投稿日:2025年1月11日

アコースティックエミッション(AE)法の基礎と回転機械設備診断への活用技術

アコースティックエミッション(AE)法とは

アコースティックエミッション(AE)法は、材料や構造体の内部で発生する弾性波を検知し、それを分析して異常の発見や評価を行う非破壊検査技術です。
材料が変形したり亀裂が進行する際に発生する微細な「音」を捉えることで、材料の状態を把握することが可能になります。
この技術は1940年代から研究されてきましたが、近年の計測技術や信号処理技術の進歩により、実用的な監視手法として広く応用されています。

AE法の基本原理

弾性波の発生と検出

AE法の基本原理は、材料の内部で発生するエネルギーの解放に伴う微細な弾性波を検出することです。
亀裂の進展や塑性変形、摩擦などにより、内部応力が急激に変化する際に弾性波が発生します。
これをAEセンサを用いて高感度で検出し、信号として可視化、解析します。

信号解析と評価

得られた信号は、時系列で変化する波形データとして収集されます。
このデータを基に、波形の振幅や周波数、持続時間といった特徴を解析することで、異常の大きさや発生位置、種類などを推定します。
解析結果を基に、材料や構造体の健全性を評価することができます。

回転機械設備診断へのAE法の活用

回転機械の特徴と診断の必要性

回転機械は、モーター、ポンプ、タービンなど、回転運動を行うことでエネルギーを伝達・変換する機械群を指します。
これらの機械は非常に多くの産業分野で使用されており、常に高い信頼性が求められます。
しかし、回転機械は摩耗や摩擦、振動、過負荷などにより劣化や故障が発生しやすい構造を持っています。
そのため、故障を未然に防ぐための予防保全活動が重要です。

AE法を活用した回転機械の検査方法

AE法は、回転機械特有の検査課題に特に適しています。
例えば、ベアリングやギア内部での摩耗や亀裂を高感度に検出できます。
長期間稼働する機械の異常を早期に察知するための継続的なモニタリングを可能にします。

具体的には、AEセンサを機械の重要部分に配置し、連続的に運転状態を監視します。
AE信号の異常が検出された場合、信号の解析により異常の原因や位置を特定し、必要に応じて修理・交換などの対応を取ります。

事例と成果

ある製造業の大型ポンプ設備において、通常の振動診断では検出が難しい微小なベアリングの摩耗を、AE法により早期に発見することに成功しました。
AE法による異常検知により、計画的なメンテナンスを実施し、大規模な故障を未然に防止することで、結果的に運転停止による大幅な損失を回避することができました。

AE法の導入によるメリットと課題

メリット

AE法の利用には以下のようなメリットがあります。

– **非破壊検査**: AE法は非破壊検査手法であるため、設備を傷つけることなく内部状態を評価できます。
– **リアルタイム監視**: 継続的にモニタリングを行うことで、異常をリアルタイムに検知できます。
– **早期発見**: 他の検査手法よりも早期に異常を検出できる場合があり、計画的な保全活動に役立ちます。

課題

一方で、AE法の利用には以下の課題もあります。

– **検出精度の向上**: 微細な異常信号をノイズから分離するための高度な信号処理が求められます。
– **データ解析**: 大量のデータを迅速かつ正確に解析するための専門知識や解析ソフトウェアが必要です。
– **運用コスト**: 専門的な機器や解析技術の導入には一定のコストがかかることもあり、費用対効果の分析が求められます。

まとめ

アコースティックエミッション(AE)法は、材料や構造体の内部で発生する微細な弾性波を検知し、その信号を解析することで、状態を評価する非破壊検査技術です。
特に回転機械の診断においては、摩耗や亀裂の早期発見に大きな効果を発揮します。
導入には専門的な技術やコストが求められるものの、予防保全や安全運用の観点から高い価値を持つ技術として注目されています。

AE法は製造業の現場でのリスク管理における一助として、さらなる普及と技術革新が期待されています。技術者やバイヤーがこの手法について理解を深め、高度な保全活動に適用することで、より安全で効率的な製造プロセスの実現に寄与できるでしょう。

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