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OEMビジネスから自社製品ビジネスへ転換するための資金調達と販路確保法

目次
はじめに:OEMからの脱却が製造業の成長を決める
日本の製造業は、長年にわたりOEM(相手先ブランド製品)ビジネスを主軸に発展してきました。
取引先ブランドの信頼を背に安定した供給と品質で市場を支え、昭和の高度成長期から令和の現代まで多くの企業がこのモデルを基盤としています。
しかし、グローバルな競争や技術進化の加速、そして取引先の調達方針の変化により、OEMビジネスだけでは将来の成長や維持が困難になるケースが増えています。
そこで今、多くの現場経験者や経営者が注目しているのが、「自社ブランド製品(ODM・PB・自社開発品)」への転換です。
本記事では、OEMから自社製品ビジネスへ転換する際の最大の壁である「資金調達」と「販路確保」の実践的な方法を、現場目線で詳しく解説します。
また、昭和型の業界体質や既存の慣例を踏まえつつ、これからの製造業が目指すべき新たな地平線についても考察します。
なぜ今、自社ブランド製品への転換が必要なのか
OEMのメリットと限界
OEMビジネスは、安定した受注や大量生産によるスケールメリット、リスクの分散といった多くの長所があります。
既存の生産体制や品質管理手法を活かせるため、経営基盤は比較的堅固です。
一方で、「価格圧力」「差別化困難」「取引終了リスク」「技術の囲い込み」など、自社の将来性・独自性に対しては大きな制約が付いて回ります。
特に、サプライチェーンの脱中国化やコスト競争の激化といった世界レベルの変動が日常化する今、OEM一本足打法のリスクは高まる一方です。
自社ブランド製品のメリット
自社製品を持つ最大の強みは、「自社で市場を開拓し、顧客と直接つながれる」ことにあります。
価格決定権やブランド価値を自らコントロールでき、技術の独自性やノウハウの蓄積も進みます。
また、BtoBからBtoCまで販路を柔軟に選択し、中長期的な企業価値向上を実現できます。
資金調達の基本とラテラルな方法
銀行融資・補助金活用の“昭和型”と“令和型”の違い
従来、資金調達といえば地元金融機関との関係性を活かした銀行融資、商工中金・日本政策金融公庫といった政府系金融機関による支援が主流でした。
補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金 等)も活用可能ですが、「申請書面」「審査の形式化」「官公庁主導の視点」など、現場感覚とズレがあることも事実です。
令和に入り、クラウドファンディングやベンチャーキャピタル、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、インパクト投資など、より多様かつスピーディな調達手段が台頭しています。
あえて銀行融資を一度外してみる視点や、「資金」だけでなく「販路」や「仲間」を同時に調達できる手法も選択肢になります。
クラウドファンディングは資金集めだけでなくマーケティングの場
自社ブランド商品の立ち上げ時に最適なのがクラウドファンディングの活用です。
一般消費者から広く小口で出資を募れるだけでなく、「この技術や商品が世の中でどのくらい興味を持たれるか」を事前にテストできます。
さらに、ファンコミュニティの醸成、SNSや口コミを通じた宣伝効果も副次的にもたらされます。
「買いたい人がいる」「支持者がいる」という証明をもって、次の金融機関提案・資本提携の材料にもなります。
既存サプライチェーン内での“協業資金調達”という視点
新規ビジネスや新製品展開は、自社単独ではリスクが大き過ぎる場合も多いです。
そこで、既存の取引先ネットワークや仕入先、販社といったサプライチェーン内で「合同開発」「共同出資(JV化)」「共同マーケティング」を持ちかけるのも有効な資金調達策です。
昭和的なサプライヤー-バイヤーの上下関係を超え、「共創(コ・クリエーション)」の言葉のもと、多様な資金や知恵を結集する動きが広がりつつあります。
これにより、資金と販路のハイブリッド確保も実現可能です。
販路確保の新潮流:現場で使えるチャネル戦略
昭和型から令和型へ、進化する営業・販売チャネル
