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受発注業務が担当者依存で取引ミスが頻発する危機

目次
はじめに:製造業における受発注業務の「属人化」問題
製造業の現場では、調達購買や生産管理といった受発注業務が日常的に行われています。
しかし、これらの業務は長年同じ担当者が担うことが多く、「担当者依存」の状態に陥りやすいという構造的な課題を抱えています。
その結果、ヒューマンエラーや情報伝達ミスが発生しやすく、時には納期遅延や品質トラブル、サプライチェーンの寸断など重大なリスクに発展します。
特に、昭和の時代から続く「紙・FAX・電話」中心のアナログな現場では、この属人化問題が解消されにくく、業界全体の課題となっているのが現状です。
本記事では、現場経験を踏まえた実践的な視点で、受発注業務の属人化によるリスクや、失敗が発生する具体例、その背景と業界特有の動向、さらに抜本的な業務改革に向けたヒントについて深堀りしていきます。
バイヤーを目指す方や、サプライヤーがバイヤーの舞台裏を知るためにも有益な内容です。
受発注業務とは何か――その基礎知識
受発注業務の主な流れ
受発注とは一般的に、企業が必要な材料や部品をサプライヤーから仕入れる「発注業務」と、取引先から注文・依頼を受ける「受注業務」の双方を指します。
製造業の場合、発注担当者が取引先(サプライヤー)に見積依頼(RFQ)や発注書(PO)を送り、納期・仕様・価格などを調整します。
その情報は社内の生産管理や現場工程と連動しながら運用されるため、「ミスが許されない」現場となります。
「属人化」が起きやすい理由
属人化とは、特定の担当者だけが業務の手順、暗黙知、社内外のルールを知っており、他の人がフォローできない状態を指します。
例えば、
– 取引先ごとに異なるルールや癖を「担当者が経験則のみ」で管理
– 紙やメールでのやりとり履歴が個人管理で横展開されない
– ジョブローテーションや引継ぎが不十分
といった状態が常態化しています。
特にベテラン社員が「自分だけのやり方」に頼っている場合、この傾向は強まります。
担当者依存が招く受発注トラブルの実例
現実に起こるリスクシナリオ
受発注業務の属人化が引き金となり、実際に工場や調達現場で起きている典型的なトラブルを紹介します。
・A社調達担当の急な休職によるトラブル
長年特定のサプライヤーを担当していたAさんが急な体調不良で休職。
代わりの担当者はどこに何が保管されているかも分からず、仕様変更された製品の注文の正しい手順や連絡先、取次ぎルートが把握できない。
そのせいで発注が遅れ、結果的に納期遅延が発生、現場ストップという結末に。
・B社で起きたダブル発注ミス
メールとFAX両方で発注をかけていたB社。
サプライヤー側は「2件の注文」と誤認し、部品を2倍納品。
半年後、棚卸しで多額の在庫過剰が発覚し、不良在庫処分で莫大な損失に。
・C社の納期回答ミス
サプライヤーへの納期の確認を電話口で行い、メモ止まりで社内システムに入力しなかったC社。
会議で正しい納期を報告できず、生産計画全体が混乱し、余裕を見て発注していた「かもしれない」部分がどこにも裏付けできずクレームに発展。
アナログ業界特有の「昭和由来の落とし穴」
日本の製造業は堅実でミスを起こしにくい文化である一方、「慣習第一主義」や「紙頼み」の伝統が今も根強く残っています。
パソコンやクラウド管理ツールの導入が遅れている現場ほど、情報更新が遅れ、一元管理が破綻しやすいのです。
業界動向:なぜ属人化はなくならないのか?
