投稿日:2025年7月22日

FSWの基礎接合条件と適合材料異種材料の接合鉄鋼チタン合金への適用材料組織と接合諸特性の関係と改善

FSW(摩擦攪拌接合)の基礎接合条件とは

FSW(Friction Stir Welding:摩擦攪拌接合)は、近年急速に多様な産業現場で導入例が増えている、とても画期的な固相接合技術です。

溶接というと「母材を高温で溶かしてつなぐ」というイメージを持つ方が多いですが、FSWは材料を溶かさず、摩擦熱によって材料を軟化させ、専用のプローブ(工具)で撹拌しながら強固に接合させる点が特徴です。

このような特徴から、アルミ合金のような溶接が苦手とされる材料でもひずみが少なく、高品質な接合が期待できる点が大きなメリットです。

FSWの基礎接合条件として大切なポイントを整理します。

プローブ形状と挿入パラメータ

FSWにおける成功のカギは、プローブ(又はツール)形状や材料に合わせた最適な設計です。

特に接合したい板厚に対してプローブの長さ、エッジ形状、ショルダー径、軸の回転数と送り速度などパラメータの組み合わせが品質に大きく影響します。

例えば、アルミ合金の薄板の場合は短めのプローブと繊細な送り、厚物材や鉄鋼材の場合は強いトルクや先端部の特殊加工が有効です。

加圧力と熱管理

接合中の加圧力は、母材同士をしっかり密着させ材料の流動を確保するために重要な指標となります。

FSWは過度な熱が発生しないからこそ歪みも少ないですが、逆に熱不足では材料が十分軟化せず欠陥を生みやすいので、適切な回転数・送り量・ショルダー径による発熱と、冷却バランスへの配慮が必要です。

われわれ現場でも、テストピースでの条件最適化を何度も繰り返し、キレイな接合組織や目標強度が出るまでトライ&エラーを重ねます。

FSWで接合可能な適合材料と異種材料接合

FSWは材料同士を「溶融」せずに接合する技術なので、実は従来溶接が苦手だった組み合わせや、全く異なる材料同士――いわゆる「異種材接合」でも優位性を発揮します。

アルミニウム合金

アルミ合金(特に6000番台、7000番台)はFSWの開発初期から最も多く採用されています。

航空宇宙、自動車、鉄道車両、電子機器の筐体など、かなり広範な分野で定番化しています。

アルミ溶接の際に問題になる亀裂やブローホールがほとんど出ない点は設計・調達現場でも信頼性につながっています。

マグネシウム・銅・ステンレス・高強度鋼

マグネシウムや銅、さらにはステンレスや高張力鋼板への応用も今や現実的です。

FSWなら個々の材料の特性(融点、熱伝導率、酸化被膜など)をきちんと見極めて条件設定すれば、従来困難だった高品質接合が可能となります。

異種材料の接合技術

異種材料――例えばアルミと銅のような組み合わせは、そのまま従来の溶接だと「金属間化合物(IMC)」が発生し、接合部が脆くなります。

FSWでは溶融が起こらないため、こうした問題を低減しやすく、接合強度と機能性の両立という点で従来工法より抜きん出たパフォーマンスが得られます。

異種材料の接合はEV分野などで「軽量・高強度・多機能」を同時に満たすパーツ開発のキーテクノロジーとして注目されています。

FSWの鉄鋼・チタン合金への適用

「FSWはアルミのためだけ」と思われがちですが、近年は鉄鋼、さらにはチタン合金の領域にも応用が急速に広がっています。

特に日本の製造業にとって、鉄鋼は依然として最重要材料のひとつ。ここにFSWが本格的に定着する意義は計り知れません。

鉄鋼での課題とその解決

鉄鋼FSWで最大の課題は「高い融点」と「強靭な材料抵抗」への対応です。

プローブやショルダーには耐熱・耐摩耗性の高いタングステン系合金やセラミックスコーティングを用い、かつ高トルク仕様の装置をセットアップします。

さらに、接合部付近への予熱や後工程での焼入れ・焼戻し工程を最適化し、母材強度の低下やマイクロクラックを抑制します。

チタン合金へのFSW応用

チタン合金の接合は「軽くて強い」航空機・衛星・医療機器分野の設計者・バイヤーが強く望んでいたテーマです。

従来アーク溶接やEBW(電子ビーム溶接)では内部欠陥や強度低下の問題が多発しましたが、FSWを活用することで母材近傍の組織改変や高強度の安定供給が目指せるようになりました。

