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抽出装置用フランジ部材の鍛造と切削の使い分け

目次
はじめに
抽出装置に使用されるフランジ部材は、装置の安全性や信頼性を左右する最も重要な機械要素の一つです。
大手メーカーでも、新規装置の立ち上げや既存設備のリプレイス、またサプライチェーン改革の際に「鍛造が良いのか切削が良いのか」という議論は尽きません。
この記事では、20年以上現場で採用選定とコスト・品質・納期管理を担ってきた立場から、「鍛造と切削、それぞれの特徴や適用ノウハウ」「アナログ体質の現場で実際に根付いている判断基準」「将来的なトレンド」について深掘りしていきます。
バイヤー志望の方、既存サプライヤーの立場から交渉力を磨きたい方、そして現場の改善やコストダウンに関心のある全ての製造業関係者へ向けて、実践的な内容を提供します。
フランジ部材の基礎知識:用途と要求性能
抽出装置用のフランジ部材は、主に配管や機器の接続・密封部で用いられます。
そのため、次のような性能が強く求められます。
1. 機械的強度
高圧や高温下での使用に耐えるため、設計上の強度はもちろん、衝撃や振動にも耐えうる靭性が不可欠です。
2. 加工精度
気密性や着脱性を確保するには、面粗度や寸法精度が厳格に管理される必要があります。
3. 耐食性・耐摩耗性
抽出媒体や洗浄液、温度変化に曝される場面が多く、環境に応じた材料選定や表面処理も重要です。
鍛造と切削、それぞれの特徴
フランジ部材の主な製造方法として「鍛造」と「切削」が挙げられます。
それぞれの工法には、明確な長所と短所が存在し、案件ごとに使い分けられています。
鍛造の特徴
鍛造とは、金属に熱や圧力を加えて目的の形状を成形する工法です。
素形材(丸棒やビレット)を加熱して金型で成形するケースが一般的です。
- 長所:
・結晶粒が微細化し、内部欠陥が少ない高強度・高靭性の素材が得られる
・大ロットの場合は材料ロスが少なく、コストパフォーマンスが高い
・密度が高く、割れや変形に強い - 短所:
・初期金型費用や設備投資が大きい
・少量多品種では割高となる
・複雑形状には不向き、寸法精度に限界
切削の特徴
切削は、棒や板などから目的の寸法に削っていく工法です。
NC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械を用います。
- 長所:
・小ロット・多品種に柔軟に対応可能
・複雑形状、特殊寸法も高精度で実現可能
・初期投資が小さい - 短所:
・材料ロス(歩留まり)が大きい
・鍛造品に比べて強度が劣るケースあり
・加工時間が長くなりやすい
どう使い分ける?アナログ体質な現場のリアルな判断基準
現場の意思決定には、「コスト」「品質」「納期」「設計変更対応力」などが総合的に評価されます。
昭和的なアナログ思考が抜けきらない現場の中では、しばしば以下のような“実情”が根付いています。
大量生産なら鍛造、小ロット・試作なら切削
たとえばOEMやサプライヤー選定の場面では、年間数百個以上の量産品は、金型費用を吸収できる鍛造が好まれます。
一方、モデルチェンジやテスト設備で頻繁に仕様変更が出る小ロット品については、切削が圧倒的です。
強度・靭性が必須なら鍛造
高圧循環ラインや爆発リスクのある化学領域などでは、従来から鍛造フランジが標準となっています。
「昔からこのやり方」というカルチャーが、実際に事故対応や長寿命実績に裏打ちされており、現場責任者が決定権を持ちやすいです。
短納期、“今すぐ必要”なら切削
設備トラブルや修理用のスポット発注では、どうしても切削に頼るケースが多いです。
在庫棒材から快速対応でき、設計変更にも柔軟です。
バイヤー視点の最新トレンド:総合コスト&サプライチェーン管理
昔は単純な「単価比較」で決まることが多かったのですが、脱昭和的アプローチが急速に進んでいます。
今後押さえたいポイントは次の通りです。
1. TCO(Total Cost of Ownership)の考え方
調達対象の部品単価だけでなく、保管コスト、リードタイム、メンテナンス性、不良発生時のロスコストまでを全体で算出します。
たとえば鍛造の初期金型費が圧倒的に高い場合、「5年総需要で割る」「他機種にも共用できるよう設計変更」など、新たな発想が生まれます。
2. ESG経営とグリーンなサプライチェーン
素材の利用効率や、環境負荷低減(CO2排出、廃棄物削減)が選定理由に加わっています。
材料ロスの少ない鍛造が、サステナビリティの観点からも再評価され始めています。
また、追加工を少なくする設計との連携もポイントです。
3. デジタルデータ&リバースエンジニアリング
古いフランジ図面しかなく現物合わせばかりだった職場も、3DカメラやCADデータ統合により切削品・鍛造品双方への見積もりが迅速化。
また、AIによる成形シミュレーションや異常検知も普及しつつあります。
使い分けに迷ったら?設計・調達・現場が共創する新アプローチ
古い体質の製造現場では「設計だけが鍛造に固執」「現場だけが切削を主張」など、部門ごとの縦割りがトラブルの元となりがちです。
新技術の導入や工程自動化DXを進める今こそ、次のような取り組みが推奨されます。
・設計段階からのVE/VAワークショップ
調達担当、製造現場、品質保証など多部門でVE(Value Engineering)会議を持ち、材料や工法をゼロベースで見直します。
「こだわり品質の本当の理由は何か」「機能維持でコストダウンできる設計変更は可能か」など、現場力とデータを武器に議論を行うのです。
・サプライヤーとのパートナーシップ強化
単なる「発注先」ではなく、VA提案のよき共同研究相手としてサプライヤーを巻き込みます。
鍛造メーカーの工法革新や、切削加工会社の自動段取・IoT導入事例などを共有することで、より付加価値の高い最適調達を志向しましょう。
まとめ:ラテラルシンキングで「新たな地平線」を切り拓く
昭和から受け継ぐ鍛造・切削の知恵と、現代的なTCO発想、サスティナブルなものづくりへのシフト。
これらを掛け合わせて考えることが、いま製造業調達・生産管理の最大の武器です。
「この部品は本当に鍛造がベストか?」「切削と鍛造を組み合わせたハイブリッド化も検討できないか?」と、従来の枠を超えたラテラルシンキングが差別化に繋がります。
フランジ部材一つをとっても、その調達戦略・生産戦略は、会社の競争力を左右します。
現場発の挑戦と知恵を持ち寄り、次世代の抽出装置用フランジ部材づくりを一緒に切り拓いていきましょう。
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