- お役立ち記事
- 素材選びで失敗しないための繊維の特性と用途別の最適選定法
素材選びで失敗しないための繊維の特性と用途別の最適選定法

目次
はじめに:なぜ素材選びが失敗の原因になるのか
製造業の現場で「当たり前」になっている素材の選定ですが、実はここがプロジェクト全体の成否を大きく左右するポイントです。
とくに繊維材料は種類が多く、特性も用途によって千差万別。
私自身、工場の現場で素材の選定ミスから大きな手戻りや予期せぬ品質トラブルを経験してきました。
この経験から、素材選びに対する適切な知識と視点の重要性を痛感しています。
この記事では、繊維素材の基本特性から現場で使える具体的な選定ポイント、そしてバイヤーやサプライヤーの立場に立った実務的なノウハウまで、実例を交えながら解説します。
繊維素材の基礎知識:知っておくべき5つの主要カテゴリー
繊維と言っても、その種類は大きく分けて5つに分類できます。
それぞれの特徴を把握しておけば、用途に応じた選定がしやすくなります。
天然繊維
天然繊維は、綿(コットン)、麻(リネン・ヘンプ)、羊毛(ウール)、絹(シルク)といった動植物から得られる素材です。
吸湿性や通気性に優れ、肌触りも良いのが特徴ですが、安定供給や価格変動リスクが課題となるケースも少なくありません。
再生繊維
木材パルプなどの天然由来原料を化学的に再生して作られる繊維です。
レーヨンやキュプラなどが代表的です。
光沢やドレープ性が高く、一定の強度もあるためアパレルやインテリアファブリック用途で活躍しますが、水分や摩耗にやや弱い側面もあります。
合成繊維
石油由来の化学原料から作られるポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、アクリルなどがあります。
耐久性や強度、耐薬品性が強みですが静電気・毛玉・環境負荷といった課題も切り離せません。
ハイテク(機能性)繊維
カーボンファイバー、アラミド繊維(ケブラー・ノーメックス)など、高機能・高付加価値素材です。
軽量・高強度・耐熱・難燃など、航空宇宙や電子機器、防護服などの最先端分野で活躍します。
混紡・複合繊維
複数の素材や繊維を組み合わせて、両方または複数の長所を活かすために使われます。
現場ではコストや納期、リサイクル性まで踏まえて使う知恵も必要です。
素材特性の見るべきポイントと現場での落とし穴
繊維素材の選定時には、以下の5つの観点がとりわけ重要です。
1. 強度と耐久性のバランス
素材自体の引張強度や摩耗耐性などはスペックで確認できますが、加工法や縫製、最終使用環境によって大きく性能が変化します。
設計図面通りに仕上げたのに現場で破損するケースは、この見極め不足が原因で起こります。
2. 吸湿性・速乾性・通気性
作業着やインナー、アウトドア用品、スポーツ用途では、この3点のバランスが製品評価に直結します。
また、製品タグ(アテンションラベル)の表示義務など規制も現場では要チェック項目です。
3. 耐熱性・難燃性・耐薬品性
産業資材で用いる繊維は、発火や変形しやすいかどうか、薬品や油で劣化しないかが最重要です。
航空機、自動車、電気製品などでは慎重なテストが欠かせません。
4. 環境対応(サステナビリティ)
近年は、リサイクル素材やバイオ原料繊維への切り替えニーズがますます高まっています。
トレーサビリティ(追跡保証)の有無やSDGsへの対応が、サプライヤーとしての信用度にも直結します。
5. コスト・納期・安定調達
どんなに良い素材でも、安定供給できなければ調達担当者としては悩ましい案件です。
素材市場は原材料相場や社会情勢の影響を受けやすいため、リスク分散や代替先確保が必須となります。
用途別・最適素材選定の実践法
現場では「この繊維がベスト」という唯一解はありません。
