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商品化で味が変わったと言われないための味覚データモニタリング法

目次
はじめに:なぜ「味の変化」が起こるのか?
製造業で数十年を過ごしてきた中で、「試作品の段階では絶賛されたのに、量産品になったら『味が変わった』とクレームが来た」という話を幾度となく耳にしてきました。
実はこれは食品業界だけの話ではなく、化学や医薬品、飲料、嗜好品など“人が官能で評価する”多くのプロダクトで起きる現象です。
「何が違うの?」と悩む現場担当者や管理職の方、あるいは原材料メーカーやバイヤーの立場の方まで、この記事では現場目線で“味の変化”の発生メカニズムと、それを防ぐための味覚データモニタリング法を掘り下げて共有します。
昭和流“ベテランの舌”からの脱却
現場のアナログ慣習が生んだブラインドスポット
昭和から脈々と続く製造業の現場力。
確かにベテランの五感は貴重な資産です。
しかし属人的な評価基準だけに依存すれば、”思い込みバイアス”や“再現性の壁”に直面します。
多品種少量生産や急激な世代交代、働き手の多様化が進む今、商品化における「味のブレ」をいかに客観的に測定・管理できるかは競争力そのものです。
“データドリブンな味覚管理”はこう始まる
味覚の世界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められています。
センサーや官能評価のスコア化など、新しい手法をいかに現場に馴染ませ、持続的な運用とするかがポイントです。
なぜ量産化で味が変わるのか?
原因1:原材料調達・ロットばらつき
調達購買担当者の腕の見せどころとして、原材料の安定調達やコストダウンがあります。
しかし「微妙に違う風味」「新ロットは色が薄い」など、原料の個体差や産地・時期の差分が味に影響することは避けられません。
原因2:生産設備の違い・スケールアップによる物理変化
小規模なラボスケールの加熱、攪拌、冷却などの工程と、量産ラインでの大容量・高速処理では物理現象に差が出ます。
こうした「装置のクセ」やスケール効果こそ、量産初期の“味の変化”の主因です。
原因3:人間のバイアス・主観による評価ブレ
ベテラン社員の「前より薄くなった」「酸味が強い」など、その日の体調や気分、環境で味の感じ方は変わります。
個人差が大きくなれば判断基準が曖昧になり、「開発段階の味と違う」トラブルの火種となるのです。
今こそ現場で採用すべき!味覚データモニタリングの具体的方法
官能評価の定量化とパネル育成
まず“人間の舌”による官能評価をAIのように標準化するには、複数人パネルで味覚を点数化することから始まります。
1. 基準サンプル(マスター品)を開発段階で設定
2. マスターパネル(経験値ある評価者)を選抜
3. 訓練・標準化(トレーニング)により“味のものさし”を合わせる
4. 評価結果をスコア・レーダーチャートで数値化・記録
こうすることで、「ちょっと違う気がする」が「塩味が10点→8点に変化」「香りの強さは変化なし」など、具体的で再現性あるフィードバックになります。
味覚センサーや分析装置の活用
人間の舌だけでは感知できない“微妙な”変化を、近年は「味覚センサー(味認識システム)」や「HPLC分析装置」で補完できます。
味覚センサーは、甘味・塩味・苦味・旨味など複数のセンサーで味成分を電気信号として数値化します。
これを官能評価と組み合わせて紐づければ、 “人+機械”による新しいQC工程が実現します。
原材料ロット管理とトレーサビリティの徹底
調達購買部門と生産現場が密に連携し、「どの原材料ロットが、どの工程・どの商品に使われたか」を常に把握するトレーサビリティ体制は必須です。
万が一、味のクレームや変化の兆候があった時にも即座に原因追究が可能になります。
生産プロセスのIoT可視化で工程ブレを監視
加熱温度、攪拌速度、冷却時間など製造条件の履歴を、IoTセンサーでリアルタイムにモニタリングしましょう。
AIによる“異常検知”も組み込めば、熟練工の「何か違う…?」という第六感をデータ化できます。
熟練者の暗黙知を組織の力に変える技術継承術
“味の再現条件”を見える化・標準化
この商品は「〇〇温度××分、この原材料ロット、この作業者のこの手技で初めて成立する」といった“黄金レシピ”をイメージしやすくマニュアル化します。
これは現場のベテランだけがなんとなくやっていた工程を、数値・フローチャート・動画マニュアルなど多彩な手法で残すということです。
若手パネルの育成サイクルも戦略的に
味覚訓練や定期的なブラインドテストで、若手や新メンバーにも“基準味覚”を体験させます。
世代交代が進む今こそ、再現性ある味の継承体制が問われています。
バイヤー、サプライヤーから見る味覚管理の重要性
バイヤー発注時のポイント
「味が変わらない」「品質が安定している」は、サプライヤー選定の重要指標です。
問屋・卸・メーカーそれぞれで、いつ・どの段階でも同じ味、同じ体験を提供するには「厳格なデータ管理」が大前提となります。
サプライヤー視点での“見える化”提案
「前回と同じレシピで作っています」
「最新の味覚センサー結果と官能評価データを提出します」
こうした“エビデンス”を定期報告し、取引先に安心感を与えることで「価格だけではない“選ばれる理由”」を創出できます。
味覚データモニタリングDXの未来と導入時の落とし穴
コスト、定着までのハードルをどう乗り越えるか
高額な分析装置や新しいITシステムの導入は、現場負担が増えがちです。
そのため初めは
・現場の“いつものやり方”と併用すること
・教育手順や現場リーダーの巻き込み
・「最小限の箱(PoC)」で小さく始めて拡大する
の3つを意識しましょう。
味覚DXは“現場工場の声”なくして根付かない
経営層がDX推進を叫ぶだけでは反発や形骸化しがちです。
現場担当、パネル評価担当、購買、品質管理と連携し、現場の課題や困りごとから出発して小さな成功体験を積むことが、最大の定着策なのです。
まとめ:現場発・データドリブン味覚管理が生み出す競争力
昭和型のベテラン主義を“手放す”ことは、決して伝統や現場力を捨て去ることではありません。
むしろ味覚の世界でこそ、現場の暗黙知とデータを融合させることで「商品化後も絶対に味が変わらない」“共通言語”が形成され、若手も異動者も新規参入のバイヤーも、誰もが「これがウチの味」と即座にわかる競争力となります。
技術継承、人材多様化、世界市場への挑戦など、変革が問われる時代こそ、味覚データモニタリングは製造業の成長ドライバーです。
「味が変わった」と言わせないための仕組みづくりを、現場目線で、そしてデータドリブンで推し進めていきましょう。
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