- お役立ち記事
- 板鍛造冷鍛順送プレス工法基礎と工法転換トラブル対策実践ガイド
板鍛造冷鍛順送プレス工法基礎と工法転換トラブル対策実践ガイド

目次
はじめに:昭和から令和への現場進化と“板鍛造冷鍛順送プレス”という選択
製造業において、コスト競争力と品質・効率を両立させることは永遠のテーマです。
特に大量生産体制が求められる自動車部品・機械部品業界では、「プレス工法の選択」が製品の付加価値と企業の競争力を大きく左右します。
かつて昭和時代を支えた単発プレスや荒鍛造+機械加工中心のプロセスは、今なお現場で根強く残っています。
一方、海外生産やEV向けなど新たな高精度・高効率化への潮流が加速するなか、「板鍛造冷鍛順送プレス工法」への転換が注目されています。
この記事では、ベテラン現場経験者の視点から、板鍛造および冷鍛順送プレス工法の基礎、工法転換時のトラブル事例、そして具体的な実践対策を徹底解説します。
調達・バイヤー、サプライヤー、現場生産技術担当、品質管理部門まで、現場のリアルな悩みを共有しつつ“日本のものづくり”をアップデートするヒントをお伝えします。
板鍛造冷鍛順送プレス工法の基礎知識
板鍛造とは?:板材+鍛造の進化形
板鍛造(Sheet Forming Forging)は、金属板を使い金型で成形する「プレス加工」に、金属組織の強化や精度向上を目的とした「鍛造プロセス」の要素を組み合わせたハイブリッド工法です。
もともとプレス加工は「せん断」「曲げ」「絞り」などの形状付与を強みとし、一方で鍛造は材料組織密度の向上や高強度部品用途で用いられてきました。
板鍛造はこれら両者の長所を活かし、「高強度+複雑形状」を短サイクル&高精度で実現しやすいのが特長です。
冷間(冷鍛)、つまり室温~200℃程度の非加熱状態で成形するため、寸法精度・面粗さも高く維持できます。
冷鍛順送プレスのメリット
冷鍛順送プレスとは「順送プレス」すなわちコイルや板材料を金型内で複数工程連続加工(ピッチ送り)する仕組みに、冷間鍛造効果(高密度化・高強度化)を組み合わせた手法です。
主なメリットは以下です。
– 生産サイクルが非常に速く、量産体制に適する
– 高張力鋼板やアルミなど難加工材にも適用可
– ばらつきが少なく、設備稼働率も高い
– コストダウン(材料歩留まり・加工コスト・後工程削減)
こうした特性から、自動車の足回り・シート部品・安全デバイス・電装系部品担当の方には特に導入効果が大きい工法です。
なぜ“工法転換”が進まない?昭和型アナログ現場の壁
現場に根付く「従来工法信仰」
筆者も工場長や現場リーダー経験から痛感しますが、日本の製造現場には「昔からのやり方への強いこだわり」が根強く存在します。
– 過去の安定実績があるため新工法が受け入れにくい
– 治工具や金型ノウハウが“属人化”してしまっている
– 設備・金型投資へのリスク回避心理
– 新工法の材料特性・品質保証体制への不安
このような心理的・制度的障壁が、いまだ大容量プレスや機械加工への依存から脱却を難しくしています。
「工法転換によるトラブル」現場目線のリアル
板鍛造や冷鍛順送プレスの導入現場では、以下のようなトラブルも実際に多発しています。
– 図面や強度スペックが現状金型とマッチしない
– バリの発生や破断など不良率が増える
– 金型寿命・保全コストが想定より上昇
– プレス油や潤滑剤のトラブルで生産停止
– 部品の外観基準(美観)へのクレーム
これらは設計・製造・品質保証部門の“工法知識の壁”が原因となっているケースが多いのです。
工法転換時のトラブル現象とその真因
1. 金型起因のトラブル
冷鍛や板鍛造では、加工硬化や高応力が金型に高負荷をもたらします。
そのため「金型スカラップ欠損」「パンチの早期摩耗」「打痕・摩耗不良」などが散発しやすくなります。