下流(お客様)と上流(サプライヤー、素材メーカー)をつなぐバイヤーには、製品用途ごとに最適解を導くラテラル(水平)思考型のアプローチが求められます。
アパレル・ユニフォーム用途
「着心地」「デザイン性」「洗濯耐性」「コスト・納期」が重視されます。
たとえば作業着なら、ポリエステルとコットンの混紡素材(65%ポリ/35%コットンなど)が標準的。
安価かつ摩耗、シワ、速乾、多少の撥水性もあり、ユニフォームのロットごとの色ブレリスクも低減可能です。
産業資材・フィルター用途
化学繊維や特殊繊維の採用が大半ですが、耐薬品性や静電気特性、微細粒子の遮断性能など物理/科学的特性が肝心です。
現場目線では、ほこり・糸くず対策やクリーニングのしやすさ、経年劣化時の機械オペレーション影響まで見据えて選ぶ必要があります。
自動車・航空機用素材
軽量化や耐熱性・難燃性がキーワード。
最近ではバイオベースの複合繊維シートや、3D成形が可能な高機能樹脂繊維も増えています。
厳格なJISやISOなど規格を満たした証明書がセットで必要なので、素材メーカーとの信頼関係も成功要因のひとつです。
医療・衛生・クリーンルーム用途
「清浄性」「低発塵性」「滅菌可否」「低アレルゲン性」が主眼となります。
ポリプロピレン不織布や抗菌・抗ウイルス処理素材など用途進化が早い分野なので、最新動向のチェックも重要です。
バイヤー視点での最適提案とは何か
繊維の選定で現場の調達バイヤーが成果を出すには、いくつかの条件があります。
コストだけに惑わされない「総合提案力」
たとえば、短期的にはコスト削減できても、製造工程の歩留まりや現場の工数増加、品質トラブルによるクレームコストを考えると逆効果になりかねません。
現場(加工・生産・品質管理)とサプライヤーの両方の知見をもとに、中長期視点の「品質・コスト・納期(QCD)」を多角的に評価する癖をつけましょう。
情報収集力と業界ネットワークの活用
大手だけでなく、中小の専門メーカーや海外メーカーの最新動向をキャッチし続けること。
展示会やセミナー、人脈を通じた「現場ならではのリアルな情報」を持っている人は希少価値が高いです。
現場ヒアリングと風通しの良さ
実際に素材を使う現場(工場、生産ライン、物流現場)の声を吸い上げるアンテナが、調達の質を引き上げます。
机上の仕様書だけでなく、実ウエアや加工プロセスでの問題意識を正しく翻訳できる人材は、今後ますます求められます。
サプライヤーから見た「バイヤーの判断基準」
サプライヤー(素材メーカーや卸売業者)の立場では、バイヤーの何を重視しているのかを知ることで受注獲得率が大きく向上します。
決め手は「信頼性」と「安定供給」
契約書や仕様書、各種証明書の信憑性は当然ですが、突発的な不具合やトラブル時の対応力、納期順守力も大きな差別化ポイントです。
また、他社との差別化材料としては「サンプルの柔軟な提供」「小ロット・多品種への柔軟対応」「技術提案型営業」などが奏功します。
デジタル化に追われるアナログ現場
昭和からの慣習が根強く残る繊維業界では、今もFAXや対面営業が主流の現場も多いです。
しかし昨今は、オンライン商談、見積りのデジタル化、PLMやERP連動などの流れが不可避になっています。
ここにいち早く適応できるサプライヤーが、今後生き残る鍵を握るでしょう。
まとめ:素材選びで失敗しないための3ヵ条
1. ターゲット用途ごとに「本当に必要な特性・基準」を現場起点で深掘りする
2. 経験則や過去実績にとらわれず、最新技術や流通、サステナビリティまで視野を広げる
3. バイヤーとサプライヤー双方の視点を持ち、柔軟な協業体制と現場コミュニケーションを怠らない
繊維の特性や素材選びは「知っているだけ」から「実践で活かす」時代へシフトしています。
現場で生き残る方、自分の価値を高めたい方は、今日から一歩踏み出してみましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)