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検収後の不具合を理由に追加補償を強いられる問題

目次
はじめに
製造業の現場では「検収」が一つの大きな節目となります。
それは単なる取引上の手続きだけでなく、製品の品質や信頼性、ひいては企業間の信頼関係までも左右するイベントです。
しかし、近年多くの現場で問題になっているのが、「検収後に発覚した不具合」を理由に追加補償を求められるケースです。
昭和時代から続くアナログな慣習の影響もあり、この“検収後問題”はバイヤー・サプライヤー双方にとって頭の痛い悩みとなっています。
この記事では、20年以上の現場経験を持つ筆者の視点から、検収後の不具合に起因する追加補償問題の全体像とその根本背景、そして現代に適した解決策を実践的にご提案します。
品質、調達、サプライチェーン管理、そして自動化の視点も交え、「どうすればバイヤーもサプライヤーも納得できる関係性を築き、トラブルを最小限にできるのか?」を徹底解説します。
検収とは何か?業界での意味と慣習
製品引き渡し時の最後の“橋渡し”
検収は、サプライヤー(供給者)が納品した製品や部品について、バイヤー(発注者側)が、契約や仕様書通りに納まっているかを点検・確認し、受領を正式に確定するための手続きです。
基本的には製品一式が正しく納入されたことを確認し、帳簿上も「ここで責任が移転した」こととなります。
検収日が支払サイトの起点となるため、資金繰りの観点でも極めて重大なポイントです。
このタイミングで「検収済みであれば、もうバイヤーからクレームは来ない」というのが本来の建前となります。
日本式“無言の了解”が生む曖昧さ
しかし実際の現場では、しばしば「形式的な検収」にとどまったり、「とりあえず検収書類だけ受け取る」ケースがあるのも事実です。
特に昭和・平成初期のアナログ時代には、実態確認が不十分なまま流れ作業的に検収処理が進められていた企業も多く、本来の「厳正な検収」の意味合いが薄れてしまう慣習が生まれてしまいました。
この曖昧さが、後述する“検収後のクレーム”問題を一層深刻にしています。
検収後に発覚した不具合がもたらす問題
現場で起きる典型的な“追加補償”トラブル
例えば、部品メーカーA社が大手電機メーカーB社に部品を納入したケースを考えてみましょう。
検収書に署名も交わし、品質検査も一応OK。
ところが数週間後、「実際の製品ラインで使ってみたら不具合が発覚した」と連絡が入り、「追加で交換・再製造してほしい、費用も負担して」と強いられる。
A社からすると「本来、検収済みなんだから、後出しの補償には応じかねる」と思いつつ、大手取引先の圧力もあり泣く泣く対応する——こうした場面は決して珍しくありません。
なぜ追加補償が“強いられる”のか?
本来、「検収=引き渡し完了」であれば、その後の不具合については原則としてサプライヤー側の義務ではありません。
ただし、現場にはこんな現実が横たわっています。
– サプライヤーは今後も取引を維持したい(立場が弱い)
– 大手企業が求める“暗黙の保守対応”文化がある
– 取引基本契約や仕様書が曖昧、検収手順も明文化されていない
– 納品時にバイヤー側の確認が形骸化している
こうした事情により「トラブルを事前に防ぐ仕組み化」よりも、「その場しのぎの対応・なあなあ文化」が温存され、サプライヤーの負担だけが増しているのが実情です。
業界動向:なぜこの問題がいまだに根強いのか
デジタル化の遅れとアナログ文化の影響
近年、製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中でも、「検収・納品・品質問題」については旧態依然とした運用が続いている企業が少なくありません。
要因としては、
– 納品物の多様化や一品物案件が多い
– 「現物主義」「紙書類管理」が根付いている
– 品質検査の自動化・IT化が現場レベルまで浸透していない
– ベテラン頼みで属人化が解消できていない
といった業界特有の背景があります。
特に中堅・中小のサプライヤーでは、デジタル検収やIoT連動による履歴管理などの投資余力が乏しく、「人間系の運用」から抜け出せていません。
国際競争・カーボンニュートラル時代の重み
更に国際展開が進む中、欧米のグローバル企業と取引する場合、日本の「なあなあな検収文化」では通用しません。
品質・引渡し責任区分を明確にしなければ、大きな訴訟や取引トラブルにもつながります。
また、リサイクル部品やCO2見える化にも対応するには、検収から逆トレースできる仕組みも不可欠となりつつあります。
“検収後クレーム”を減らす本質的な打ち手
検収・引渡し責任範囲の明文化・デジタル化
最も重要なのは、「どのタイミングで何をもって品質保証が切れるのか」を双方で明文化することです。
製品ごとの検査手順書、受入基準、異常時の通知フローを具体的に決め、取引基本契約・仕様書に文言を盛り込みます。
さらに近年では、電子検収システムの導入が進んでいます。
タブレットやクラウドサービスを使えば、現場写真の添付や時系列のトレーサビリティ記録も容易になり、「後出し」や「言った/言わない」のトラブルは格段に減らせます。
“アフター検収”の合理的ガイドラインづくり
いきなり「検収後は一切責任を持たない」とするのは、現実的ではありません。
一方的な免責ではなく、たとえば
– 重大な設計ミスや隠れた瑕疵(潜在欠陥)についてだけ補償
– 実際の使用条件・ライン投入時には別途立会確認プロセスを設ける
– 追加補償は明文化された一定期間・一定条件下でのみ認める
など、合理的な補償ガイドラインを合意しておくのが効果的です。
サプライヤー側も「泣き寝入り」「丸投げ」ではなく、正当性をもって自社を守る条件整備が重要なのです。
サプライヤー・バイヤー双方の信頼醸成のヒント
現場・現物・現実主義を徹底する
机上・書類だけでなく必ず「現場」で、バイヤーとサプライヤーがともに目で確認し、合意形成する“現物主義”が肝要です。
特に新規製品や一品変種モノは、納品現場での「立ち合い検収」を推奨します。
そうすることで、両者の現場感覚・利用シーンを理解し合い、“想定外の不具合”も事前に洗い出せます。
データと記録による透明性の追求
過去の検収〜納品トラブルは「証拠がない」という一点に尽きます。
工程管理システムやIoT化に投資し、工程履歴・検査記録・不具合発生率をデータで蓄積し、バイヤーと定期的に共有・レビューしましょう。
これにより「根拠のある品質保証」「納得できる責任分担」が可能となります。
まとめ:新たな“工場の地平線”へ
検収後の不具合をめぐる追加補償問題は、単なる金銭や手間の話ではなく、受発注関係の根幹を揺るがすものです。
昭和的な「あうんの呼吸」や「あいまいな運用」では、もはや世界の潮流に太刀打ちできません。
バイヤーには「正当な品質要求と工程確認」、サプライヤーには「明確な検収記録と自社主張力」が求められています。
その上で、両者が現場での“対話”と“検証”を重ねながら、トラブルを未然に防げるシステム・ルール作りが必須なのです。
メーカー経験者として、私が伝えたいのは「アナログだからこそ現場で互いに顔を合わせ、そしてデジタルで記録・透明化する」新しい調達・品質管理の姿です。
これこそが、日本のものづくりがグローバルで信用され続けるための大切な武器になると、強く感じています。
今こそ、現場からつながる知恵と工夫で、“昭和のアナログ”から“令和の信頼ものづくり”へ一歩踏み出しましょう。