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信号処理の基礎とデジタルフィルタ設計法およびノイズ除去への応用
目次
信号処理の基礎
デジタル信号処理(DSP)は、電子機器や情報通信における主要技術として、データの収集、変換、分析に不可欠です。
その活用範囲は広く、音声や映像の処理、通信技術、医療画像の解析など、多岐にわたります。
この章では、信号処理の基本について解説します。
ディジタル信号とは
ディジタル信号は、時間と振幅の量子化によって生成された離散的な信号です。
アナログ信号をディジタルに変換することにより、処理の容易さや保存の簡便性が向上します。
ディジタル化により、ノイズ耐性も向上し、信号の劣化を抑えることができます。
標本化と量子化
信号のディジタル化は、まずアナログ信号を標本化(サンプリング)します。
これは、連続的な信号を一定の間隔で測定する過程です。
ナイキスト定理に基づき、サンプリング周波数は信号に含まれる最高周波数よりも少なくとも2倍以上でなければならないとされています。
次に、量子化により、測定された振幅を一定のビット数で表現します。
この過程では、連続的な振幅を離散的な数値に変換するため、量子化誤差が生じます。
この誤差は最小限に抑えられるように、量子化ビット数を適切に選択することが重要です。
ディジタル信号の利点
ディジタル信号処理は信号処理の精度と柔軟性を提供します。
ソフトウェアによる処理はハードウェアに比べて多くのメリットがあり、処理方法の容易な変更、高度な演算の可能性、アルゴリズムの再現性と可搬性などがあります。
また、ディジタル信号はノイズの影響を受けにくく、劣化が少ないという利点があります。
デジタルフィルタ設計法
フィルタリングはデジタル信号処理の基本的な操作であり、ノイズの除去や信号成分の強調に利用されます。
デジタルフィルタは、特定の周波数成分を通過させたり遮断したりする機能を持ちます。
この章では、フィルタ設計の基本について解説します。
IIRフィルタとFIRフィルタ
デジタルフィルタには、IIR(無限インパルス応答)フィルタとFIR(有限インパルス応答)フィルタがあります。
IIRフィルタはアナログフィルタの特性をデジタルに模倣するもので、過去の出力と現在の入力の線形結合を利用します。
そのため、高速な応答特性を持ちますが、安定性確保のための設計が必要です。
一方、FIRフィルタは現在の入力にだけ依存し、結果的に線形位相特性を持つことから、信号の位相に忠実である点が特徴です。
計算量はIIRフィルタに比べて多くなりがちですが、厳密な位相応答が求められるアプリケーションに適しています。
フィルタ設計プロセス
フィルタ設計のプロセスは、まず設計要件を明確化し、次に適合するフィルタタイプを選択、最後にフィルタの係数を計算する流れです。
基本的な要件には、通過帯域と遮断帯域の定義、リップル(波動)と減衰量の設定が含まれます。
MATLABなどの設計ツールは、フィルタの係数を設計する際に役立ち、フィルタの応答特性をシミュレーションできます。
フィルタの実装と最適化
設計したフィルタを実際のハードウェアで実装する際には、効率的に動作するように最適化が必要です。
リアルタイム処理が要求されるアプリケーションでは、計算コストが低く、リソースの消費を抑える最適化技術が求められます。
また、フィルタの固定小数点演算による実装は、特にリソースに制限のある組み込みシステムで有効です。
固定小数点による演算では動作速度が向上し、メモリ消費も抑えられます。
ノイズ除去への応用
ノイズ除去は、信号処理における重要な課題の一つです。
適切なフィルタを設計し実装することで、ノイズ成分を低減し、信号の品質を向上させることが可能です。
この章では、ノイズ除去におけるフィルタの応用例とその手法について解説します。
ノイズの種類と特性
ノイズはその性質により、ランダムな白色ノイズや周期的な干渉ノイズなど、様々な種類があります。
白色ノイズは広範囲の周波数領域に均一に存在するため、帯域フィルタを用いた除去が効果的です。
一方、周期的なノイズは特定の周波数に集中するため、ノッチフィルタを用いることで選択的に除去できます。
フィルタによるノイズ除去の手法
フィルタによるノイズ除去の基本的な手法として、以下の方法があります。
1. **ローパスフィルタ**: 高周波ノイズを除去するために用います。信号本来の周波数が低周波数域に集中している場合に有効です。
2. **ハイパスフィルタ**: 低周波ノイズを除去し、信号の高周波成分を強調します。たとえば、通信信号のベースラインの変動を除去するために使用されます。
3. **バンドパスフィルタ**: 必要な信号成分だけを通過させ、他の周波数成分を除去します。信号の特定の帯域だけを抽出したい場合に効果的です。
4. **ノッチフィルタ**: 特定の周波数のみを減衰させるため、特定周波数のノイズを除去するために使われます。交流電源の周波数によるノイズ(50Hzや60Hz)を除去するのに適しています。
アダプティブフィルタリング
固定フィルタでは対応が難しい場合、アダプティブフィルタが有効です。
これは、入力信号の特性に基づいて動的にフィルタの特性を変更することで、効果的にノイズを低減します。
アダプティブフィルタリングには、LMS(Least Mean Squares)法やRLS(Recursive Least Squares)法などがあります。
これらはリアルタイムでフィルタ係数を適応的に調整し、変動するノイズ環境に柔軟に対応します。
結論
デジタル信号処理は、様々な分野で質の高い情報処理を実現するために不可欠な技術です。
信号処理の基礎理解を深め、デジタルフィルタの設計法を身につけることが、ノイズ除去や信号の品質向上に直結します。
製造業においても、これらの技術は重要な役割を果たし、プロセスの効率化や製品の品質向上に貢献します。
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