金型材質・熱処理・表面コーティング・メンテ周期設計が従来工法より厳しくなり、これを軽視するとトラブル連鎖を招きます。
2. 専用潤滑油やサビ対策の盲点
冷鍛工法では、低温で高負荷加工を行うため潤滑剤の品質が安定生産のカギになります。
間違ったプレス油や潤滑剤を使うと「金型寿命低下」「金属表面の軋み」や「生産スピード低下」につながります。
また、冷間鍛造部品は素地が露出しやすく、サビ発生が想定以上に加速する場合も多々あります。
3. 実は“下工程・協力工場”で起きるトラブル
量産ラインでの不良低減やコスト削減だけに目が行きがちですが、実際は下工程や外注先での搬送時変形・二次加工トラブル、検査基準ずれによるバイヤーとのすれ違いも発生します。
こうした「工程間ギャップ」こそ、工法転換時の隠れ大トラブルポイントです。
トラブル未然防止!板鍛造冷鍛順送プレス工法の実践対策ガイド
1. 品質の“見える化”と設計共創のすすめ
新工法の導入時は、設計・生産・調達・検査の各部門が“ひな型工程表”を作り、加工変化点や寸法変動点を事前共有することがカギです。
– 金型設計段階からサプライヤー設計者と“早期共創”
– サンプル部品の段階的テスト(小ロット・量産シミュレーション)
– ばらつきや工法固有のリスクをグラフやデータで“可視化”
このプロセスを経ることで、「設計←→生産←→品質」の壁をなくし、新工法の安定定着が容易になります。
2. サプライヤーとの信頼構築と継続的教育
現場独自ノウハウが属人化している企業は、サプライヤー選定(ランク付け)や現地監査を実施し、知見を共有します。
可能な限り“生産立ち上げキーマン”を招き入れた全体連絡会議を設け、現場の生産技術・金型設計担当同士の直接的コミュニケーションを支援しましょう。
また、設計~調達~品質現場の三位一体のスキル教育(OJT、品質道場)は、昭和型層にも“変化の必然性”を伝える場となります。
3. 金型イニシャル費・コスト低減の提案術
冷鍛順送プレス工法の欠点は、初期金型費用が高くつく点です。
ここを打破するには、
– 簡易金型による早期試作
– 段数や複合型化のバリエーション事例集を作る(工法合理性の提案)
– 歩留まり改善・材料費削減の実データをバイヤー・経営層に提示
このように“投資対効果”を示すことで購買部門・経営層からの理解も得やすくなります。
4. ITデータ化+現場の“カイゼンマインド”融合
最新のスマートファクトリーやIoT設備導入が唱えられる中でも、現場で働くオペレーターや保全担当の“現物・現場・現実”へのこだわりこそが真の安定生産の基礎となります。
– あらゆる金型・加工条件データの定量的記録
– 現場の不具合履歴共有(異常値アラートシステム)
– 「デジタル+カイゼン」の融合教育
これが、日本のものづくりの地平線を切り拓く最前線です。
まとめ:業界動向の中心に“現場からのラテラルイノベーション”を
板鍛造冷鍛順送プレスは、材料費・労務費・後工程削減の三拍子そろった革新的な量産工法です。
昭和から令和にかけて、現場と設計・品質・調達部門の壁をラテラル思考で超え、全員一丸で「見える化」「リスク先読み」「カイゼン提案」「信頼関係の再構築」を実践すれば、工法転換による不良やトラブルも必ず克服できます。
つまり、「新たな工法転換=コストダウンだけでなく、現場イノベーションの成功法則」と言えるのです。
この知見が、製造業で現場に悩み課題を抱える全ての方、次世代のバイヤー・サプライヤーの皆さんのヒントとなり、日本の未来を“強く・しなやかに”拓く土台となることを願います。
ものづくりの変革は、つねに「現場目線の現実直視」から始まります。
共に進化しましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)