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熱設計に活かすための流れ伝熱熱流体解析の基礎と実習を交えた解析のポイント最適化シミュレーション

目次
はじめに:製造業現場で高まる熱設計の重要性
近年、製造業界では製品の高性能化や小型化が加速し、それに伴い熱設計の重要性がますます高まっています。
過度な発熱や熱の滞留は、製品の信頼性低下、寿命の短縮、不具合発生の原因となります。
また、省エネルギーやカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環としても、効率的な熱設計は欠かせない要素となっています。
これまで昭和由来の“勘と経験”が重視されるアナログ的なアプローチが主流でしたが、今日では流れ伝熱、熱流体解析といった理論とシミュレーション技術が、製造現場の熱設計に革新をもたらしています。
本記事では、熱設計における流れ伝熱の基礎から、最新の熱流体解析、そして実際の現場で役に立つ解析テクニックとポイント最適化のためのシミュレーション活用法まで幅広く解説します。
バイヤーやサプライヤーの皆さん、製造業で働く現場の方すべてに、明日から使える実践的なヒントを届けます。
流れ伝熱・熱流体解析とは何か?基礎から現場の視点で解説
そもそも流れ伝熱とは?
流れ伝熱(対流伝熱)は、流体(空気や水、油など)の流れによって熱が物体間を移動する現象を指します。
たとえば、冷却ファンによる空気の流れで電子機器を冷やす、成形機の内部配管で冷却水を流して温度制御をするなど、あらゆる現場で使われています。
熱移動のメカニズムは【伝導】【対流】【放射】の三つに大別されますが、工業用途ではこの中でも「流れ=対流」と「熱移動=伝熱」の複合領域が非常に重要です。
熱流体解析とは?
熱流体解析は、コンピュータ上で流れや熱の伝達を仮想的に再現する技術です。
代表的な方法が「CFD(Computational Fluid Dynamics=数値流体力学)」で、流体の速度・温度分布や圧力損失、渦の発生などを詳細にシミュレーションできます。
従来は「現場でシミュレーションしても机上の空論」と敬遠されることもありましたが、現在は高速サーバーや専用ソフトウェアの普及、設計初期段階からの導入が進み、実践的な意思決定ツールとして浸透しつつあります。
なぜ今、流れ伝熱・熱流体解析が注目されるのか?
理由は大きく3つあります。
– 製品の高密度化・小型化により、従来の設計では温度上昇が問題になりやすくなった
– 電子機器や射出成形部品など、熱トラブルが品質・信頼性不良の主因となることが増えた
– 短納期・多品種小ロット化の中で、“手戻り設計”を防ぎたいという現場からの声が高まってきた
生産工程や購買調達の現場においても、サプライヤーが納入する設備・機器・部材で起きる熱問題の予知と対策が取引成功の大きな鍵を握っています。
現場実務で押さえておくべき流れ伝熱解析の基礎ポイント
現場要件からシミュレーション条件を決める
熱流体解析を実施する前に最も重要なのは、「現場の要求条件(利用環境)」を正確に反映させることです。
製造現場には、一般的な解析ソフトのテンプレート通りにはいかない複雑な要素が多く存在します。
たとえば…
– 作業現場特有の気流や粉塵・湿度の影響
– 製品の設置角度や、周囲装置からの熱干渉
– 製造ライン運転時の使用サイクルや変動負荷
これら“現場ならではのノイズ”をどれだけ正確にシミュレーション条件に織り込めるかが、現実と合致した再現性の高い解析結果の秘訣です。
代表的な入力パラメータ:5つの要
1. 流体の種類と物性値(空気・水・油等、粘度・比熱・密度など)
2. 流速および流量
3. 入熱源側の温度条件・発熱量
4. 対象物体の材質・熱伝導率
5. 周辺境界条件(断熱・熱放射などの有無)
例えば射出成形金型の冷却では、「冷却水の入り口・出口温度」「流路径」「金型材質による伝導」「外気との熱交換」すべてが絡み合って総合的な冷却性能につながります。
ひとつを疎かにすると精度の高い最適化解析はできません。
解析精度と計算コストの天秤
解析ソフトは細かく設定すればするほど精密になりますが、その分膨大な計算時間・コストを要します。
現場で役立つ“最適解”を得るためには、事前に
– 解析で本当に知りたいことは何か?
– 仮定や簡略化できる点はどこか?
– 結果データから現場でどうアクションするのか?
