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ろ過の基礎とトラブルを防ぐ最適なフィルター選定法および応用事例

目次
はじめに
ろ過の技術は、製造業のさまざまなプロセスで不可欠な存在です。
水処理や化学プロセス、食品製造、電子工業、さらには自動車や機械部品の洗浄まで、フィルターの性能が製品品質やライン全体の効率に大きく影響します。
今やスマート工場化、サステナビリティ、IoT導入といった新潮流が叫ばれるいっぽうで、いまだに「昭和時代からの勘と経験」に頼る現場も少なくありません。
本記事では、ろ過の基礎から始めて、ありがちなトラブルの原因や、最適なフィルター選定の実践テクニック、そして現場での応用事例まで、現場目線で深堀りします。
ろ過とは何か ― 製造現場での重要性
ろ過とは、液体や気体中の不純物を物理的または化学的に除去する操作です。
主たる目的は、製品や工程に不要もしくは有害な固形分・粒子・汚染物質の除去にあります。
製造現場におけるろ過の役割
工場では、ろ過は単なる清浄ではなく「工程安定」「不良低減」「設備保護」といった付加価値の要です。
たとえば生産工程で冷却水ろ過が不十分な場合、設備トラブルや品質不良の引き金となります。
また、納入先から求められる「クリーン規格」や「異物ゼロ」に対応するうえでも、精度の高いろ過技術が求められます。
フィルター選定がなぜ重要なのか
どれだけ高性能な装置を導入しても、フィルター選びを誤れば、容易に異物混入やトラブルが発生します。
「コスト削減」と称して安価なフィルターを使うことで、装置の寿命を縮めたり、何度も設備停止に見舞われた現場も多々存在します。
現場目線で言えば、フィルター選定の失敗は「見えない損失」に直結します。
トラブルの再発防止や、現場カイゼンの八割は「ろ過の最適化」に行き着く、と言っても決して過言ではありません。
ろ過の方式とフィルターの種類
ろ過にはいくつかの基本方式がありますが、代表例として以下の3つを紹介します。
メカニカルフィルター(物理的ろ過)
繊維、不織布、メッシュ、微細孔フィルターなど、通常は固形物のみを遮断します。
製氷器や工作機械の切削油ろ過、工場排水などに多用されます。
活性炭フィルター(化学吸着タイプ)
活性炭が気体や液体中の微量有機成分、臭気成分を吸着します。
塗装ブースや食品工場、排水処理設備で多く利用されています。
精密・高性能フィルター(メンブレン・中空糸フィルターなど)
サブミクロン(1μm以下)の微細粒子まで捕捉可能です。
医薬品、電子部品、飲料水の超清浄処理など、高度な環境での使用が主流です。
トラブルを生まないためのフィルター選定法
フィルター選びでは、単にカタログスペックや価格を見て決めてしまいがちですが、現場では以下ポイントを徹底的におさえることが重要です。
1. ろ過対象物の粒径分布を把握する
大方の失敗は「適合しない目開き(フィルターメッシュ)の選定」に由来します。
ろ過したい異物の粒径を把握し、それよりも十分に小さい目開きのフィルターを選びましょう。
粒径分布測定はメーカーや検査機関で依頼でき、数値データ化が重要です。
2. 流体特性(温度、粘度、圧力)を考慮する
高温流体や高粘度流体、正負圧の存在有無など、流体の状態によって推奨フィルター材質・構造が変わります。
温度上昇によるフィルター劣化や崩壊に注意し、素材の耐熱性・耐薬品性を確認してください。
3. 運用条件(流量・圧損許容範囲)を明確化
フィルターの目詰まり=生産停止や圧力損失の増大につながります。
流量変動や圧力制御範囲を事前に設定したうえで、適正なサイズ・構造を選びましょう。
「最大流量」「常用流量」「安全余裕率」などを数値で管理するのが肝心です。
4. フィルター交換頻度と保守性で検討する
素晴らしい精度のフィルターも、交換や洗浄作業が煩雑であれば現場運用コストが膨らみます。
交換容易なカートリッジ式やエレメント式を選ぶことで、現場負担の低減を実現できます。
5. コストと品質のバランスを取る
安価な汎用フィルターで初期投資を抑えても、頻繁な交換や廃棄物コストが跳ね上がるケースもあります。
製品品質・設備寿命・作業負担・ランニングコストの「全体最適」で評価してください。
よくあるろ過トラブルとその学び
現場ではどのようなトラブルが生じやすいのでしょうか。
筆者の経験から、典型的な事例をピックアップします。
目詰まりと圧損増加による生産停止
「定期交換しているのに急に詰まった」「以前より圧力が上がった」などの声は珍しくありません。
原因の多くはろ過対象物の粒径・量の変化、流体組成変化、未然のろ過管理不足です。
