投稿日:2025年10月15日

ティーバッグの破れを防ぐ繊維密度とシール強度の管理

ティーバッグの破れを防ぐ繊維密度とシール強度の管理

はじめに

日本の製造業は、徹底した品質管理と現場改善を重ねて世界的な信頼を築いてきました。
しかし一方で、今もなお昭和のアナログ文化が根強く残り、現場では“当たり前”として受け継がれるノウハウや工夫も多数存在します。
この記事では、製造現場の本質に根ざした目線から「ティーバッグの破れを防ぐ」ための要点――特に、繊維密度とシール強度の管理手法について詳しく解説します。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとしてバイヤー側の考えを知りたい方にとっても、日々の業務や交渉に役立つ現場の実践知をお届けします。

ティーバッグの破れ――現場での実際の課題

ティーバッグが破れる理由とは

消費者からのクレームで多いのが、「ティーバッグが破れてお湯に茶葉が漏れる」という現象です。
これは品質管理部門だけでなく、生産管理者や調達担当者にも密接に関係しています。
一般的に考えられるティーバッグ破れの原因は以下のように分類できます。

・ティーバッグを構成する不織布の繊維密度のばらつき
・ヒートシール(熱融着)部の強度不足、あるいは加熱し過ぎによる劣化
・自動包装機の設定ミスや機械的な摩耗
・物流や販売段階での外部圧力や湿度変化

このように、破れを起こす原因は製造工程全体に広がっています。

昭和から続く“目分量”に頼る危険性

かつては、ティーバッグ不織布を手触りや目視でチェックし、シールも作業員が“コツ”で調整していた時代がありました。
この“肌感覚”は経験に裏打ちされた貴重な知見である一方、数値で管理しなければサプライチェーン全体で品質を担保できません。
今後はアナログなノウハウに加え、科学的・工学的な裏付けで「なぜ破れるのか」を可視化し、バイヤーやサプライヤー間で共通認識を持つことが求められているのです。

繊維密度の最適管理

繊維密度が与える物性への影響

ティーバッグに用いられる不織布は、主にパルプ・ポリエステル・ナイロン・PLA(生分解性樹脂)などから構成されます。
肝となるのは「繊維密度(g/m²)」と「繊維径」、「配向バランス」です。
これらのバランスが悪いと下記のような問題が発生します。

・密度が低いと引張強度不足が生じやすく、シール部の保持力も下がる
・密度が高すぎると茶葉や水分の抽出効率、風味が損なわれたりコストが上がる
・ランダム配向で繊維が絡みすぎている部分と、まばらな部分が生まれると、薄い部分から破れやすくなる

これら変動要因は、用いる原材料の品質や製造条件(温度、湿度、圧力)、設備の老朽化にも密接に関わっています。

繊維密度管理の実践ステップ

1. 原材料ロットごとの繊維密度データ取得
2. 製造前後でテストピースによる厚み・g/m²値の測定
3. 連続ラインの中でオンライン検査機を使用し、異常値をリアルタイム検知
4. 高密度・低密度箇所をサンプリングで重点チェックし、変動傾向も分析

特にサプライヤー側が「繊維密度分布のマップ」や「規格外判定結果」を事前提出すれば、調達・バイヤー側とも実測値で会話ができ、エスカレーション対応も迅速に行えます。

DXやIoT活用による“見える化”

繊維密度検査工程はIoT化との親和性が高く、高速ラインでもカメラやセンサーデータをAIが解析し、“薄すぎゾーン”の自動マーク付与が進みつつあります。
バイヤー側がサプライヤーのデジタル化状況まで踏み込んで評価すれば、将来的な安定供給や品質保証の観点でも段違いのメリットが生まれます。

シール強度の正しい測定と管理

ヒートシールとは何か、現場の最重要ポイント

ティーバッグの縁を固着するヒートシール部はいわゆる“最後の砦”です。
破れや漏れの殆どはここが原因で起こります。
現場でありがちなミスや見逃しポイントには、以下が挙げられます。

・温度・圧力設定が長年“ぶれ続けて”根本的見直しを怠っている
・自動シール機の加圧部分(ベルト・パッド)が摩耗し押しムラが発生
・異なる厚みや材質が混在した場合の補正ができていない
・ラインパラメータ伝達ミスによる設定値のズレ

特に“なんとなくこれで良い”という標準作業書が口頭伝承されている場合は要注意です。

シール強度の管理・測定方法の最新トレンド

シール強度は最小でも「JIS Z 0238 梱包用接着部の引張強度測定方法」などの公的規格を参考にするべきです。
実際には、1cm幅にカットし張力測定器で「新しい状態の最大引裂強度」と「長時間後の強度低下」を測定します。
工程検査では、数値として OK/NG 基準を明確化することが重要です。

現場がより進化していくためには下記がポイントとなります。

1. シール部サンプリング頻度を上げ、故障予兆管理も同時実施
2. センサ・カメラで加圧や温度ムラが生じた場所をリアルタイム描画
3. 問題発生時には「工程・ロット遡り再現」までできるデータ保存体制

こうした取り組みによって、単なる現場の“勘”から“数値管理”へのシフト・安定化が実現できます。

バイヤー・サプライヤー視点で考えるべきこと

安易なコストダウン要請の落とし穴

破れの要因が繊維密度・シール強度にある場合、単なるコスト低減施策が製品寿命やブランド信頼を著しく損なうリスクを孕んでいます。
「安くすれば良い」「強度が多少落ちても仕方ない」といった安直な判断が、結局は全体コストの増加やクレーム対応コストの跳ね返りになりがちです。
バイヤーは「根拠ある値決め」「現場にも納得される妥当性」を見極めること。
サプライヤーは「自主検査や分析体制」の整備が強力な武器になります。

工程改善は現場×設計×調達の三位一体で

工程改善や歩留まり向上は、単に現場任せにせず設計部門もマテリアルの選定やシール部形状を見直し、調達担当はサプライヤーと密に連携して初めて成果を発揮します。
特に昭和的な“分業の壁”をこえて課題共有しやすい社内風土・サプライチェーンづくりが不可欠です。
同時に、ISOに準拠した文書化やエビデンス管理が役立ちます。

まとめ:製造業の今と未来に向けて

製造現場で長年培われたアナログ知も、今やデジタル技術との融合により新たな品質保証・工程改革を迎える時代となっています。
繊維密度やシール強度といった一見地味なテーマも、本質的には「お客様に選ばれ続ける製品づくり」の根幹を担っています。
そのためには、現場・設計・調達・サプライヤーの各立場が、“なぜこの管理が重要か”“どう連携すれば未然防止できるか”を腹落ちさせ、実践し続けることが不可欠です。

今後も変化の激しい製造業界ですが、バイヤーやサプライヤー、現場オペレーターが一丸となって知識と経験を「共有」し、数値化・標準化することで、日本製造業は新たな競争力を発揮できるのです。
この記事が少しでも日々の業務やキャリア開発のヒントになれば幸いです。

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