といった「目的志向」でモデルを設計し、“過剰解析”を避けましょう。
製造現場では100点満点より「実用的な80点」を最速で導き出す解析アプローチが求められます。
実習的ステップ:流れ伝熱解析のやり方と現場ノウハウ
1.現場ヒアリングと課題抽出
まず現場やバイヤー、サプライヤーからのヒアリングで「どこで、どんな熱問題が起きているか」「何をどう改善したいか」を抽出します。
たとえば
– 装置内部で特定部品だけ異常に高温になる
– 製品表面仕上げに熱ムラが出る
– 気流偏りで換気/排気が上手くいかない
こうした現象を“見える化”し、解析課題として整理します。
2.関連データ計測・現地検証
解析精度向上のカギは「現場実測値」。
ライン流量計や温度センサー、赤外線カメラなどを用いて数値を実測します。
古い工場や設備でもデータロガーや後付センサーの活用で、簡易データ取得が可能です。
ここで得られた現場生データは、“現実に寄せた解析モデル”を組む上で極めて重要です。
3.CADモデル・構造データの読み込み
既存3Dデータ(CAD・STEPファイルなど)や手書きスケッチから、解析範囲の3Dモデルを作成・読み込みます。
配管やダクトの内径、ヒートシンクのフィン形状など細部形状が熱流れに大きく影響するため、現場図面と寸法整合は入念に行うことが成功の秘訣です。
4.境界条件とメッシュ分割
次に、「流入/流出」「温度条件」「断熱/放熱」などの設定を行い、計算空間を細かなブロック(メッシュ)に分割します。
精度重視なら細かいメッシュ、計算負荷重視なら粗めのメッシュに設定します。
現場実務では、重要な箇所(ネックとなる熱溜まり・狭隘部)では高精度メッシュを、他は粗くして全体コストと精度のバランスを取る方式が一般的です。
5.解析実行と現場的結果解釈
シミュレーション実行後は、温度分布図・流速ベクトル・等温線など可視化データを現場の目線で評価します。
単純な数値比較だけでなく「なぜそのような流れが生まれるのか?」、「本来の狙い通り温度が制御できているか?」を問い直します。
現実現場では、解析結果を安易に鵜呑みにせず、時に現場経験からの“違和感”や“仮説”も反映して再解析を行うスタイルが最も信頼性を高めます。
ポイント最適化と熱設計のためのシミュレーション活用術
1.ボトルネック部分の重点解析
工場ラインや製造装置の熱設計最適化では、「最も熱が溜まりやすく、問題発生リスクが高いポイント」の解析を最優先することが重要です。
– モータや電源ユニット、電子筐体の狭隘部
– 高温部品と樹脂部品が近接する箇所
– 大型設備の冷却水路分岐点や隅角部
全体平均温度より、局所異常部(ホットスポット)の検出が、現場での生産性・歩留まり向上にひときわ響きます。
2.実測→解析→実測のPDCAサイクルを回す
理論解析=万能ではありません。解析で得た改善案を現場に実装し、再度実測。
その結果を次の解析条件に反映させる「PDCAサイクル」が、熱設計の最適化を最短距離で導きます。
このサイクルを短期間で高頻度に回すためには、現場と解析担当の密な連携・コミュニケーションが鍵となります。
3.サプライヤーとの共同解析・提案力向上
顧客(バイヤー)にとって「熱問題の見える化と解決案提示」は極めて高い付加価値です。
サプライヤーとして自社製品/部品提案時に「流れ伝熱解析データ付き」で最適化案をセットで提出すれば、取引先の工場現場でも納得の導入が進み、後戻り・手戻りも大幅に削減できます。
購買担当も「熱設計対応力」を重視して調達先を選定する時代です。“熱流体解析ができるサプライヤー”は今後ますます有利なポジションを獲得できます。
まとめ:現場の課題を解決する熱設計力を明日から実践しよう
– 流れ伝熱・熱流体解析は、勘や経験だけではカバーしきれない現場の熱問題をデジタル技術で可視化し、根本から改善できる最強ツール
– 解析精度を高めるポイントは、現場要件を正確に反映した条件設定と、現地実測データとの連携
– ボトルネック(ホットスポット)の発見と重点対策、解析-実測-再解析のPDCAスパイラルが実践力を高めるカギ
– サプライヤーとして解析力を磨くと、バイヤーからの信頼度も圧倒的に向上する
最先端の数値解析技術も、現場の課題解決に落とし込めてこそ価値が生まれます。
昭和的アナログ文化の工場にも着実にデジタルの波が押し寄せています。
明日からぜひ、あなたの現場で“解析を軸にした熱設計改革”を実践してください。
今まで見えなかった世界がきっと開けるはずです。
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