これまで多くの製造業が頼っていた主要販路は、地域商社、卸、中間業者、大手得意先(バイヤー)との太いパイプでした。
ですが、市場のグローバル化や顧客の多様化により、従来のパイプやルートだけでは限界が見えています。
今や、BtoBプラットフォーム(ミスミ、MonotaRO、Alibaba等)での自社製品販売や、Amazon・楽天等のBtoCモール活用、さらにはD2Cモデル(自社ECサイト構築→直接販売)による販路開拓が加速しています。
また、InstagramやYouTubeといったSNS経由で、直接ユーザーやバイヤーとつながる動きも活発化しています。
現場体験を売るプロダクトアウト発想
日本の製造業は長く「バイヤーの要求」が最優先でした。
今後は「現場で培った経験値」「独自技術」「本当に解決したい課題」などを“商品そのもの”としてパッケージ化し、プロダクトアウト型でファンを増やす視点が有力です。
たとえば、長年培った独自の金型技術や自動化ノウハウを“小ロット対応製品シリーズ”や“カスタマイズ受託商品”として発信し、ネット上で見込み客を獲得する――現場力こそ付加価値となります。
展示会・ウェビナー・デジタル営業の融合
昭和型業界で今も根強い信頼獲得の場、それがリアル展示会です。
2020年代はWithコロナでリアルとデジタルのハイブリッド型展示会・ウェビナー(Webセミナー)が浸透しています。
「現物を見たい」「担当者と話して安心したい」というニーズは今も根強いですが、リアル展示と動画配信やオンライン商談をセットで展開し、“選ばれる確度”を高めていくことが必須です。
OEM依存からの転換で「バイヤー・サプライヤー」の役割がどう変わるか
バイヤー目線の変化に注目
OEMではバイヤー(発注者)が圧倒的に優位―「値下げ要求」「仕様縛り」が常でした。
自社ブランド転換後は、提案力・差別化力・市場適応力が問われ、バイヤーとの関係も共創型に変化します。
バイヤー側も「調達コスト低減」だけでなく「取引先の技術進化」や「共同イノベーション」を重視するようになってきています。
サプライヤーの立場からも、受け身ではなく積極的にアイデア・技術・コストパフォーマンスを提示することで、“選ばれるパートナー”への脱皮が重要です。
現場目線で考えるOEMからの脱却ポイント
技術・品質管理力が最大の武器になる
自社ブランドを持つ場合、最初に市場で問われるのは「品質」「信頼性」「差別化」です。
昭和から蓄積してきた生産管理・品質管理ノウハウは、金銭的な価値よりも大きなブランド資産となります。
現場で培ったQCサークル活動や改善事例、ISO・IATFなどの認証ノウハウ、短納期対応力――これらを商品の“ストーリー”として明確に発信しましょう。
オンラインでもオフラインでも、自社の“現場力”を徹底的に訴求するのが勝ち筋となります。
一歩ずつ「昭和型デジタル化」に取り組む
製造業は紙文化・対面主義・根回し重視といった昭和的体質が色濃く残っています。
とはいえ、すべてを一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)化するのは現場負担が大きく、反発も根強いです。
実際には「見積・受注・納品・請求」プロセスの一部から順次デジタル化、「営業資料や技術情報の共有」をクラウド管理にするなど、段階的な“ハイブリッド化”を目指すのがおすすめです。
昭和と令和を“うまく混ぜる柔軟さ”が、結果的に現場を守りつつ新しいチャレンジにつながります。
まとめ:これからの製造業は「現場の知恵×新たな仲間」で進化する
OEMから自社ブランド・自社製品への流れは、単なる売上・利益確保の手段というだけでなく、日本のものづくり現場が世界で再評価されるチャンスとなります。
資金調達も販路確保も、「旧来通り」に固執する必要はありません。
現場の知恵と現代の手法(クラウドファンディング/共創/デジタル営業等)を組み合わせ、「新たな仲間」とともに進むことが成功のカギです。
どんなにデジタルが進んでも、最後に価値を決めるのは「現場力」そして「顧客・社会に対する誠実な姿勢」です。
OEMで磨いた強みを活かし、ひとつひとつ新しい地平線を切り拓いていきましょう。
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