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陶器皿へのスクリーン印刷で発色を高める焼成プロファイルの設定

目次
陶器皿におけるスクリーン印刷の発色向上とは
陶器皿は、日本の食卓や贈答品として長年親しまれてきました。
スクリーン印刷技術の発展により、多彩なデザインや企業ロゴを皿の表面に表現できるようになっています。
しかし、鮮やかな発色や繊細な色の再現は今なお多くの現場で課題となっており、「デザインは良いが色のノリ・発色がいまひとつ」と嘆くバイヤーや購買担当者の声は後を絶ちません。
この課題をブレイクスルーできるキーワードが「焼成プロファイルの最適化」です。
昭和の時代から続く焼成工程の固定観念を抜け出し、発色にこだわる現場目線で焼成プロファイルを見直すことで、陶器皿の付加価値と競争力を大きく高めることができます。
この記事では、長年製造現場で培ったノウハウと、ラテラルシンキング発想法を交えながら、スクリーン印刷された陶器皿の発色をいかに高めるか——そのための焼成プロファイルの設定や考え方について解説します。
スクリーン印刷と焼成プロファイルの関係性
スクリーン印刷の基本工程
陶器皿へのスクリーン印刷は、以下のようなプロセスが一般的です。
1. 素地成形と一次焼成(素焼き)
2. 表面へのスクリーン印刷
3. 透明釉の施釉
4. 二次焼成(本焼成)で絵付けと釉薬を焼き付け
このうち、発色に最も強く影響を及ぼすのが「本焼成」の工程です。
ここでの焼成温度、昇温スピード、保温時間、冷却プロファイルなどの設定は、色材の発色だけでなく、デザインのムラやにじみ、色の定着性にも直結します。
昭和的な焼成プロファイルの限界
日本の多くの陶器メーカーは「焼成温度は○○℃、保温時間は○時間」など、長年の慣習や過去データをベースとした焼成プロファイルを採用しがちです。
例えば、「1200℃で2時間保温」が標準、といった具合です。
この設定は、素地や釉薬、顔料の違い、窯の気流特性などが大きく異なる現代の製造環境では最適とは言えません。
現場では、「色が薄い」「ロットでバラツキが出る」「印刷パターンがぼやける」など、発色不良のクレームや歩留まり低下に頭を抱えるケースが見られます。
これらは、まさに昭和時代の“使い回しの焼成プロファイル”が原因となっている可能性が高いです。
焼成プロファイル最適化の必要性
現代の顧客は、SNSやWeb上の画像で見たままの鮮やかな発色、微細なパターン、個性ある色再現を求めています。
一つひとつの色やパターンのクオリティがブランドバリューを左右する現代において、焼成プロファイルの見直しは避けて通れません。
最適な焼成プロファイルを「設計」し「管理」することで、意図した発色に近づけることが可能となり、不良品やクレームも激減するのです。
発色を高めるための焼成プロファイル設定
顔料・釉薬と温度プロファイルの関係
陶器皿の発色は以下の要素で決まります。
– 顔料(陶磁器用インク)の種類と配合
– 釉薬の種類と厚み
– 焼成雰囲気(酸化・還元)
– 焼成温度と保温時間
– 昇温・冷却の速度
特にスクリーン印刷用の顔料はメーカーごとに化学組成が異なり、同一温度でも発色や溶融特性が変わります。
例えば、鉄ベースの赤い顔料は、1150〜1180℃で鮮やかになりやすい一方、コバルト系青顔料は1200℃近くないと深みが出にくい場合もあります。
また、厚みや流れやすさを調整するために釉薬も工夫が必要です。
釉薬が厚すぎると色が沈み、薄すぎると顔料が表層化して飛散やにじみが起こります。
発色向上のための焼成プロファイル設計手順
ラテラルシンキングで発想してみましょう。
発色不良やばらつきの本当の理由を掘り下げ、次のプロセスで焼成プロファイルを最適化します。
1. 顔料ベースの最適温度レンジを特定
顔料メーカーのMSDSや焼成テストデータを参照し、色ごとに「最も発色が安定する温度帯」を仮設定します。
2. 実験的に昇温スピードを変える