人手不足・高齢化という構造問題
近年、製造業全体が深刻な人手不足や高齢化の波にさらされています。
本来なら新しいデジタル技術で業務標準化や自動化を進めたい一方、現場には長年培ったノウハウと信頼関係があり、「新しい仕組み」を導入することで一時的に混乱するリスクを経営層は避けがちです。
とりわけ小規模~中堅企業では、育成期間の長期化や引継ぎ負荷の重さが、改革を阻む最大の壁となっています。
リスク分散の意識の不在
お客様や現場からの「急な注文変更」などに柔軟に対応できる属人業務は重宝されますが、長期的にはリスクを肥大化させます。
どんなに有能な担当者でも、ヒューマンエラーは避けられません。
そのため、「一人が休んでも回る業務」へとシフトする意識転換が企業風土として必要です。
サプライヤー側から見たバイヤーの「属人化」
サプライヤーの視点から見ると、発注担当者の異動や退職で「急にルールが変わる」「細かな伝達が漏れる」など、納品ミスや価格齟齬の発端になりやすいです。
一方的に「バイヤーからの指示だから」と全面的に従うのではなく、自社でもリスク低減に積極的に協力する姿勢が求められます。
属人化を防ぐための現場実践アプローチ
マニュアル化・業務標準化の徹底
担当者が「自分だけのやり方」に頼らないための第一歩は、業務フローとノウハウの見える化です。
・発注~納品までの全てのやり取り・例外対応を手順化
・独自略語や口頭伝承を排除し、誰が見ても分かる形に
・標準フォーマット(伝票・チェックリスト)を整備
単なる文書化だけでなく、「この資料を見れば新人でもできる」レベルに落とし込むことが重要です。
デジタル活用とシステム標準化
基幹業務システム(ERP)やクラウド型BtoB受発注ツール、RPA(自動化ロボット)などの導入・活用で、業務を仕組みでコントロールする体制づくりも不可欠です。
具体的には、
・受注~発注~納品の情報をクラウド上で一元管理
・メールやFAXも自動で取り込むスキャン・OCR技術の導入
・発注書や契約書、納品書の電子化
などの取り組みがあります。
導入にはコストやハードルもありますが、現場の負担や属人化リスクに対する「保険」として十分な価値があります。
引継ぎ・再教育の仕組み化
人事異動や突然の退職があっても回る仕組みづくりは、生産性向上・BCP(事業継続計画)にも直結します。
・定期的な業務棚卸しとOJT・OFFJTの組み合わせ
・多能工化(人材の複線化)で誰でも代替できる体制
・第三者監査による「抜け漏れ・属人化チェック」
これらを継続的に回せるよう、経営トップ層が強いリーダーシップで全社運動として推進する必要があります。
サプライヤー目線で考える「属人化バイヤー」とWin-Winな関係構築
属人化に起因するバイヤー側のトラブルは、サプライヤーにも多大な損失をもたらします。
サプライヤーとしても、
・発注内容の誤認防止(注文書の再確認と相違点の即時指摘)
・独自管理台帳の作成(いつ誰が何を頼んだかログ化)
・異動や担当変更時の「支援オファー」(ルール説明、リマインド)
など、自衛策や積極的コミュニケーションが不可欠です。
また、サプライヤー自身も「もしうちの担当がいなくなったら?」という自社の業務見直しを推進する姿勢が、共存共栄のパートナーシップ構築に繋がります。
業界の未来を切り開くために:ラテラルシンキングで乗り越える
属人化問題は、「長年やってきたから大丈夫」「うちは人で回すから」といった過去の延長線では解決できません。
ラテラルシンキング(水平思考)を使い、「一つの正解・王道」に拘らず、多様な視点で解決策を模索する必要があります。
例えば、
・他業種(IT、物流、海外メーカー)のベストプラクティス事例を積極的に真似る
・異なる部門同士で「業務交換」や「業務シェア」を実施する
・第三者(顧客、取引先)にも評価・監査してもらい、気付いたポイントを即反映する
など、「現場の常識を疑う」ことから新しい発想が生まれます。
まとめ:今こそ製造業バイヤー・サプライヤーに求められる改革意識
受発注業務の担当者依存・属人化は、業界全体で根深く染み付いた課題です。
そのまま放置すると、重大な取引ミスやリスクに直結します。
これからの製造業バイヤーやサプライヤーに求められるのは、
– 業務を「仕組み」で回す標準化への意識改革
– デジタルやテクノロジーへの適応力強化
– 組織と現場、サプライヤーが一体となったPDCAサイクル
です。
変化が激しい時代こそ、「人に頼る」から「仕組みに頼る」へ。
現場の知見と新しい視点を組み合わせながら、今こそ業界の未来を切り拓いていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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