
現場での撹拌管理手法とデジタル化
現場では、撹拌条件を数値化することが従来は難しく、オペレーターの経験値による調整が行われてきました。
「10分回して粘度を測る」「温度が2℃下がったら回転数を上げる」など、作業日誌と品質データの照合が主流です。
最近では、回転数、粘度、トルクのリアルタイムデータを記録できる装置が登場し、AIによる最適プロファイル提案も行える時代になっています。
ここ数年の傾向として、やや強めの高速撹拌による短時間の均質化が主流です。
しかし、過度な高速撹拌はタンパク質粒子の破壊を招き、逆にざらつきやホエー分離(乳清分離)につながるリスクがあり、一線を画すノウハウとして重要視されています。
昭和型アナログ管理の「強み」と「限界」
乳製品製造の現場は、いまだに「カンとコツ」「匠の勘」という言葉が重要視されがちです。
「昔からこうやってきた」「この人のやり方が一番なめらかに仕上がる」という現場主導の管理が、時に大手メーカーの製品個性となってきました。
アナログの強みは、設備不調や乳質の微妙な変化に即座に対応できる運用力でした。
しかし、グローバル市場や低価格競争が進む現代では、安定供給やロス削減、多品種・少量生産への対応など課題が集積しつつあります。
ISO9001やHACCPによる標準化・記録化の圧力のもと、現場の暗黙知を「数値」と「エビデンス」で説明できるデジタル管理がシェアを伸ばしています。
強みと限界を理解し、どちらの良さも活かすハイブリッドな現場運営が今後求められています。
バイヤー・サプライヤーへ:この現場目線をどう活かすか
バイヤーが押さえたい現場管理の要点
ヨーグルトのなめらかさは、発酵温度・撹拌プロファイルという「現場で積み上げたノウハウの塊」です。
バイヤーとしては、単なるスペック提示だけでなく、現場でどのような管理がなされているか、再現性の担保がどこにあるかを理解することが重要です。
・発酵温度・時間プロファイルはどこまで管理されているか
・撹拌条件はどこまで数値化し、どんな品質管理指標を持っているか
・現場のマニュアル化状況とトラブル対応の運用実績
これらのチェックポイントを押さえることで、なめらかさの「安定供給性」「個性」の両立を見抜く判断力を養えます。
サプライヤー目線でバイヤーの気持ちを読む
ヨーグルトのなめらかさにこだわるバイヤーは、現場管理の細部まで突っ込んできます。
単なる「なめらか」「高品質」と表現するだけでなく、工程の数値管理や現場の教育体制、品質異常時の対応履歴までドキュメントで示すことが信頼構築の一歩となります。
また、AIやIoT導入状況だけでなく、「まだアナログな現場力も生きている」こと、「現場でしか出せない良い味」を武器に、バイヤーの品質志向や提案志向に柔軟に応えるプレゼンテーションが求められています。
未来のヨーグルト製造とバリューチェーンの進化
発酵温度・撹拌プロファイルという現場指向のパラメータは、今後もヨーグルトの「なめらかさ」を決定づける本質的な要素です。
今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透により、製造現場のリアルデータが全社/全バリューチェーンで活用される時代へと移行していくでしょう。
AIを活用したフレキシブル生産、pH/粘度/品質データのリアルタイム共有、バイヤーとの品質連携プラットフォーム構築など、ヨーグルトのなめらかさ追求が新たなサプライチェーン競争力にもつながります。
一方で、昭和的現場力や暗黙知もイノベーションの源泉として見直されつつあり、現場の匠とデータサイエンスの融合が製造業の未来を大きくけん引します。
まとめ:技術と現場知の融合で「なめらかさ」は進化する
ヨーグルトのなめらかさは、発酵温度と撹拌プロファイルの現場管理に大きく左右されます。
アナログな現場力とデジタル化によって、この「なめらかさ」に科学的裏付けと再現性を付与できる時代が到来しています。
バイヤー・サプライヤーともに工程の本質に迫り、数字と現場の両輪で信頼に足るものづくりを追求することが、ますます価値を生み出す時代です。
自らの現場で体感した「なめらかさ追求の歩み」を、次代へつなげていきましょう。
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