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行動観察エスノグラフィー活用で顧客インサイトを掴む分析フレームワーク

目次
はじめに~なぜ今、行動観察エスノグラフィーなのか
製造業の現場、特に調達購買や生産・品質管理に携わる皆さんは、「顧客が本当に求めているものは何か?」という問いに対し、悩み続けているのではないでしょうか。
昭和から続くアナログな作法が今なお色濃く残る製造現場ですが、グローバル化・デジタル化の波は容赦なく押し寄せています。
バイヤーやサプライヤーとして成長するために、従来型の「ヒアリング」や「アンケート」では掴みきれない顧客インサイトの発掘が、いま最優先課題となりました。
この状況を打破する手法として注目されているのが「行動観察エスノグラフィー(Ethnography)」です。
本記事では、私の20年以上の工場現場経験を元に、エスノグラフィーの実践的な活用方法と、製造現場のリアルな“現場目線”での分析フレームワークをご紹介します。
エスノグラフィーとは何か?製造現場での意味と重要性
行動観察エスノグラフィーの本質
エスノグラフィーは、本来文化人類学で発展したフィールドワーク手法の一つです。
対象となる組織や人々の「ふるまい」「考え方」「暗黙知」を、現場観察によって深く理解する方法論です。
特に製造業においては、
「なぜこのような手順を踏んでしまうのか?」
「現場が手順通りに動かない理由は何か?」
「サプライヤーや顧客が本音ではどんな価値観を持っているのか?」
こうした疑問への“気づき”の宝庫となります。
アンケートやヒアリングとの違い
多くの場合、調達購買や営業、企画の現場では「お客様へのヒアリング」や「アンケート調査」が主流です。
しかし、これらは“聞かれたことにしか答えない”傾向が強く、顧客本人も意識していない本当の課題や欲求を拾い上げることは困難です。
一方のエスノグラフィーは観察者が当事者の行動や現場でのやりとりを客観的に観察・記録することで、表面化していない「深層インサイト」を炙り出せます。
製造業におけるエスノグラフィーの活用シナリオ
調達購買部門での使い方
調達購買部門では「社内外のバイヤー」「サプライヤーとの交渉」「新規部材の評価」など、多彩なコミュニケーションが発生します。
たとえば、サプライヤーとのやりとりの現場に立ち会い、(意図的に交渉のプロセスや資料準備の方法、評価基準の定め方まで)観察します。
担当者が「なぜそう判断したのか」「なぜそのプロセスを踏むのか」を問い直すことで、表層的なコストダウン要求だけでなく、品質やサポート体制、心理的な安心感など“見えざるニーズ”を発掘できるのです。
生産・品質管理現場における現場観察
例えば、ある組立工程で「手順書通りに作業が流れない」「歩留まりが安定しない」といった課題がある場合、現場作業者を直接観察します。
作業者が何に迷い、どこで止まり、どんな“ルール外”の知恵が現れるかを記録していきます。
また、不具合発生時の初動対応や問題解決アプローチを観察することで、品質管理の盲点や、間接部門と現場オペレーター間の意識ギャップ、意図しないコミュニケーションロスが見えてきます。
営業・企画での応用
新製品・新規取引先開拓現場で、開始初期から営業担当とバイヤー、実際のエンドユーザーの接点を観察します。
製品やサービスに対する初期反応、カタログを見てのリアクション、質問の仕方、納入後にどんな課題が顕在化するのかを俯瞰して見ることで、潜在的な不満点や競合との差別化ポイントが自ずと見えてきます。
エスノグラフィー活用の実践フレームワーク
①現場観察の目的と観察ポイントの明確化
まず、「何を知りたいのか」を明確にします。
例えば「なぜ歩留まりが安定しないのか」「バイヤーがどの瞬間に決定に迷うのか」「調達先の選定基準の本質は何か」など、問いを深堀します。
加えて、観察する「人(個人/チーム)」「時間帯」「工程」「意思決定の現場」など、具体的な観察ポイントを洗い出します。
②記録・可視化手法の選定
現場観察の際は、メモ・写真・動画・スケッチなど、複数の記録媒体を活用しましょう。
作業者やバイヤーの手元、表情、どう書類が回覧されているか、どんな打ち合わせがされているかまで詳細に記録します。
工場現場では“声”ではなく“手”や“目線”に本音が現れます。
録音やスマートグラスなど、業界動向に応じたITツールも柔軟に併用してください。
③無意識下の行動や会話の分析
記録をもとに、「なぜそう動いたのか」をチームでディスカッションします。
ポイントは「その理由は?」を5回繰り返す“なぜなぜ分析”の応用です。
エスノグラフィーは横断的な視点での深堀りが命です。
作業者や担当者本人にインタビューを追加で行い、「自分でも気づいていなかった無意識の判断」「その場の価値観・暗黙知」を浮き彫りにしましょう。
④インサイト抽出と仮説設計
観察から得たデータに基づき、「なぜ企業はこの基準を重視するのか」「なぜ現場はこの検査を避けるのか」など、潜在的なインサイトを抽出します。
これを基に仮説を立て、PDCAを回します。
たとえば、「決定権者が常に不在のため、調達プロセスが遅延している→意思決定権限を現場に委譲すべき」など、行動変容につなげる施策設計を行います。
業界あるある“昭和的アナログ体質”との付き合い方
製造業には、根強いアナログ文化が存在します。
「現場は古いやり方を変えたがらない」「どれだけITを入れても紙の帳票文化が消えない」「上司やベテランの一言がすべて」。
エスノグラフィーの本領は、こうした“裏ルール”や“根拠なき習慣”の本質をあぶり出し、なぜそうなっているかの真因を考える点にあります。
これまでの成功体験や仕組みは無闇に否定せず、「なぜ変わらないのか」「変えるために超えるべき壁は何か」の再定義が重要です。
現場での観察を通じて、変えてよいもの/残すべきルールの線引きを、関係者全員で話し合い、徐々に文化をアップデートしていきましょう。
バイヤー・サプライヤー双方に役立つエスノグラフィー視点
バイヤーが“サプライヤーの現場”を観察する意味
先進企業のバイヤーは、単なる見積もり比較やコスト評価を超え、サプライヤー工場や現場の作業風景を観察しています。
「なぜこの工程で遅延するのか」「本当の品質維持のポイントはどこにあるのか」など、現場そのものにビジネスチャンスやパートナーシップ強化のヒントが眠っています。
サプライヤー側から“バイヤーの価値観”を掴む
一方でサプライヤー側も、単なるスペック訴求や値下げ提案一辺倒ではなく、「なぜその評価基準を重視しているのか」「バイヤーが抱える現場課題や、リスクの本質は何か」を、日頃の会話や商談準備の中でエスノグラフィー的に観察・分析する視点を持てば、他社にはない関係構築・課題解決型提案へと進化できます。
まとめ:行動観察エスノグラフィーで製造業インサイト革命を
昭和から連なる製造業のアナログ文化と現場主義は、時代錯誤として批判されがちですが、実はそこに“日本の現場力”という強みも併存しています。
エスノグラフィーという分析フレームワークをうまく現場の観察や意思決定に織り込むことで、従来は見逃されていた「顧客の本音」「現場が抱える無意識下の課題」「進化すべき現場文化」がクリアに立ち現れます。
バイヤーであれ、サプライヤーであれ、製造業に携わるすべての方が新しい地平線を開拓し、これまでにない提案や改善を実現できる――。
そんな“現場インサイト革命”の第一歩として、行動観察エスノグラフィーをぜひ今日から実践してみてください。
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