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価格目標を機能価値で説明する価値基準交渉のフレーミング

目次
はじめに ~製造業における価格交渉の本質を見極める~
製造業で調達や購買を担当している方、あるいはサプライヤーの立場でバイヤーと対峙する方にとって、「価格交渉」は日々避けて通れないテーマです。
特に日本の製造現場では、いまだに「原価+α」や「前年踏襲」といった昭和的なアナログ交渉の色が根強く残っているのが現状です。
しかし現代は、単純な値引き要求や慣例に頼った交渉だけでは、もはや競争力を維持できません。
本記事では、現場の実体験をふまえつつ「機能価値」に基づいた価格目標の説明法、すなわち価値基準での交渉フレーミングについて徹底解説します。
購買担当者、バイヤー志望者、そしてサプライヤーの皆さん、ぜひ新たな価値の軸を提案し、最大の成果を出せるヒントを掴んでください。
なぜ「機能価値」で交渉するのか? ~現場から読み解く背景~
古き良き価格交渉の限界
日本の製造業は、かつて世界をリードする「ものづくり」を支えてきました。
ですが、多くの現場では「前年同月比マイナス●%」や「コスト削減ノルマ」といった、コストダウン一辺倒の交渉スタイルが長らく踏襲されてきました。
これではサプライヤー側も防戦一方になり、本来必要な改善投資や新たな価値創出に消極的になってしまいます。
また、調達側も「何がバリューなのか」を体系的に説明できず、結果、根拠なき値引き圧力で両者共倒れになるという悪循環が発生してきました。
調達購買の役割シフト
現在、調達購買部門には「仕入コスト低減」だけでなく
「商品・サービスの競争力向上」
「サプライチェーン全体最適」
といった、より上流に踏み込んだ役割が求められています。
単純に価格だけを追う時代は終わりました。
なぜその製品やサービスが必要なのか。
どんな付加価値を顧客や自社、社会にもたらすのか。
それを明確に示し、相手と共通の価値観・評価軸で折衝を重ねていくことが、これからの交渉力の本質です。
価値基準交渉とは~「機能価値」による説明と分類~
値決めの新定義は「機能価値」から始まる
「機能価値(Functional Value)」とは、製品やサービスが持つ本来の機能・仕様・性能、それがもたらすメリットや結果を数字や成果物で客観的に計れるものを指します。
例えば、
・精度1μm単位の切削部品は、組立品の性能保証につながる
・省エネ機能付き制御盤は、電気代削減を実現
・自動化対応治具は、工数削減や人的ミス回避に直結
このように、「どのような機能が、どんなメリット・価値を生むか」を明確にすることで、単なる部品価格の話から一歩踏み込んだ交渉が可能になるのです。
3つの価値基準で「見極め」と「説得」を進める
価値基準交渉のカギは、大きく3つの観点で相手と対話することです。
1. 機能価値(Functional Value)
製品・サービス自体の技術的実力や仕様。
これを活かしたことで、どんなパフォーマンスUPが期待できるのか。
2. 経済価値(Economic Value)
機能価値がどれほどコストメリットや収益向上に寄与するかを可視化します。
(例)手作業5工程を自動化することで、年間800時間の省人化、600万円の人件費削減
3. 情緒価値(Emotional Value/信頼・安心感)
導入ノウハウ、アフターフォロー体制、柔軟なカスタム対応など。
長期的な安定供給やパートナーとしての安心感を強調します。
これらを組み合わせ、「なぜこの金額が適正か」を論理的かつ共感をもって説明することで、価格目標の根拠と互酬的満足を実現します。
現場目線で実践する「機能価値」説明の極意
データと現場例で納得感を生む
たとえば、ある自動化ロボットの1セットが1000万円だとします。
従来の交渉であれば「高すぎる、もっと安くしてくれ」となるかもしれません。
ここで、「このロボットの導入で、現場でどれだけ工数や不良率が下がり、どれほど生産性や品質が向上するか」を、実際の現場データやシミュレーションを使って根拠を示します。
・工程ごとに自動化した場合の削減人員数
・加工精度ばらつきの改善度合い
・ライン全体での生産効率アップ率
こうしたデータを購入側と共有し、「この機能価値があるから、1000万円は決して高すぎない」ことを数値で示すのです。
ステークホルダーごとに説明をカスタマイズ
経営層には「ROI(投資対効果)」を。
現場管理者には「作業手間・安全性向上」など実質的メリットを。
保全部門には「メンテナンス・ダウンタイム短縮」など、部門ごとに響くキーワードを使い分けることも大切です。
また、サプライヤー側は、バイヤーが現場改善や経営層への説明責任を果たせるよう、説得材料となるデータや成功事例を添えることが、交渉の成功率を高めるポイントです。
「価値基準」交渉で未来を切り拓く5つの実践ポイント
1. アナログの「慣れ」に安住せず、必ずデータ・数値で証明する
「去年より安く、他社もできる」は使わない。必ず「現場データ」や「性能チャート」を用意し、科学的根拠を持たせる習慣を徹底しましょう。
2. 「比較」の軸を自社都合からお客さま・社会の価値へ
「会社の仕組み上この値段」といった根拠は説得力が低いです。
「この機能(例:無人化機能)のおかげで、毎年●●万円以上の不良コストが削減できる」など、相手視点の経済価値を明文化します。
3. 市場動向や業界標準も併せて説明材料に
「この機能は他社標準にない独自性です」
「業界の平均コストと比較してこのボリュームでどこまで下がるか」
といった、第三者的な裏付けも意識しましょう。
4. この交渉・提案が「持続可能性(サステナビリティ)」を支援できるかも訴求
環境規制対応、省エネ、循環型社会といった本質的なバリューも将来を見据えて提示します。
5. 説明責任をサポートし、「共創」の姿勢で臨む
激しいコストダウン合戦に疲弊せず、「お互いの価値創出」によるウィン=ウィンの関係構築が今後ますます重視されます。
サプライヤー視点:「バイヤーの価値観」を先回りして理解する
ハードルの高い価格要求やコストダウン案件に直面したとき、サプライヤー側としてやるべきことは、単なる反論や値決めにこだわることではありません。
バイヤーが本当に解決したい現場課題は何か?
経営データ上どんな成果(KPIなど)を追っているのか?
そのゴールにどう自社の製品・技術が最も貢献できるのか?
こうした背景まで遡り、データやシミュレーション、他社事例を駆使して持ち込むことで、「単価」だけに終始しない、次代の取引パートナーの地位を築くことができます。
バイヤー志望者へのアドバイス ~「価値基準」で戦うための視点~
バイヤーを目指す方には、価格交渉能力だけでなく
・現場工程、モノづくりの実情
・製品の性能や仕様を見極める力
・導入後のKPI(利益率改善・QCD向上など)を定量的に評価する力
これらの「評価基準」を必ず身に付けることをおすすめします。
卓越したバイヤーは「値段を下げる人」ではなく、「お客様や自社に最も大きな価値をもたらす最適な選択肢を見抜く人」です。
まとめ ~「価値基準交渉」で拓く未来の現場~
価格目標を単なる「値引き合戦」から、「機能価値」に基づく価値基準型交渉へとシフトさせること。
これこそが、これからの製造業現場でサプライヤー・バイヤー双方が生き抜く唯一の道筋と言えるでしょう。
昭和に根ざした慣習から一歩踏み出し、「いかに価値を見える化し、論理的に説明できるか」という視点を、ぜひ現場で実践してください。
本記事が、あなた自身そして所属企業の新たな成長軌道の一助となることを願っています。
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