一般的な焼成では100℃/h〜200℃/h程度ですが、顔料の分解や発色反応はこの昇温プロファイルにも左右されます。
特に、1100℃手前からゆっくり昇温(50〜80℃/h)に切り替えることで、顔料粒子の焼結促進・均一化を図ります。
また、急昇温による釉薬の不均一溶融や泡立ちも抑制可能です。
3. 保温時間の微調整
ピーク温度で短すぎる保温は発色不足、長すぎれば色飛びや表面荒れのリスクがあります。
30分刻みで試験焼きを行い、色見本を作って調整を繰り返しましょう。
4. 冷却工程の工夫
単なる急冷・自然冷却では結晶粒や顔料濃縮がうまくいかないことがあります。
特にセラミックインクのメタリック系や虹色顔料は、冷却カーブをコントロールすることで独特の光沢や色味を引き出せます。
800℃〜500℃の間で「段階的に」冷却し、ガラス転移点での応力緩和や表面層への色集中を図る手法も有効です。
現場での「焼成プロファイル変更」の実践術
昭和・平成の多くの現場では「これまで通り」に終始しがちです。
しかし現場リーダーや工場長クラスが、同一焼成条件で不良が出た場合「ほんとうにこれでベストか?」と自分自身に問いかけることが大切です。
焼成窯のCAR(Computer Assisted Recording:自動温度記録)やバッチオーブンの温調ログを活用し、ロット毎・時期ごとに変動要因を「見える化」しましょう。
焼成AIやIoTも活用して温度分布や棚ごとの差もチェックし、小さな微調整こそが現代の“手間の価値”となります。
また、品質保証部門や調達購買部門とも情報を共有し、発色要求や市場動向をダイレクトにフィードバックする「現場横断型改善」が今後の主流となります。
陶器工場の未来を拓く「焼成プロファイル設計力」
顧客の声を聞き、再提案するバイヤーの存在価値
製造現場だけでなく、商品企画やバイヤーも「発色」にこだわることで新たなビジネス価値が生まれます。
「ただモノを買う」「OEMで流す」だけでなく、「焼成プロファイルや印刷条件を積極的に指定し、メーカーと共同開発する」姿勢が、これからの購買・バイヤー担当者に求められています。
特にインバウンド土産や百貨店向けギフトなど、細やかな色指定やブランドカラーの具現化を求められる案件では、焼成プロファイルを差別化要素として提案するバイヤーの提案力が強い武器となるのです。
サプライヤー側も、バイヤーの意図やニーズを正しく汲み取り、共に色作りに挑むマインドセットが重要です。
ノウハウ蓄積と人材育成が大きな武器に
AIや自動化が進んでも、「焼成プロファイル設計」は現場知見と理化学的理解が融合する領域です。
自社での試験焼成データや色見本、トラブルとその解決履歴を徹底して蓄積し、形式知化することで、属人的だった発色管理も強力なノウハウ資産となります。
若手や現場のパート社員にも、なぜそのプロファイルが良いのか「考え方」を伝える人材育成が、令和時代の工場経営・現場力強化のカギを握ります。
まとめ:焼成プロファイル最適化で「選ばれる陶器皿」へ
陶器皿へのスクリーン印刷において、発色を最大化するための焼成プロファイルの最適化は単なる工程管理を超えた、製品の“個性”や“ブランド価値”を創出する重要な武器になります。
これまで慣例的に使われてきた焼成設定から脱却し、顔料と釉薬、温度変化と時間の化学的相互作用を現場全体で理解・設計し直すこと——ここに現代製造業の新たな地平線が広がっています。
発色不良やバラツキで悩む現場、競合との差別化を求めるバイヤー、新たな価値提案を目指すサプライヤーの皆さま。
ぜひ、焼成プロファイルという視点で一歩踏み込んだ現場改善・商品提案にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
未来の“選ばれる陶器皿”づくりは、焼成プロファイルのイノベーションから始まります。
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