現場でのポイントは、プローブ材質の最適化、窒化や酸化防止のためのアトモスフィアコントロール技術の確立、さらに接合後の表面処理など総合的な工程設計にあります。

材料組織と接合諸特性の関係

FSWの品質や評価を語るうえで欠かせないのが、材料組織(ミクロ組織)と物理的特性(強度・靭性など)の深い関係性です。

FSWは「固相変態」を伴って接合が行われるため、材料組織の変化が接合部全体の物性変化に直結します。

攪拌ゾーンと熱影響域

FSWではプローブが通過した中心部を「攪拌ゾーン(SZ)」、その周辺を「熱機械影響部(TMAZ)」、さらに外側を「熱影響部(HAZ)」と区分します。

最も組織変化が大きいのはSZ部。微細な再結晶粒が形成され、母材に比べクリープ強度や靭性が向上する場合もあれば、条件次第では組織粗大化による強度低下が起きるリスクも存在します。

このため最適な熱履歴/工具条件を実現することが現場の改善活動でも重要なテーマになります。

接合強度と靭性のバランス

FSW接合部の強度は通常、母材の80〜100%にも達し得ますが、そのバランスは使う材料や条件設定次第で大きく変わります。

例えばアルミ同士なら「完全なミキシング」と「健全な再結晶組織」の形成が、高強度を得るうえで必須です。

異種材の場合はIMC層の最小化がポイントです。例えばアルミ―銅接合でFSW条件を最適化した例では、IMCの厚みを10μm以下に抑えられ、通常溶接法に比べ遥かに高靭性な接合部品質が得られます。

このノウハウはサプライヤーもバイヤーも知っておくべき業界キーテクノロジーの一つです。

組織改善と品質トラブル対策

FSWの「材料組織改善」技術は、設計・購買・製造すべての領域にとって競争力の源泉になります。

たとえばアルミ合金でFSW直後に組織中の析出物コントロールを狙った熱処理や、異種金属FSWで界面反応抑制の中間層処理など、微細組織とMacro接合強度の両立を現場目線で追求します。

また一度不具合が起きても、「金属組織観察」「SEM解析」「EBSDによる結晶方位の評価」などを駆使し、工程フィードバックを迅速に行う体制が不可欠です。

昭和的な「現場勘」も大切ですが、今後はFA(ファクトリーオートメーション)やAI・IoT技術、さらにはリモートでの接合部品質モニタリングなど、デジタルとアナログの融合、つまり一歩先のものづくり現場力が問われます。

まとめ〜購買・サプライヤー・現場視点のFSW戦略

FSW技術は「組織」「材料」「条件設定」「工程管理」すべてを有機的に統合しないと真価を発揮しません。

工場現場での導入検討段階でも、バイヤーは「コスト」「装置投資」「将来的な異種材活用」を念頭に、サプライヤーの技術開発状況や強み・弱みを客観的に評価する目が重要です。

サプライヤー側も「汎用材料だけでなく、次世代EV用新合金」「鉄鋼やチタンFSWノウハウ」など、競争優位性を発信し続けることが差別化になるでしょう。

従来の昭和的な“人頼み・勘頼み”の枠を超え、現場力・工程設計力・材料工学・DX(デジタルトランスフォーメーション)を掛け合わせる姿勢が、これからの製造業と購買・サプライヤー双方の成長につながるのです。

FSW技術の発展は、日本のものづくり現場に新たな地平線をもたらしています。今こそ現場の「知恵」と「挑戦」で、未踏の接合領域へ前進しましょう。

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