目詰まり警報や差圧監視をシステム化し、「目詰まり前のタイミング」で計画交換することが再発防止の鍵です。
フィルター破損による異物混入
オペレーターが誤って逆圧をかけた、流体の急激な温度変動で素材が破損したといった例も見受けます。
物理的強度や耐熱性、耐薬品性など、現場条件に本当に合致した仕様を精査しましょう。
常識の「思い込み」による選定ミス
「長年これを使ってきたから大丈夫」「メーカー推奨だから間違いない」といった安心感が、前提条件変更(材料・流体・工程追加など)で一気に裏目に出る場合があります。
現場の”当たり前”を定期的に見直し、最新のデータや動向と照らし合わせて最適化しましょう。
昭和的現場文化とデジタル化の攻防
日本の製造業の現場では、熟練オペレーターの「勘と経験」に頼るアナログな管理体制がなお根強く残っています。
とはいえ、品質クレームやグローバルサプライチェーン要求の高まりにより、フィルター管理もデジタル化・IoT化の波が押し寄せています。
DX時代のろ過管理
現在、多くのメーカーがろ過工程を IoT センサーで常時監視し、圧損・流量・温度管理をリアルタイムで見える化しています。
差圧値が基準値を超えたら自動でアラーム出力し、交換作業を記録することで、属人的な「勘」から定量的な「データ管理」へと進化しています。
アナログ現場の良さも活かしつつ
一方で、すべてをデジタル(自動監視や AI 解析)に振り切るのではなく、「現場の肌感覚」「異常兆候の察知力」を活かしたアナログ的判断も付加価値です。
現場リーダーが自らラインを歩き、微細な異変や異臭に気付き、設備保護や品質トラブルを最小限に食い止めた事例は数多くあります。
応用事例:現場で生きる最適ろ過の実践
筆者の現場経験から、ろ過の最適化が成果につながった事例をご紹介します。
事例1:クーラント液ろ過の最適化で設備寿命が2倍に
自動車部品工場でクーラント液(切削油)のろ過フィルターを現状の20μmから5μm対応品に更新し、さらに目詰まり監視用センサーを導入しました。
これにより異物混入による工具損傷が激減し、設備オーバーホール周期を2倍以上に延長できました。
装置停止リスクが下がり、生産効率・品質ともに大幅向上しました。
事例2:電子部品工場でPFMEAによる工程強化
生産プロセスFMEA(故障モード影響分析)導入時、ろ過フィルターの定期的な「性能試験+流体粘度変化対応品ヘの切替」によって、クレーム(微小異物混入)の件数がゼロに。
「どこで・どれだけ・何をろ過するか」を細かく見える化し、仕様変更や増産時にもぶれなく最適仕様を選定できる体制ができました。
事例3:スマート工場で自動交換・履歴管理を実現
新設ラインでIoT対応差圧センサー+自動フィルター交換装置を導入。
履歴データと実稼働条件の突合により、不要な頻繁交換がなくなり、ろ過コストを30%削減できました。
また、トラブル発生時にも交換・清掃の記録から即座に原因特定でき、リカバリーが迅速化しています。
バイヤー・サプライヤーの視点 ― フィルター調達の落とし穴
バイヤーであれば、「価格交渉」「コストダウン」「信頼性担保」が最大関心事になります。
サプライヤーは「バイヤーが何を重視し、どう判断するか」を知ることが提案力アップのポイントです。
現場目線のバイヤー戦略
最低価格のみを追い求めるのではなく、「品質保証体制(トレーサビリティ・工程監査)」「交換サポート」「短納期対応力」「環境規制対応」まで総合的に評価しましょう。
実際に現場試験や比較検証を行い“証拠データでの納得”が決め手となります。
サプライヤー目線の提案力向上
できれば最初から「ユーザー要望+現場ヒアリング+現状課題」を正しく掴み、バイヤーと現場双方の“本音”に応えるものを提案できれば強いです。
ユーザー教育や現場研修のサポートも、他社との差異化ポイントになります。
まとめ ― 時代が変わっても「現場力×最適選定」が勝利の法則
ろ過技術は、古くて新しい、製造現場にとって永遠の課題です。
昭和の現場文化もデジタル技術も、どちらも「現場実態に合わせた最適化」の道具に過ぎません。
粒径分析や流体特性評価などの科学的根拠に基づく選定と、現場ならではの微細なサインを察知する感覚の両輪が、真にトラブルを防ぐカギとなるのです。
現場目線で「今、本当に必要なろ過」とは何か、定期的に問い直しつつ、バイヤー・サプライヤーともパートナーシップを高める。
これが、製造業の差別化と発展への第一歩だと確信しています。
ろ過の最適化が、みなさまの現場をもっと強く、もっと安心に進化させる一助となれば幸いです。
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